徳島・高知 四国巨樹探訪旅3

つるぎ町から戻り、異郷を思う

 徳島県つるぎ町の奥地で、「巨樹王国」の謳い文句に恥じない巨樹たちを目の当たりにした我々は、再び美馬市街中へと戻ってきました。
 想定していた以上の満足感。数日分もの実感があるような半日(朝7時開始~現在13時)でした。
 帰り道はあっけない。加速度よりも、登る時に感じた先の見えない不安が無いのが大きい。

 スリルドライブの臨場感をどのように表現、記録できるか……工夫したいですね。
 「旅」という側面からの「巨樹探訪」。
 深く、魅力があるのだと伝えていきたいです。

 美馬市街とつるぎ町の山間集落とは、距離としてみれば遠くはない。
 その事実がちょっと信じがたいような後味を残し、どこか呆然とするような異世界感がある。

「桑平のトチ」

 つるぎ町での本命と言っていい四国第一位のトチノキ。
 「必ず探訪困難な場所に立っている」というトチの巨樹の鉄則はここでも生きていて、かなりの秘境感ある場所でした。

 しかしながら……だからこそか……トチの巨樹は毎回感動を与えてくれます。
 今まで見て来た中でも、この樹はすごかった!

「桑平堂の大スギ」

 「桑平のトチ」からわずか数十メートルに位置する大杉も忘れずに。
 ここまできておいて忘れてしまうなんて、ナシですよ。

 すっくと立つ巨樹で、我々の幹周囲実測第一号の役を買って出てくれたのでした(樹が立候補したわけではない)。

 その向こうに見える風景……モータリゼーションから切り離された緑の地獄です。
 集落があって、電気や電波は通じていたとしても、自給自足要素を決して切り離せないはず。

 「いいところですねえ」なんて安易に身をおけば、1週間で人生観変わりそうだ。
 きっと、お隣さんからなんだか馬鹿でかい獣肉(血まみれ)を差し入れされたりするんだよな。

 ……想像しただけでもドキドキしますね。
 また生き方を変えたい時がやってきたら、その路線もアリかも、とちょっと考えてしまいました。
 人生変えたくても、何もインドまで行く必要はない。つるぎ町で十分だ。

 さてさて。平地に降りてくると、ただただ空腹だけがリアルに感じられるのでした。
 この時点で14時も近い。興奮しきりでまるきり考えていませんでしたが、昼食はどうするのだ。
 本当は何か軽食を携行して巨樹のそばで休憩するのがよかったのかもしれませんが、ついチャンスを逃しました。

 野立て珈琲の心得があるto-fuさん、RYO-JIさんは巨樹のそばで珈琲休憩を、なんてオツなことも考えておられたようですが、ずんずん行き過ぎたかも。すみません。

 候補も少なく、時間も昼を過ぎたので、(昨日おあずけを食った)道の駅・「貞光ゆうゆう館」のレストランに立ち寄ることにしました。
 ハンバーグ、カツ、カレー、からあげなど、一定のラインナップがあってありがたいのですが……ん? なに? ワニ料理って……

 すると、to-fuさんが、勝手に覚悟完了したような目つきで水を飲みながら言うんです。

「ふう……ここへ来てこれか」

 サメの次はワニ!? (※かつて我々はこのノリでサメバーガーを食いました
 いやいやいや! 阿波尾鶏定食(たいへんに高価)ならまだしも、つるぎ町はワニの産地でもなんでもないですよ?

 注文聞きのお姉さんに対し、彼が自動的に「クロコ3つで!」と言い出さないとも限らず、場を一触触発の緊張感が支配しました。

 結果として、実に没個性無難な定食をいただいたんですけどね。
 うん、つまんない選択だった。

 とはいえ、この遅い昼食の不完全燃焼が、翌日の昼食に過度なアクセルを加えてしまうことになるのですが……それはまた次号で。

 旅路はこれから西へ進路をとり、徳島を横断します。
 そこで、この旅いちばんの大物と対面。

加茂の大クス

 「加茂の大クス」。
 巨樹探訪の道に足を踏み入れたなら、必ず意識することになるカリスマ的巨樹……
 国指定「特別天然記念物」です。大雑把に言うと、生きる国宝!
 国天にはいくつか肩書き負けしているものもある……とは個人的意見ですが、この樹については何も異論ありません。

 とにかく巨大。壮大。
 あまりにも存在感が桁違いすぎて撮影者をダメにしてしまう大巨樹です。
 こういう偉大な存在を訪ねる際には、ルートとともにテンション管理も意識すべき。
 特天で受けたエモーションのままに訪ねて来られる他の巨樹さんたちの立場になってみろよ、たまったもんじゃねえぜ、ってことですよ。

 美馬市から出発した我々の巨樹探訪の旅路は、つるぎ町の奥地へ南下、カルチャー・ショックに打たれて逃げ戻り、その勢いで徳島を横断し、一気に南下、高知県高知市までコマを進めます(超要約)。

 グーグルマップさんではサラリと出ますが、実際にはこうは行きませんよねえ。
 それが四国。

初めて高知県に踏み込む

 朝7時から素晴らしい巨樹を8箇所も探訪し、秘境的光景ばかりを見て、感覚がおかしくなっています。
 高知自動車道の2時間強の高速走行、同乗のお二人のナイス・トークがほんとうに有難かった。
 何を話したのかは全く覚えていません。

 5月の17時でこんなに明るい。緯度経度の差異を実感するほど遠くに来たのだ、と達成感。
 高知市はみるからに南国です。
 南房総もなかなかですが、ヤシやシュロやソテツが当たり前のように繁茂しているこちらの南国具合、やはり気合が入っている。
 路面電車も風情があっていい。

 さてはて、我々もこの道のベテランになりつつありますから、街中にあっても、それなりの立ち振る舞いというものをしなければならない。
 ということで、本日の宿泊には、高知でナンバーワンのホテルを予約してあります。
 よし、ここだな。
 そう書いてある。たどり着いたぞ!

 そしたら「お車は別のところです」ってんで、すぐさま立体駐車場に送り込まれました。
 いざ車から離れてみると、久々に文明社会に降りてきたような変な感じ。
 それほど今日は感覚を大きく揺さぶられたのでしょう。

 まだまだ明るいものの、宴を始めても不自然でない時刻。
 お店に目をつけて(しかし決して予約なんかしないとこが男らしい、と誤解している ←ホテルは予約してるし)、ぶらぶらと高知の町を流していきます。
 東京大阪名古屋みたいな巨大都市に毒されていない、特有の雰囲気がある。
 路面電車……システムが把握しづらくて乗るのは苦手なんですけど、長崎、熊本、広島など、街とかもし出す風情は好き。

 そしてこのやたら赤い橋が……「日本三大がっかり名所」のひとつとされているらしい(編注:誰かがそんなことを言っているのを聞いた気がするだけ。ということにしておきます)……俄然見てみたくなった「はりまや橋」。
 外国からの観光客さんも、「Ah……han?」的な顔をしてましたよ。
 ま、それ含めて楽しけりゃ、名所として成立しますよね。多分。


 傍らのセンダンが満開で、とてもいい匂い。
 この香りは、初夏の四国南国の香りとして記憶に残りました。

 高知市、我々、街撮りの徒を惹き付ける街でした。
 お気楽に再訪を誓います。

 トラディショナル・スタイルのお店に入り、高知に来たんだからカツヲを食べないと。いや、僕は生もの得意じゃないんで、食べないんですけどね(結局何なんだ)。
 ウツボの唐揚げも名物。ふわっふわで、まったくたんぱく、これまた名産のカボスのポン酢によく合います。
 クロコはダメでもウツボは良いという旅です。
 タコやきびなごのてんぷらも美味しかった。

 巨樹談義、カメラ談義などを交えつつ、たのしく濃い2時間。

 高知でナンバーワンのホテル(しつこい)へ戻り、山ほど撮った写真をプレビューしてみる。すごく楽しい。

 もちろん、かなり疲れている。
 つるぎ町での体験を想えば、たいていの悪路は走れそうな度胸が備わったとも言える(かも)……。

 Macにメモリーカードをぶっ刺したまま、いつしか意識が強制終了。
 フェリー泊、車中泊の後のホテル泊、やっぱすごくいい。
 なんてったって、高知でナンバーワン………………

 翌日、5月なのに高知は30℃とか。
 ねえ、8時半集合って、誰が決めたんです?(あなたです)

(つづきます)

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