2018年・福井~兵庫巨樹探訪旅2

〇3日目

 福井県勝山市。
 車中泊の雨の夜が明け、助手席のドアを開けたまま餡パン(つぶ)を食っていい気になっていると、ほどなくしてRYO-JIさんが到着。
 ここから一本道なので、ウチの車一台にまとめていくことにしました。

 目指すは、その名も秘境感ある「岩屋観音」。
 走りづらいところはありませんでしたが、次第に鬱蒼としてきます。

 目的の巨樹は、初見の視界には入らない趣向らしい(助手席のRYO-JIさんは見るべきでない光景を見てしまったようですが)。
 斜面伝いに登ってみると、ここが「岩屋」の名を冠される由縁を望むことができます。

 おぼつかない脚を踏ん張りながら斜面を登ると、巨大なケヤキがドンと現れる。
 二又に分かれ、これも巨樹と呼んで差し支えない幹周。
 でもこの樹、足元がおかしい……どでかい洞窟になってるぞ!?
 ウロというレベルではなく、巨岩の洞窟の真上に根を張って、こんなに巨大に育っている。
 岩に食い入ることができない根幹が大蛇のようにうねる。なんという力技。
 どこまでが樹でどこからが岩なのか、全く区別がつかない。

 というか、この丘のような地形全体が巨大な岩石、文字通りの「岩屋」です。
 山岳信仰の過酷さをも彷彿させる景観は、この後に控える怪物のための舞台装置だったのかも。

「岩屋の大杉」

 もはや言うまでもない。
 この先に鎮座していたのこそ、とんでもない怪物巨樹「岩屋の大杉」です。

 この奇怪な超巨大杉がどうしても見たくて、今回の福井行きを決めたんです。
 叩きつけるようなインパクトと、角度を変えて見る度に想像を絶する形状。
 何度も挑みかかった(つもりの)我々は……
 なんか……ものすごく疲れました。

「飯盛杉」

 そういう小さな人間たちに落ち着きを取り戻させてくれる「飯盛杉」も、少し登った位置におられます。

 「岩屋の大杉」のおまけみたいに書かれることが多いようですが、いえいえ、こちらも見どころ十分の巨樹。
 この濃いシーン構成。やるな、岩屋。

 ここをクライマックスに持ってきて本当に良かった。
 お狛に任せておくと、「高速道路に一番近いから」というくだらない理由で(注:実際はさほど近くもないです)ここを一日目のド頭に据えかねなかった。
 岩屋のダブル大杉に打たれた後では、前日に楽しんだ巨樹たちも少し霞んで見えていたかもしれない。
 危ない危ない……。

 岩屋から少し行くとオートキャンプ場があります。
 (車中泊もできるな)と地図上で軽く考えがちですが、夜ここで寝るのは超おっかない……。
 打ち捨てられた別荘群みたいなのも数軒ありました。

 さらに「滝、あっち →」
 ……みたいな看板を見つけたので、はは、ついでに行ってみましょうヨと気楽に車を進めるも、狭すぎてすぐ引き返す。

 やけに長く感じる数百メートルをガサガサ歩いて行くと、ちょうど嫌になってきた頃合いに二段滝出現!
 水と木漏れ日が素晴らしくきれいでした。
 こう言うとあほくさいですが、正直言って泳ぎたかった。

 そんなこんなで、いやーすげえすげえ、まいったまいったと、道の駅まで戻ってきました。
 ここから先、それぞれの愛車で敦賀へと向かいますが、とろくさい私の運転にわざわざ付き合う必要はないんですよ?
 (「狛サン、高速道路そっちじゃないですよ」
 いい天気の中、車をかっ飛ばします。
 およそ1時間、75キロ。

 茨城、奈良、京都。
 それぞれ集まって、「きわめて学術的な一席」をもうけるとしたなら、一番いい集合地点はどこだ?
 そんなの、敦賀に決まってるじゃないですか。
 そう言ったらどんぶりの蓋を投げつけられるかと思ったのに、なぜかあんまり反対意見も出ず、我々はこの日本海側の歴史深い交易都市へと集合したのです。

 to-fuさんと合流し、写真と巨樹探訪について、夢のトリニティ・ミーティング(三者面談?)。

 待ち合わせ場所は敦賀が誇る「ヨーロッパ軒」ですよ。
 しかも本店。別にいいだろ?
 こんな風雲・ソースカツ城になってるとは思わんかった……。

 

 とりあえず、パカッと。
 思ったより紙カツではない香ばしいカツが3枚も乗っているので、この蓋が実際馬鹿にできない役割を果たします。
 すなわち、出番待ちの状態にあるカツをこちらに退避させておきつつ、ご飯とバランス良く食べて行くのだ。
 いわば、カツの楽屋、それが蓋です。
 周囲のミスターたちを見ればそれがスタンダードなやり方だとすぐにわかる。

 「ソースカツとめし」というあまりにもそれだけなシロモノですが、飽きずに食べられる。
 ずっしり来るのにしばらくするとまた無性に食べたくなってくる……。

 その後、腹ごなしに敦賀の白砂青松「気比の松原」を歩き、カメラや写真の話題に花を咲かせました。
 海なし奈良県民であるRYO-JIさんは、海に来ただけで気分が踊るとのこと。

 お墓に生えてた樹が目について撮ったりしました(ちゃんとピントせよ)。
 これ、榊ですか?
 榊にしちゃすげえデカい。
 そりゃあ巨樹とは言えませんが、ここまで育つには100年は経ってるんじゃないか。
 巨樹を巡るようになって、こういった埋もれがちな樹にも目がいくようになったのは良い変化だと思ってます。

「西福寺のスダジイ」

 西福寺ではスダジイの巨樹を見ました。
 これまでの強烈な印象を叩きつけてくる巨樹と比べると、このスダジイはいかにも古木あるいは老木。
 過ごしてきた歴史に直に触れている気分になりますね。
 実際、食料難に備えてここに植えられたという。
 こういうのも見ておくべきだ。

 ……その後、テクテク歩いて市街地まで戻りました。
 暑く、コメダ珈琲店に入ったら、巨樹ならぬ我々の尻に根が生えてしまいました(「たっぷりアイスコーヒー」「を、3つで」)。
 巨樹探訪サミット第二部を開催。

 RYO-JIさん、to-fuさんに感謝。
 次回の約束もしましたが……会場はどこになるのでしょうね?

 お二人はこれから京都と奈良に戻られるという。
 わたくしは敦賀に独りぼっち。わびしく今夜の宿営地を探しますか……(今晩どこで寝るのかもまだ決まってない)。
 実は明日またto-fuさんと合流して、兵庫方面へ進出する予定なのです。
 やりたいことは全力でやる方針。笑

 さて、車中泊での旅での難関のひとつがお風呂。
 風呂にありつけるかどうかで疲労の具合もだいぶ違います。
 今回は都市・敦賀にいるわけで、そこは銭湯に向かえばOK。
 しかも、実はかなり有望な物件を発見済みだったりします。

 「サフラン湯」。
 to-fuさんも利用経験があると言ってた。
 けっこう良いらしく、何度も利用したとか。
 事情通だなあ、あの人は。

(※お風呂屋さんなので音声のみお楽しみください)

 うわっ、平成も終わろうというのにこんな銭湯が?  
 番台におばあさんいるし!  すごい時代がかった内装! 
 絵に描いたような素晴らしき銭湯。あの棚、あの体重計、あの牛乳。年季。
 そして、「めっちゃ熱い」というお湯ですが……グワーッ!!!

 熱湯ですかこれ?
 現地のおっさんもグフー……とか唸りながら入ってて、我慢大会的様相を呈する。
 しかし、一日歩いて来た暑い日に、この熱い風呂がめっぽう気持ちよかった(身体真っ赤になりますが)。

 人間ゆで卵みたいになりながらショッピングセンターまで戻って来ました。
 いやあ便利だなあ! ATMもあるよ!(番台で払った時、現金をほとんど持っていないことに気づいた)

 楽しくなって食料品売り場で色々と買っちゃう。
 そして、目の前にあった敦賀名物の屋台ラーメンを食ってしまう。
 あー、この感じ。
 豚骨と鳥ダシだったか、そんな感じのスープなんですよね。

 お風呂に入ってご飯も食べて、ふわーっと心地いい疲れが満ちてくる。
 時々映像が乱れる屋台のテレビをボケーっと眺め、、、いかんいかん! と立ち上がる。
 まだあと数十キロ運転するのだった。

 余韻を噛み締めながら京都の山中までコマを進め、静かな道の駅泊をしました。

(つづく)

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