巨樹たち

栃木県日光市「日光杉並木街道」

特別天然記念物にして世界最長の並木

 そもそも日光に来たのは、東照宮よりも……
 などと言おうものなら大権現ビーム(黄金色)で焼かれてしまいそうですが、巨樹愛好者としての第一目標はこの「日光杉並木街道」だったりします。
 数少ない国指定「特別」天然記念物。訪問機会の到来を待望しつつ、「石徹白の大杉」「東根の大ケヤキ」などの存在の大きさを実感し、「特天にハズレなし」とばかり、期待は膨らむ一方でした。

位置関係。右端が「杉並木公園」。野口「杉並木駐車場」から「並木太郎」は1.2キロ。

 「日光杉並木街道」は、日光駅から東照宮へと向かう道の両側に延々と続いている。
 ばかりか、「例幣使街道」「会津西街道」にも広がっていて、総延長は30キロメートル以上にもなるという。
 実は、東照宮へ向かう時にもこの杉並木を走ってきており、その一角のインパクトを浴びてきています。
 東照宮でも市天のコウヤマキや、かなり立派なスギ群がありましたが、本命を直に見たいあまり常に中腰気味で観光していました。

 単体樹木ではなく、並木。それも「世界最長の並木」が相手ですから、全てを見尽くせるとはハナから考えていません。
 限りある時間と体力の中で何を見るのか……今回はメインの「日光街道」を選びましたが、どこに降り立つかは「駐車場の少なさ」に決められてしまいました。

 東照宮へ向かう車窓で「写真映えする!」と目星をつけた地点、その近くにあったのが、日光市野口「日光杉並木駐車場」
 ただし、見ての通り3台しかキャパがない……。
 今回は「あたり」を引いた感じですが、日光ではいくら広い駐車場を作ろうが同じことではないでしょうか。
 さらに遠ざかった「杉並木公園(トイレや水車もある)にも十数台分の駐車場がありますが、ここだって確証はありません。

 下車し、探索開始。
 一部、住民以外は車両乗り入れ禁止になっている旧街道を歩きますが、ここからしてすでに、立派な神社の参道のように背の高いスギが林立しています。

 現役の車道である日光街道に合流すると、途端に陰翳が濃くなる感じ。
 巨樹好きならソワソワ確定ですが、歩道幅がほぼないところもあり、交通量もひっきりなしですので、観察・撮影には十分気をつけてください。

 ここにポイントを定めて正解でした。
 一本一本のスギの存在感は車道脇にあるのが不自然なほど。300年以上の樹齢があるという東照宮のスギ群と比べても劣らずです。
 無造作に連理し、苔むし、ある者は朽ちて切られ……生々しさはこちらの方が倍強い。

 樹高も、どれもがすごく高い!
 重ねて言いますが、ここは昔以上にメインの街道。横断には本当に気を付けて。

 山形県「羽黒山の杉並木」同様、個々ではなく「一帯」として評価された特別天然記念物。
 とはいえGooglemapには、随一とされる「並木太郎」や、イチョウやサクラが着生したスギ、戊辰戦争での「砲弾打込杉」なんてのも載っています。(日光市の観光ページ栃木県配布の一覧PDFも参照)

 「並木太郎」は今回撮影した中にあったようですが、立て札を見なかったような……。
 幹周5.35メートル、樹高38メートル、「端正な名木」ともあり、最大のスギだというのは誤り。このくらいのサイズのものは、測るまでもなく他にもいくつもあります。

 群れとしての大きさと古さに圧倒されつつも、自分も徐々に、巨樹としての個性に目を向け始めました。
 中でも写真のこのスギ。これはひときわ大きい!
 思わず足を止め、興奮とともに見入ってしまいました。

 おそらくは合体杉で、根本は他のものよりも倍太い。立ちあがる双幹もかなりの太さ、高さ(2つ上のタテ構図の写真参照)。
 名もないスギのはずですが、「人里の巨木たち」さんでもこのスギに注目され、個別にページを作られておられました(と、帰宅後、編集しながら知りました)。幹周囲は実測で9メートルあったとか!
 隣接している一本も大きく、おそらくこちらが並木太郎クラスなのではないかな……と想像しています。
 巨樹探訪者を引き留めてやまない巨杉。これ一本でも栃木県を代表する巨樹のひとつだと言えるはずです。

 一方で、現地に身を置いてみて、いわば「巨樹界の世界遺産」とも言えるはずの価値が、いまいち浸透していない感じも受けました。
 クルマが台数制限も何もなくガンガン行き交い(これは自分も走った一人ですが……)、場所によってはゴミすら散らばっている。 
 実用される街道であり続けることにも意味はあるでしょうが、かつて5万本あったというスギが1.2万本まで減っているという現在、
これでベストを尽くしていると言えるだろうか……。
 今夜中に仙台へ戻って明日は仕事……情けなくもわずか2キロ程の探索延長で打ち止めになった我が探訪と同じく、「いや、まだぜんぜん足りない」、そう言うべきでしょう。

 植樹後400年を経て、個々のスギは過去の人が見たことのない大きさの並木に育っている。これをいかに長持ちさせるか。
 我々観光客としても、地点地点の風景を味わいながら、気長に、大切に、関心を向け続けられればと思いました。

「日光杉並木街道」
 栃木県日光市瀬川 旧日光街道
 (長距離・広範囲に渡る)
 推定樹齢:約400年
 樹種:スギ
 樹高:40メートル
 幹周:9メートル(最大級のもの)

 国指定特別天然記念物
 訪問:2023.11

探訪メモ:
 「例幣使街道」は南へ数キロ~下った地点、さらに並木は切れ切れに鹿沼市の方まで続いているようです。
 「杉並木公園」が駐車場の本命ですが、停められるかは完全に時の運。map等を総動員して予定を立てましょう。(付属のmapポイントは野口の杉並木駐車場)

4件のコメント

  • to-fu

    この杉並木街道は関東に行く度に行こうかどうしようかと悩んでいました。
    まず、思った以上にスギが立派ですね。世の並木写真は全景を写した写真が多く、
    まあ当然全部が全部でっかいわけですからスケール感が掴めませんでした。
    ヒューマンスケールを見たら「ああ、たしかに国の天然記念物だよね」と納得です。

    しかし今度は悪い意味で…ああ、ここ車の通行OKなんですね。これはショックだ。
    不鮮明で杉ドーン!な写真ばかり見たからか、勝手に歩行者専用の参道みたいになっているものと思い込んでました。
    生活道路も兼ねているはずなのでいきなり車両通行禁止に変えることは出来ないと思いますが、
    旧街道のようにもう少し何とかしていただきたいなあ。うーん、本当にもったいない。

    国土が広くても山ばかりで人間が暮らせる土地はさほど広くもない日本なので、古い景観をぶっ壊さないと
    新しいものを生み出せないのは分かるんですが、それでも日本中どこへ行っても文化財への敬意の無さに
    悲しくなることが多いです。我が地元なんてまさ文化財だけで食い繋いでるくせに敬意の欠片もないしな…

    • to-fuさん
      今一度、書籍での掲載を見てみても、並木としての指定だけあって漠然とした風景写真と空撮だけなのが多いですよね。
      実際行ってみて、自分としても特別な並木だと実感できました。
      広範囲の中には車両進入を防いでいる個所もありそうですが、上記で紹介したゾーンがまさにホットスポットではないか、ここが徒歩でのみ散策できたなら素晴らしかったと思います。
      実際は通行車両に対して横断すいません、スギ見てるんですスミマセン、……なんですけど、はたと気づく、逆だろと。

      昔も今も街道として使われているという文化的価値。
      しかし当時は排ガスをまき散らす何十万台もの車列は存在しなかったという事実。
      東照宮とともに一度見ておくべきと言えつつ、消費資源になっていってる感じをどうしても受けてしまいます。
      91年発行の「日本の天然記念物」時点で「バイパスを建設し、舗装を除去すべきとの声があがっている」とあるんですが……これは「ダメでした」ということなのか。
      熊野古道も同様かと思いますが、外国から言われないと本来の価値に気づけない日本人の不甲斐なさがここにも出ているように感じますね。

  • RYO-JI

    北関東には縁の無い私ですら知っているメジャーな存在。
    ですが印象はあまり強く無かったんですよね。
    単幹でドーン!とわかり易いものではなく、壮大な並木という写真では表現しづらい性格的なものかもしれません。
    これこそは現地に行く、そして杉並木を歩くことでしか価値を理解できないことでしょう。
    そんな中でも9mクラスのスギが存在していることまではチェックできていませんでした。
    これは必見の一本、よく覚えておきます。
    普通でも杉並木の参道を歩くだけで身が引き締まる思いですが、ここまで樹高が高いものだと圧巻過ぎて言葉が出なさそう。
    to-fuさんも述べられていますが、それだけに車がビュンビュン走る状況を知るに複雑な気持ちになりますね。
    まぁほとんどの参拝者はそんなこと気にしないでしょうが、杉並木の存続に思いを寄せると気になって仕方ないですよ。

    • RYO-JIさん
      実際、巨樹目線がなかったら東照宮周辺なんて再び行こうとは思わなかったかも……単純に観光旅行だとしても、この周辺はホント混みますしね。
      電車で行くべきかとか、駐車場なかったら怖いからやっぱやめようかとか悩みました。
      ただ、RYO-JIさんもご存じの通り、栃木県の巨樹ではまず無視して通れないオーラを放っていることも事実で、がんばって行ってみました。笑

      この巨大なスギだけをとっても十分に訪ねる価値があったと思います。
      これが路肩にはみ出すように生えてるという、確かに特別……いや、いい意味で異様で異例な存在感を味わうことができました。
      スギは徐々に弱っていて本数も減っているそうですが、車道への落枝も心配にはなりました。
      現実的かどうか、そういう発言をするとどう思われるかはとりあえず置いといて、本当の歴史財産にするなら今だぞ! 早くしろ! と巨樹が言ってる気がしましたね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です