巨樹たち

宮城県登米市「上沼八幡神社の姥杉」

八幡太郎義家手植えの杉

 宮城県登米市内を北上。 
 あと2、3キロも行けば岩手……というところで踏みとどまりました。
 日も傾きかけた時分、巨樹を擁するという八幡神社に到着。
 今年は暖冬だとは言え、さすがに空気が冷たさを帯びている。
 源義家お手植えの伝説が残る「上沼八幡神社の姥杉」を見ます。

 八幡神社自体は全国各地に数多くあり、登米市にもいくつかあります。
 今回目指すのは「上沼八幡神社」。
 丘陵地を登っていく形になりますが、この一帯にも「八幡山」という地名がついている。
 途中、道が細くなり、りんご農園などもある。

 人の気配が乏しいので辺鄙な印象を受けますが、突如、どーんと大きな赤い鳥居が現れます。
 高台に位置する八幡神社はゆったりと敷地が広く、社叢も大きな樹が多い。
 いかにも初詣が賑わいそうな風格ある神社でした。

 門の内側にはこのようにありありと「姥杉」の名が。
 ここへ来たら姥杉を拝まずには始まらないということのようです。

 でもまずはお詣りを済ませましょう。
 全国にある八幡宮、八幡神社ですが、八幡神自体はいまいち何にご利益がある神様なのかピンときません。

 あくまでそういう印象だという話にとどまりますが、「なんでもアリ」な神様のようにも思えますね。
 応神天皇が神霊化した神とされているようで、神仏習合に積極的(仏教寺院の守護神という立場らしい)なため、仏教伝播とともに全国各地に広がったようです。
 「やはた」「やわた」と読むのが本来で、「はちまん」と読むのは神仏習合後に「八幡大菩薩」という扱いを受けた影響のようです。

 さて、ここまで来るとすでに十分視界に入っていますが、姥杉。計2本あるとのこと。
 まず、拝殿のすぐ横にあるこちらの杉が「男杉」と呼ばれる杉で、目通り5.6メートルとのこと。
 姥杉という名なのに男杉とはこれいかに? ……と思うのですが、そこに言及はありません。
 年寄りで、神の側に仕えているというようなイメージでしょうか。

 しかし、この杉自体は男杉と命名されるのもいかにもな、荒々しさを感じる風貌です。
 裏杉的な野蛮さは目立たない。
 植えられて以降、御神木として欠かさず手入れされてきたものでしょう。

 杉の御神木としては並ほどのサイズに止まります。
 この巨樹の前に訪ねた「日根牛の大クリ」が奇遇にも同じ幹周囲5.6メートルです。

 などと、モノサシ判断するのはよくないことで、この神社としては巨樹単独ではなく社叢に価値があるタイプです。
 神社そのものも、社叢も規模が大きく、よく手入れされて整っていて、適度に緊張感ある空気が漂っている。

 さて、もう一方の姥杉は、社殿の裏にあります。

 根元だけ撮ると個性が伝わりませんが、こちら(女杉)は、なかなか印象的な見た目をしています。
 まるで巨大な掌のようです。しかも幅のわりに指?が長く、どこかしなを作っているように見える。
 女杉……なるほどなあ、と思います。

 樹皮もきめ細かい。
 先ほどの男杉と比べて樹齢が若いのかもしれませんが、対比させることでよりジェンダー差が面白く感じられます。
 まあ、立地が近くなかったので夫婦杉とは呼び辛かったかもしれませんね。
 西国では「夫婦」、東国では「姥翁(爺婆)」が多いという一説も、実に興味深いです。

 女杉といえど、上部はこんな感じ。なかなか勢いがあります。
 やはりこちらの方が若さを感じます。枝折れや、やや衰えのある男杉と比べると、こちらの方が生育に安定感がありました。

 解説板。男杉の横にあります。
 まず、よく聞く「八幡太郎」は源義家の幼名。山城国(現京都木津川市)の石清水八幡宮で元服したことからそう命名されたとのこと。
 日本の武将は似た名前が多くて正直よく間違えるのですが、「後に鎌倉幕府を開いた源頼朝と室町幕府を開いた足利尊氏などの祖先に当たる。」とのこと。

 義家サンは今後もよく出てきますので、憶えておきましょう(テストみたいだ)。

 その義家が手植えしたという伝説から、姥杉は樹齢950年余とされているようですが、さすがにそれはオーバーです。
 特に女杉の方は若いと思いますし、素人目には3、400年くらいでは? と測ります。

 両方お手植えだと言うなら、なぜこのような離れた場所に植えたかも、ちょっと不可解ですね。
 福島の「諏訪神社の翁スギ媼スギ」も朝廷(藤原氏)の戦勝祈念ですが、ものすごくビシッと植えられていたことを考えると……。

 と、つまらない理屈を述べますが……この解説文は良いと思いました。
 姥杉保護の詳細が包み隠さず書かれている。処置の詳細な方法、費用額まで記されているのは珍しいです。
 この巨樹たちをこれだけ大切に思って、行動する方々がいるという証拠ですね。
 「幹周囲6メートル台の杉の樹勢回復処置、2本で1100万円」。
 以後、巨樹の保護に関するさまざまな重みがより具体的に想像できるようにも思われました。

 上記の姥杉の他にも、逞しい樹々で構成された社叢が天然記念物指定されています。
 神の近くに身を置いて心を改めたり、しっかり祈念して物事を始めたり。そういう時に来てみたい。
 適度な緊張感を保った、しっかりとした神社だと感じました。
 そう、そこにはやはり御神木があってほしい。心の拠り所であることに間違いはありません。

「上沼八幡神社の姥杉」
宮城県登米市中田町
上沼八幡山51 上沼八幡神社
推定樹齢:300年以上
樹種:スギ
樹高:25メートル/28メートル(男杉/女杉)
幹周:5.6メートル/6メートル(男杉/女杉)

市指定天然記念物
訪問:2020.2

 探訪メモ:
 立派な神社。
 年末年始などのシーズンには混み合うと思います。

 八幡神社メモ:
 応神天皇が神霊化した神とされているようで、神仏習合に積極的(仏教寺院の守護神という立場らしい)なため、仏教伝播とともに全国各地に広がったようです。
 「やはた」「やわた」と読むのが本来で、「はちまん」と読むのは神仏習合後に「八幡大菩薩」という扱いを受けた影響のようです。

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