巨樹たち

佐賀県武雄市「塚崎の大楠」

そして巨大クスは生き続ける

 東京港から福岡県新門司港までフェリーで渡り、関東まで自走で戻りながらの長距離巨樹探訪旅(2017年)。

 門司に降り立ってから一路走り、佐賀県に入りました。
 佐賀県武雄市には、推定樹齢2000年(!)を超えるとされる巨大クスが3本もあるという。
 しかもアクセス容易。これは行くしかないと、ずっと気になっていました。

 巨大クスノキ3番勝負。
 1番目は、武雄市文化会館の裏山にあるという「塚崎の大楠」です。
 お寺でも神社でもなく文化会館というのがユニークですが、いずにせよ場所が明らかなので迷うことはありません。
 「文化の殿堂・西九州の応接室」とか書いてある高雄市文化会館は実際立派な施設です。
 芝生や庭の手入れも行き届き、とても綺麗な環境。

 でも、その中ではなく。
 「塚崎の大楠」は、裏山の鬱蒼とした雑木林の中に隠れるように立っていました。

 道からは見えないが、じわじわと気配は感じる。
 嗅ぎつけるように進んで行くと、雑木の間からただ事ならない巨大な何かが垣間見え……という出会い方でした。

 後から考えれば、これは裏口からの訪問だったようです。文化会館の建物の横をずっと行くと、丁寧な案内看板もあり、そこから登るのが正当。

 やはりクスの本場は西国。特に九州の大クスとは初めての接触でした。
 正面に現れた、期待を上回る大きさには驚くばかり。立ち止まって仰ぎ見ました。

 幹全体が大きく空洞化している。
 ちょうど空洞が目立たない姿を向けていましたが……それでも、根元に洞窟のような穴が見えている。

 反対側に回り込んでみると、再びその姿に驚かされることになります。

 これが、このクスの本当の姿……。

 何という大きさでしょうか。目通りでの測定で幹周13メートルを超えるという。
 その幹が全て、爆裂したかのように大空洞と化してしまっています。
 しかしそれでも間違いなく今も生きている。巨大な生命力が目に見える形で波打っている。

 地盤が固くならないように敷かれたフェルトのようなマットの上を歩き、こわごわ覗き込んで見ると、樹の中だとは思えないほど広い。
 東京で暮らしていたアパートの部屋くらいありそうでした。

 凄まじい姿ですが、傷口の生々しさは後退し、すでに再生した痕を見ている感じがします。
 落雷から炎上し、この姿になってからだいぶ長いらしい。
 燃える前の主幹はどれだけ巨大だったのだろう……。

 ……それよりも、この大空洞を覗き込んでいると、驚きが本能的にじわじわとした恐怖に変わってきます。
 「今、自分は、何某かの生命体の内部にいるのだ……」という、あってはならない、非現実的なこの感覚。
 今にもこの周囲の壁がぐわっと動いて、食われてしまうんじゃないか……。
 想像してしまって、おずおずと距離を取るのでした。

 解説板は降りてきてから見つけました。
 ここは武雄城(塚崎城)城址であり、「武雄神社の三ノ宮」という位置でもあったようです。
 2000年という途方もない推定樹齢が果たしてどこまで正しいのかはわかりませんが、(千葉県「府馬の大楠」と同様、)「大クスがあったところに築城した」という順序なのでしょう。

 落雷は昭和38年というから、50年以上が経過し、樹勢回復処置も受け、見た目とは裏腹に一息ついているような印象も受けました。
 いつまでもお元気で。そう伝えたくなる巨大クスでした。

「塚崎の大楠」
 佐賀県武雄市武雄町武雄
 推定樹齢:2000年
 樹種:クスノキ
 樹高:18メートル
 幹周:13.6メートル

 市指定天然記念物
 訪問:2017.9

 探訪メモ:
 上記のようにアクセスが難しくない市街にあります。
 早朝でかなり空いていたこともあり、「文化の殿堂・西九州の応接室」の駐車場の隅に間借りし、歩きました。

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