巨樹たち 茨城県稲敷市「大杉神社の杉」、「勝馬神社のシイ」 / 4 コメント シイに注目したい巨樹ファン 大杉神社。巨樹愛好者からしてみれば素通りが難しい名称のはず。 茨城県稲敷市にあるこちらが、関東~東北に約670社あるという同名神社の総本社とのこと。 「茨城の東照宮」とも呼ばれるらしい極彩色の社殿が目をひくため、予備知識なしに通りがかっただけでもばっちり気になる存在だと断言できます。 霞ヶ浦と利根川に育まれたこの地方は現代でも水気の豊富な風景ですが、「常陸風土記」の古代においてはより顕著だったらしい。 利根川や霞ヶ浦と接続する大きな内海があり、水上の交通交易が盛んだった。ほぼ河川対岸に位置する千葉県香取郡「神崎の大クス(ナンジャモンジャの木)」の神崎神社が、アメノトリフネという船の神様を祀っていることにもよく表れています。 そういった風景から、ここに「阿波(あば)」の地名が生まれ、船からの目印となっていた大きなスギは「あんばさま」と呼び伝えられていた。 以上が大杉神社の縁起となるわけですが、歴史が進むにしたがって、お寺と合体し、大天狗・常陸坊海存(海尊)信仰と合流し、現在どうやら中国の仙人(道教?)思想さえ入り込んでいるように見える。 ど派手な山門の中にいるのが神将風の天狗だったりして(鳥居前にも巨大天狗ヘッド×2が鎮座)、よく言えばとても賑やか、でなければ……まあ、足を運んで体験していただくのが一番かと思います。 昨今のスピリチュアル/パワースポットブームで人気を集めていることも書いておくべきでしょう。 さて、巨樹を見たい。巨樹サイトですからね。笑 しかし、社名に反してスギの神木自体はドンとはこない。 地元ゆえそのことを早めに知ってしまい、訪問を後回しにしてしまったという経緯もあります。 灯台代わりの巨杉「あんばさま」と同一なのか根拠が見当たりませんでしたが、筆頭神木の「大杉太郎(太郎杉)」は寛政10年(1878)に焼失してしまった。 現在は、社殿後方に「大杉三郎(三郎杉)」、ちょっと離れた「神苑(奥山)」に「大杉次郎(次郎杉)」が存在しています。 こちらが「三郎杉」。 オフィシャルによれば幹周り7.5メートル、樹高28メートルとありますが、うーん、そこまではないと思います。 5メートル台、くらいでは? 少し探しましたが、初詣などで活用されると思しき離れの駐車場奥、杉林の中にあるのが「次郎杉」。 こちらも同じく幹周り7.5メートル、樹高40メートルとの表記なのですが、どうだろうか。 香取神宮の御神木と同等の太さにはちょっと見えなかったなと。 まあ、「大杉神社」! と最初からハードルが上がってしまっている。 どんな物凄いのが出てくるのかと身構えてしまいますからね。 数百年後の次郎か三郎に、次代「あんばさま」を継いでもらうしかありません。 「大杉神社の次郎杉、三郎杉」 茨城県稲敷市阿波958 大杉神社 推定樹齢:不明 樹種:スギ 樹高:40メートル(次郎杉)/35メートル(三郎杉) 幹周:7.5メートル(ともに) 訪問:2024.11 探訪メモ: MAPは三郎杉。次郎杉の所在もGooglemapにポイントあり。 人気のある神社で、広い駐車場がありますが、初詣、七五三時期はかなり混雑するはず。 超絶豪華絢爛なおトイレには入ってみたほうがいいかも。 ここで終わってしまうと、巨樹巡りとしてはちょっと残念な気持ちになるところですが、巨杉豊富な茨城北部へコマを進める前に、チェックすべき一樹を見つけました。 なんと、大杉神社の敷地内で。 勝馬神社のシイ 大杉神社境内に遷座している「勝馬(かちうま)神社」。 名前のインパクトを裏切らず、なんと競馬の神様として信仰されている珍しい神社です。 次郎杉から戻ってきた視界に、その赤い鳥居とともに、何やら黒々とした樹影が見える。 あの感じは、そう、この地方が誇るスダジイ巨樹のものに間違いありません。 個別名称は確認できませんでしたが、「勝馬神社のシイ」とでも呼べばよいでしょうか。 しっかりと根を張り、ごつごつとした幹は幹周6~7メートルほどはあるように見える。 スダジイ巨樹のセオリー通り、見る角度によって姿が大きく変わるところも面白い。 迫力があるし、こう言っては角が立ちますが、スギより魅力的なご神木に映りました。 やはり当地方のスダジイは期待を裏切らない。ぜひ意識して見ていただきたいですね。 祭神は不詳とあるものの、歴史はかなり古いらしく、平安時代、常陸国の兵部省管轄の牧場、つまり軍馬の守護神として祭られたのが始まりらしい。 かつてはこの地でも農耕馬が多く、奉納競馬も昭和初期まであったりしたそうですが、現在、「日本中央競馬会(JRA)美浦トレーニングセンターの関係者が、本社と並んで一年の祈願に訪れる。」(Wikipedia)。 こういうのって……、と予感がさして検索してみたら、やっぱりありました。 「『勝馬神社』の奇跡!長い間に枝が育ち…「馬頭」の形に」(「中日スポーツ」のWEB記事) そして、お決まり通り、その馬頭部位がどこかはわからなかった。苦笑 上記のスポーツ新聞の記事にいう、 「的中祈願よりも「アーモンドアイ号が無事出走して無事完走できますように」など、競走馬の無事を祈るものが多かったのが印象的だった。」 競馬ファンの愛情を感じますね。 個人的には、「阿波」=「あんば」=「安馬」と連続したのではないかな、とも。 思いがけずユニークさを味わうことができました。 「勝馬神社のシイ」 茨城県稲敷市阿波958 大杉神社内 勝馬神社 推定樹齢:不明 樹種:スダジイ 樹高:15メートル(目測) 幹周:7メートル(目測) 訪問:2024.11 探訪メモ: 大杉神社の背後に併設されている感じです。 この他にも金運向上の「最勝立身出世稲荷神社」もあり、現世利益へのシナジーが期待できそうです。 関連
to-fu 2025年1月25日 at 4:14 PM 返信 いやーこれはすごい。大杉神社なんて四国の山奥にでもありそうな(失礼)地味な名前からこの社殿、ギャップがとんでもないですね。 そしてこの彫刻、新勝寺の三重塔にも彫刻を施した江戸建築界の大物の手によるものだそうで、決してハッタリというわけでもないのが尚更すげえなと。 へへっ。見てるうちに口調まで江戸っ子っぽくなっちまっていけねえや、べらぼうめ。(江戸言葉をよく分かってない) スギは正直今後の成長に期待という感じがしますが、勝馬さんのシイはなかなかのものですね。 馬頭部分、もしかして枯損している部分(シイ写真2、3枚目の上の方)かな?と思いましたが…私もこういうのは全く自信が持てません 笑 スギと比べると良い意味でまだ扱いが雑な感じがして、すぐ側にある鳥居や拝殿の朱色が絡んで賑やかに見えるのがいいなと。 仰るようにスギだけ見て帰るなら近隣の巨樹をおかわりしたくなりそうですが、このシイが見られるならもう十分ってくらい満足できそうです。 リストで見るとどうも目立たない霞ヶ浦の南側がノーマークだった私は甘かったのだなと…改めてチェックしてみないといけませんね。
狛 2025年1月26日 at 6:41 AM 返信 to-fuさん 言われて四国の山奥にある「大杉神社」を想像すると、かなり朽ちた絵が浮かび上がってくるのは何故なんでしょう。笑 ただ、その場合、スギだけはとんでもなく巨大なのが立っていそうですが。(多分、徳島県「桑平堂のスギ」の印象) あらゆる意味で枯れたところがなく、実にアトラクション豊富な神社でした。 スギが名前負けなのは、今の時代にはもうしょうがないですからねえ。百年後に望みをかけるしかないなと。 そう思って戻ろうとしてるところへ、シイのお土産をムリヤリ持たせてくる感じ。ただでは帰さないよ! みたいな。 奇蹟モンタージュは全く持って自信がなく、こうして「これだ!」という写真を並べて探しても「ええ……?」なんですよねえ。 昔っから、UFO写真とか心霊写真も「ええ……?」でしたけど。 通好みな巨樹巡りになりそうな地域ですが、やはりシイに注目するのが最も楽しめそうです。 無名の逸材がいまだに埋もれている予感も、これは「ええ?」どころか確信めいて感じますね。
RYO-JI 2025年1月27日 at 9:17 PM 返信 大杉神社とはこれまた期待値がぐーーーーんと上がりますね(笑)。 遠い昔に消失したスギがその名称の由来であるとしたら相当大きなスギだったんでしょうねぇ。 現在の次郎や三郎さんには重荷となっているみたいですが、将来的には名前負けしない立派な御神木になることでしょう。 で、シイですか! 仰るように私もこちらに目がいってしまいますよ。 中日スポーツのWEB記事の写真ですが、一目見て馬を発見(笑)。 こういう○○に見えるネタはスルーするタイプですが、勝馬神社にあるシイに馬となると面白く感じます。 そりゃあ競馬ファン、というか当てたい人にとってはさぞかし話題になったことでしょう。 巨樹はもちろん、何かと盛りだくさんな場所でいいですね!
狛 2025年1月29日 at 4:21 PM 返信 RYO-JIさん 巨樹は生き物ですから、いつかは姿を消すという当たり前のことを意識させられますね。 だからといって神社の名前を変えなければいけないかどうか……なかなか難しい問題がありそうです。しかも総本社ときては。 馬、龍、蛇、いろいろと見立て……いやなんでもないです。笑 東北だとおしら様伝説に関係しそう。馬も人と歴史が長い生き物ですから、いろんなお話がありますよね。 大杉神社全体が運気UP!でグイグイくる感じですので、なんかむやみに勝てそうな気がしてくる。かも?
4件のコメント
to-fu
いやーこれはすごい。大杉神社なんて四国の山奥にでもありそうな(失礼)地味な名前からこの社殿、ギャップがとんでもないですね。
そしてこの彫刻、新勝寺の三重塔にも彫刻を施した江戸建築界の大物の手によるものだそうで、決してハッタリというわけでもないのが尚更すげえなと。
へへっ。見てるうちに口調まで江戸っ子っぽくなっちまっていけねえや、べらぼうめ。(江戸言葉をよく分かってない)
スギは正直今後の成長に期待という感じがしますが、勝馬さんのシイはなかなかのものですね。
馬頭部分、もしかして枯損している部分(シイ写真2、3枚目の上の方)かな?と思いましたが…私もこういうのは全く自信が持てません 笑
スギと比べると良い意味でまだ扱いが雑な感じがして、すぐ側にある鳥居や拝殿の朱色が絡んで賑やかに見えるのがいいなと。
仰るようにスギだけ見て帰るなら近隣の巨樹をおかわりしたくなりそうですが、このシイが見られるならもう十分ってくらい満足できそうです。
リストで見るとどうも目立たない霞ヶ浦の南側がノーマークだった私は甘かったのだなと…改めてチェックしてみないといけませんね。
狛
to-fuさん
言われて四国の山奥にある「大杉神社」を想像すると、かなり朽ちた絵が浮かび上がってくるのは何故なんでしょう。笑
ただ、その場合、スギだけはとんでもなく巨大なのが立っていそうですが。(多分、徳島県「桑平堂のスギ」の印象)
あらゆる意味で枯れたところがなく、実にアトラクション豊富な神社でした。
スギが名前負けなのは、今の時代にはもうしょうがないですからねえ。百年後に望みをかけるしかないなと。
そう思って戻ろうとしてるところへ、シイのお土産をムリヤリ持たせてくる感じ。ただでは帰さないよ! みたいな。
奇蹟モンタージュは全く持って自信がなく、こうして「これだ!」という写真を並べて探しても「ええ……?」なんですよねえ。
昔っから、UFO写真とか心霊写真も「ええ……?」でしたけど。
通好みな巨樹巡りになりそうな地域ですが、やはりシイに注目するのが最も楽しめそうです。
無名の逸材がいまだに埋もれている予感も、これは「ええ?」どころか確信めいて感じますね。
RYO-JI
大杉神社とはこれまた期待値がぐーーーーんと上がりますね(笑)。
遠い昔に消失したスギがその名称の由来であるとしたら相当大きなスギだったんでしょうねぇ。
現在の次郎や三郎さんには重荷となっているみたいですが、将来的には名前負けしない立派な御神木になることでしょう。
で、シイですか!
仰るように私もこちらに目がいってしまいますよ。
中日スポーツのWEB記事の写真ですが、一目見て馬を発見(笑)。
こういう○○に見えるネタはスルーするタイプですが、勝馬神社にあるシイに馬となると面白く感じます。
そりゃあ競馬ファン、というか当てたい人にとってはさぞかし話題になったことでしょう。
巨樹はもちろん、何かと盛りだくさんな場所でいいですね!
狛
RYO-JIさん
巨樹は生き物ですから、いつかは姿を消すという当たり前のことを意識させられますね。
だからといって神社の名前を変えなければいけないかどうか……なかなか難しい問題がありそうです。しかも総本社ときては。
馬、龍、蛇、いろいろと見立て……いやなんでもないです。笑
東北だとおしら様伝説に関係しそう。馬も人と歴史が長い生き物ですから、いろんなお話がありますよね。
大杉神社全体が運気UP!でグイグイくる感じですので、なんかむやみに勝てそうな気がしてくる。かも?