巨樹たち

栃木県那須塩原市「塩原八幡宮の逆杉」

栃木県最大の巨樹

 群馬県の巨樹を巡り、茨城に戻りがてら、少しだけ栃木の巨樹も訪ねることにしました。
 アクセスが良い上、栃木県最大の巨樹と言われれば無視して通る手はありません。

 風景のよい境内を歩いていくと、本殿の前に異様なほど巨大な影が立ちはだかります。
 これが「塩原八幡宮の逆杉」。

 ペアで寄り沿う姿から「夫婦杉」とも呼ばれるものの、三重県「黒瀧神社の夫婦杉」のような合体型ではなく、高知県「杉の大杉」や福島県「諏訪神社の翁スギ媼スギ」のようなツインタワー型。

 しかし、その片割れである雄杉だけでも幹周11.5メートルもあり、全樹種における栃木県最大の巨樹とされています。
 きわめて近い位置に並び立つ雌杉も幹周8メートルとこれも巨杉と呼べ、現地で見る迫力はかなりのものです。

 接近している側の幹には枝がなく、傷みがあって、樹脂状の物質で補修されています。
 それでも、樹勢は危ぶむほどには弱くない。
 大枝に表れる厳めしさが、いかにも超高齢の巨杉の様相ですね。

 ただ立っているだけでなく、互いにクロスするように角度が付いている。

 このスギをしっかり写真に収めたいなら、超広角レンズは持って行った方がいいですよ。
 被写体がとびきり巨大な上に(巨大だから、かも)、バックできる空間がほとんどない。
 凡庸な焦点距離のズームレンズだと、ほぼ視界全てが幹で埋まってしまいます。

 垂れ下がるような枝ぶりから「逆杉」と名付けられたそうで、この不思議が「塩原七不思議」のひとつともされています。

 八幡太郎こと源義家が康平5年(1062)の奥州征伐の際、ここで先勝祈願をした。
 祭壇を設け、しめ竹(しめ縄を張るための竹)代わりにスギの苗2本を植えたのが、後のこの巨樹だという。

 そして、東征の行き先で続々生まれていったのが、

 宮城県「上沼八幡宮の姥杉」(1057年~69年)、
 茨城県「静のむくの木」(1083年)、
 山形県「石山の大スギ」(1089年)、

 という、お手植え伝説の巨樹群。
 もちろん、もっともっとたくさんあるはずです。

 この逆杉の場合、義家お手植えだとすれば樹齢は950年~くらいになるのでしょう。
 神社側の解説にある1500年とは食い違いますが、「東征の途中、逆杉に神気を霊感され」という説も併記されています。

 いずれにせよ、日本史および全国を視野に入れて考察しがいのある代表的巨樹のひとつ、それゆえの国指定天然記念物と言えます。

「塩原八幡宮の逆杉」
 栃木県那須塩原市中塩原11
 塩原八幡宮
 推定樹齢:950年
 樹種:スギ
 樹高:40メートル
 幹周:11.5メートル(雄杉)
    8メートル(雌杉)

 国指定天然記念物
 全樹種幹周県第1位
 訪問:2016.6

探訪メモ:
 有名な神社にあるので、アクセスに困ることはないでしょう。
 問題があるとすれば、初詣などの混雑や渋滞か……。

 温泉にも浸かって行きたいものですね。

 「塩原七不思議」は以下の七つ。
 古くからの温泉街に、薄暗いムードの七不思議……いい雰囲気です。

 ・片葉ノ蘆(かたはのあし)
 ・逆杉(さかさすぎ)
 ・一夜竹(いちやだけ)
 ・冬蓼(ふゆたで)
 ・冬桃(ふゆもも)
 ・夫婦鳥
 ・精進川

 活発な温泉地帯ですから、熱やガス、地質の影響を受けてこうした現象が起きるのでは? とブラタモリ的に推察してみるのも面白い。
 化石発掘体験ができる「木の葉化石園」も、地味だけど良いですよ(子供の頃連れていってもらった)。

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