巨樹たち

徳島県つるぎ町「桑平堂の大スギ」

つるぎ町の端正な基準樹

 前述「桑平のトチ」から移動すること……数十メートル。
 そんな立地に、つるぎ町でもベスト3に入るといわれる大きな杉が存在しています。
 実際、ここまで来れば細かい説明は不要。
 歩いていく先にこの姿がすぐに見えてきます。
 「桑平堂の大スギ」です。

 1、圧巻の見応えを残す「桑平のトチ」に背を向けて歩き出す。
 2、少し傾斜した細い道を擁壁に沿って10メートルほど歩いていく。
 3、目の前に大杉がドーンと立ちはだかる。

 イージー・アクセスです。笑
 我々の場合、先に徒歩でトチまで至ることにしたため、上記のようなルートになりました。
 車でできるだけ進むと、スギの方に先に出会うことなります。

 話を戻し、トチの方から徒歩で近づいていくと、お堂へと出る際に大杉のすぐ間近を通ることになります。
 目通り幹周囲8メートル近い巨樹の、本当にすれすれのところを密着して通る感じです。


 巨樹界にはもちろんもっと大きなスギがたくさんありますが、このクラスともなると近づけないように柵で囲まれていることが大半です。
 そんな樹が生育したままの姿でそびえ立っている……それがこの土地というわけか。
 大杉の迫力とともに、この異境感にも唸らされます。

 「桑平堂」は正確には十一面観音堂とのこと。
 つるぎ町発行の資料によると「一夜建立の堂」という伝説があるそうで、仔細は省きますが、建造中に現れた謎の僧のマジック・パワーで一夜のうちに現在の場所に移動したとか。
 「桑平のトチ」にも、謎の僧が「切れば祟る」と因縁をつけた伝説があり、個人的にはこの両者は同じ僧だったのでは……と睨んでいます。
 いや、しかし、何のために?

 一夜建立伝説がいつのことだったのか、大杉の生育と関係があったのかは明記がありません。
 以前は賑やかな夜通しの盆踊りも催されていたということですが、今はひっそりとお堂が立っているだけです。
 それでも、こんなに人口の少ない土地にあるにしては立派な佇まいで、格天井にはかつては色彩があったように見受けられます。

 さて、改めてスギに対面します。
 大きく、一目見ただけでも健康さを保っていることがわかります。

 いわゆる一本杉。
 頭上10メートルあたりで二股に分かれ、そのままずっと高くまで立ち上がっています。
 それ以外は分岐も大枝もなく、全体から多くの枝を出しています。
 枝葉が多いのも健やかな証だと感じました。

 反対側から見上げる。
 ここには太い枝もありました。
 枝が折れた跡や、樹皮が荒々しく剥がれた跡も見えます。
 参拝者が多いところでは、こうした落下物によって怪我人を出さないためにも柵が設けられてしまいますね。
 たしかに、剥がれた樹皮ひとかけらでも重く、頭に当たったら怪我は免れないでしょう。

 見ていて不安のない、堂々とした大杉でした。
 周囲がとても開けているので、全体像が拝めるのもいい……そしてその姿がまた綺麗ですね。
 均整のとれた円錐形をしており、これぞ一本杉! と褒めたくなります。
 根元のRYO-JIさんと比べても、誇張なく40メートル以上の樹高があることがわかって頂けると思います。
 これだけの一本杉が落雷で大破炎上することもなく立ち続けているとは。
 何か、くだんの僧(お土地柄、もしかして、空海サン?)の守護パワーでもあるのかと思いたくなってきます。

 そしてそして。
 今回、これまでになかった試みを実施! そう、巨樹幹周の実測です!
 実は、いつかやりたい、あるいはやるべきと、20メートル長尺を購入して持ち歩いてはいたんです。
 しかし、天然記念物には近づけないことも多く、いざ近寄れても……やってみたことありますか? 7、8メートルもある相手のウェストを測るようなことを?
 そう、とてもじゃないですが、ひとりきりでは無理ですよ。 

 しかし、今回はレギュレーションを周知した人間が3名もいます!
 そして、この素直で測りごたえのある大杉は、まさに計測初体験にぴったり!
 地上から1.3メートルでの高さでの幹周囲を測定してみた結果、写真のような値を得ました。

 

 7.81メートル。
 もちろん我々の測定値が公式値になるかはわからず、ベテランの方からは「そうじゃない」とダメ出しを食らうかもしれません。
 実際、環境省の登録値は7.95メートルということになっている。
 ほんの少し測る高さが変わっただけで数値の差異は出るでしょうし、異議を唱えるつもりもありません。
 それよりも、この杉の大きさをさらに強く実感できた喜び、そして、8メートルの太さの樹というものがこれほど大きいのだという事実に、改めて驚かされました。 

 測定の経験をさせてくれたことに対しても、この素直な大杉にありがとうと言いたいですね。
 初めての相手があなたでよかった……とかなんとか。
 以降、様々な巨樹に出会う際に、この樹のイメージが基準として役立ちました。

 ちなみに、蛇行する道路の方へ登ると、上からも杉を眺めることができます。
 周囲は相変わらずすごく深い山々……そして、向こうに白い花をたくさんつけた「桑平のトチ」が見えます。
 こんな近い位置にこれだけの巨樹、それも異なる樹種のものを擁しているとは。

 解説板は特にありませんでしたが、上記のように見誤りようのない爽やかなまでの巨杉です。
 ありがとうと告げて戻る我々は、またもや大トチの懐に招き寄せられ、そこでまたしばらく……笑
 地元だったら、この2本だけでも1日かけて見に来るに値する。
 そしておそらく何度も通うに違いない……それが我々の共通意見でした。
 つるぎ町の巨樹は本当にレベルが高いです。

「桑平堂の大スギ」
 徳島県つるぎ町一宇桑平
 推定樹齢:500年
 樹種:スギ
 樹高:48メートル
 幹周:7.8メートル
 (地上1.3m実測)

 町指定天然記念物
 訪問:2019.5

 探訪メモ:
 車で回り込むように到達した場合、スギの前の広場に駐車できるでしょう。
 道中狭いところは多々ありますが、この周辺は安心できます。

 国土地理院の地形図によれば、桑平堂近辺の標高は約770m。
 出発点の貞光周辺が150mそこそこ。急な山をぐんぐん登ってきたことがわかります。
 ちなみに、大ヒノキがある葛籠集落が約600m。
 赤羽根大師の大エノキは、約515mですが、別尾根で、さらに短い距離でこの高さまで登ります。
 平面図の距離に騙されないように!

<徳島・高知 巨樹探訪旅の記事もどうぞ>
徳島・高知 四国巨樹探訪旅3

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です