巨樹たち 東京都台東区谷中「谷中のヒマラヤスギ」 / 6 コメント 谷中のシンボルとも言えるヒマラヤスギ 東京で町歩きを楽しむ方であれば、おそらく誰もが知っているであろう巨樹だと思います。 「こんな街中に巨樹が!」と驚き、写真や動画を撮るのにぴったりなインパクトを与えてくれます。 昭和レトロな街並みで人気の台東区谷中、「谷中のヒマラヤスギ」を訪ねました。 十代の終わりから15年あまり東京で暮らしたので、街歩きにノスタルジーを感じます。 谷中辺りはカメラを買ってすぐ足を運んだ街で……と、思い出話はキリもありませんが、当然このヒマラヤスギも見ています。大きさと場違い感に驚き、何枚も撮っている。 その頃はデジタルカメラ黎明期。フィルムとどちらが優れているか? の論争もまだ熱く、自分としては後者派でした。実家の箱の中を探せば、この樹を撮ったネガがあるはず……。 実際、似た経験を持つ方も多いことでしょう。 (※探したら出てきました。当時はiso1600のフィルムばかり使い、自家現像やってました……なつかしい) 今回は、御徒町〜上野界隈を流しつつお昼を食べ、谷中まで歩いてきました。 高層ビルのない地域にそびえる樹高20メートル超の巨樹ですから、遠くからでもその樹冠がよく見えます。 街中の道の真ん中に育っているだけでも個性としては十分ですが、いかにも谷中レトロというか、小さなパン店がくっついていて、目を楽しませてくれます。 いやほんと、お変わりなく……と言いたいのですが、真新しく切断した木口がすぐに目に入りました。 事情を知らなければショックを受けてしまう眺めです。 調べてわかったのですが、去る10月の巨大台風のおり、分岐した幹の一本が折れてしまったそうです。 分量にしてこの巨樹の1/3ほどもありそうな幹・枝が崩壊し、パン店と道の上に倒れてきた。 数日間通行止めになるなど、大変だったようです。 <東京新聞の記事(2019.10)>「ヒマラヤスギ、幹の一部折れる 谷中のシンボル 樹齢100年」 部分的な空洞化や亀裂があったのでしょうか。全倒壊しなくて本当に良かったと思いました。 あんな巨大台風の中で立ち続けるなんて、巨樹たちの身に何が起きても不思議ではないですからね……。 パン店もぺしゃんこにならなかったようで、良かったです。 「こんなところにヒマラヤスギ……?」と誰もが首をひねる。 当然、自生していたものではありません。 新聞の記事にもありましたが、根元にある「みかどパン店」の現店主のお祖父さんが植えられたもののようです。 よっぽど可愛かったのでしょう。 鉢植えだったヒマラヤスギに米の研ぎ汁を与えて育てていたら、どんどん大きくなってしまい、地植えに切り替えたところ……今のこの有様です。 大きくなる樹を植える時は要注意! という教訓でしょうか。 当然、ご苦労もたくさんあったでしょうが、樹の健やかすぎる成長になんとも言えないコミカルさを感じますね。 06年に台東区の保護樹木指定にされ、現在の所有者もパン店の方だそうです。 今現在、地方在住の身となり、東京方面の巨樹探訪はハードルが高くなっていました。 たまたま旧友から誘いがあり、同時に思い浮かんだのがこのヒマラヤスギの姿。ようやく記事にできた……という感じです。 雪国の裏杉や急斜面のカツラとは全く別の過酷さと闘って生きている、樹齢約100年の大都会の巨樹。 今回の損壊箇所はかなり痛々しいものがあり、重量バランスや樹勢に影響が出ないかも心配です。 しかし、被害から3ヶ月が経った冬の日ながら、葉は青々としている。 まだまだ生きられるはず! と信じ、励ましたい気分にさせてくれます。 多くの人の思い出に残っていることは間違いないながら、以前から度々、再開発計画から反対派の署名に守られてきたそうです。 切ろうと思えばいつでも切れる……と考えられているのではないか、などと、今回の半壊を経てなおさら不憫に感じます。 東京では、数年でまるきり風景が変わってしまう。それで当たり前。 しかし、この樹のような古来からのランドマークも躊躇なく破壊してしまうとなると、都市計画としてそもそも破綻していると素人心に思います。 未来へ向かうモノの考え方として美しくない。美しくなければ、都市計画としてはまず失敗では? と。 この樹の存在自体、大都会・東京の「粋さ」の象徴だと思います。 この先の未来も、こういう粋な風景が見られることを大いに期待したいですね。 「谷中のヒマラヤスギ」東京都台東区谷中1丁目6−15樹齢(実際):100年樹種:ヒマラヤスギ樹高:20メートル目通り幹周:4.0メートル 台東区指定保護樹木 訪問:2020.2 探訪メモ: 当然ながら駐車場はありません。 山手線日暮里駅などから谷中散策に組み込んで歩くのが楽しく、夕方の路地散策などで撮るのが最高ですね。 終始人や車が通るので、周囲には気を配って。 みかどパン店(閉店されたようです)は撮影を拒まれていました。 さすが東京。Google mapのレビューだけ見ても、この樹についてたくさんの書き込みがあります。 外国人の方の投稿も。「東京傷情故事」、「東京の悲しい物語(東京)」とあるので、何かこの樹にまつわる悲しい故事があるのか? と思ったら、「東京センチメンタル」というドラマに映っていたという話らしいです。2023年追記: どうやら、最近また大きく枝が剪定された様子……。 かつての枝張りを記憶にとどめるとともに、回復を祈るばかりです。 関連
to-fu 2020年2月27日 at 10:04 AM 返信 新サイト開設おめでとうございます! いつの間に!ですね。驚きました。そして素晴らしい出来ですね。 実は私もサブドメインを取得して、そちらに巨樹ログのクローンだけ抜き出す作業を試みたんですが あまりに面倒くさくて八ッ場ダムの工期並みに伸び伸びになっています 笑 あとは下手に長年やっているためサイト評価も少しは上がってしまっているものですから、 やはり本サイトに公開した方が検索順位もずっと良かったりして…どこかのタイミングで 巨樹ログだけ見やすくまとめないと、とは思ってるんですけどねえ。 そしてこの谷中のヒマラヤスギ。 パン屋にお墓、この光景は見覚えがありますよ。何度も撮り歩きました。 でもヒマラヤスギとなると、あったかなあ…と記憶があやふやだったり。 興味がない時代だったので本当に視界に入っていなかったんでしょうねえ。勿体ない。 あまり考えたくありませんが、このパン屋さんが無くなってしまったらきっと… 狛さんも仰るように、その瞬間を待ち望む方々の魂胆が透けて見えるようで何だか嫌な感じです。 想像以上に大きくなってトーテムポールのように枝葉をぶった切られた街路樹を見ても感じることですが、 人間の都合だけで樹木がぞんざいに扱われるのはいかがなものかと思いますね。 せっかく大きく成長できたんだ。何とかこう、上手い付き合い方はできないものかな、と。 このクラスの目立つ巨樹なら保護しようとする勢力も存在するはずなので、頑張っていただきたいですね。
coma 2020年2月27日 at 7:46 PM 返信 to-fuさん> 初コメント、ありがとうございます!! お名前が自動で大文字化してしまうのはどうにかしたい!! ワードプレスは勉強しながらなのでお恥ずかしい限りなのですが、ひとまずコンテンツを作れるまでは行けたと見て、作業しながら学んで行きます。 フリーのブログでもできない事はないんですが、やっぱり十数年の雑味がすごくて。煮詰めて固めたいなと思いますね。笑 車では行けない東京街中の巨樹ということで、思い浮かんだのはこの樹でした。 スナップで何度も撮ったあの樹……どうしただろう? と、そんな思い出し方。 どうやら当時の自分にも、スギとヒマラヤスギは違う、くらいの感覚はあったらしく……でも、このY字路の方が気になったのかもしれません。当時、路地は好きでしたからね。 巨樹を見て回ってこの樹を見に行った時、えっ、天然記念物じゃないんだ? というのはちょっとしたショックでした。 記憶の中の美化された像に劣らず立派で個性的な樹なのに……と。 この樹を伐るか残すかで、谷中の度量を測ってしまいそうです。 無くすのは一瞬でできますが、共存するのは難しい。 ……でも、そんなに難しくて価値がないことなのか? と思うのは、やっぱり僕が部外者だという証拠なのでしょうか。
RYO-JI 2020年2月27日 at 9:49 PM 返信 広角ズームに専用サイト開設・・・スゴイ、いつの間に。 いや、おめでとうございます。 絶対に巨樹専用サイトを開設すべきだとずっと思っています、私も。 でもねぇ、諸々の作業や勉強を想像するだけで心が折れてしまって手が出ません。 だからこそ狛さんが実行し始めたのには大賛辞を贈りたいと思います。 そしてこのヒマラヤスギ、誰かの写真で見た覚えがあります。 この辺りをスナップする人は多いみたいですね。 そんな人達には、このヒマラヤスギとパン屋の光景は撮らずにはいられないでしょう。 都会には貴重な地域にとけ込んだ樹なので、是非ともランドマークとしてでも残していただきたいです。
coma 2020年2月28日 at 8:26 AM 返信 RYO-JIさん> コメントありがとうございます! 優柔不断なので、ひとつ動かすまでは人の何倍かくどくど考えてしまいます。笑 それゆえに、やりながら直していけばいい! とスタートすることにしまして。 広角レンズも、どっちかというとそんな感じです。 勉強は気が重いですが、いつも何かしら新しいことをやると、正当な逃げ道にもなるし、いいですよね。 RYO-JIさんの探訪記も貴重な資料であり、単純に良い出来なので、大切に扱ってしかるべきだと思います。 ともに、どんどんやっていきましょう! 谷中・根津・千駄木、「谷根千」は、お散歩フォトの聖地みたいな街ですから、かなり多くの人の写真に写っていると思います。 東京は建物も面白いですが、それらとともに100年の歴史を生きてきたこの巨樹も、大切にしてほしいですね。 この突然現れてびっくりする大きな姿、大好きです。
ヒマラヤスギ合唱団 2024年9月8日 at 9:42 PM 返信 こんもりとした緑陰がなくなり、スティックセニョールのようにスリムになった樹間からは、東京スカイツリーが見えるようになりました。「谷中のスカイのツリー」とも呼びたくなる美しい青空が広がっています。 台風の傷跡から約5年。ヒマラヤスギは健康を取り戻し、さらなる台風対策のため、樹木医によるブレーシング作業を行うことになりました。(2024年9月10日予定) 微力ながら今後とも力を尽くしていきますので、折に触れファインダーを通じ、見守っていただければ幸いです。
狛 2024年9月9日 at 6:34 PM 返信 ヒマラヤスギ合唱団様 コメントありがとうございます。 近年ますます巨大化した台風が襲来するたび気になっていた「谷中のヒマラヤスギ」のその後でした。 実際、倒れてしまう巨樹も多い中で、補強が施されるとは! ヒマラヤスギを大切にする皆さんの思いの強さを頼もしく感じるとともに、まだこの先も街のシンボルツリーを見られることを嬉しく思います。 ぜひ近いうち、再訪させていただきます。
6件のコメント
to-fu
新サイト開設おめでとうございます!
いつの間に!ですね。驚きました。そして素晴らしい出来ですね。
実は私もサブドメインを取得して、そちらに巨樹ログのクローンだけ抜き出す作業を試みたんですが
あまりに面倒くさくて八ッ場ダムの工期並みに伸び伸びになっています 笑
あとは下手に長年やっているためサイト評価も少しは上がってしまっているものですから、
やはり本サイトに公開した方が検索順位もずっと良かったりして…どこかのタイミングで
巨樹ログだけ見やすくまとめないと、とは思ってるんですけどねえ。
そしてこの谷中のヒマラヤスギ。
パン屋にお墓、この光景は見覚えがありますよ。何度も撮り歩きました。
でもヒマラヤスギとなると、あったかなあ…と記憶があやふやだったり。
興味がない時代だったので本当に視界に入っていなかったんでしょうねえ。勿体ない。
あまり考えたくありませんが、このパン屋さんが無くなってしまったらきっと…
狛さんも仰るように、その瞬間を待ち望む方々の魂胆が透けて見えるようで何だか嫌な感じです。
想像以上に大きくなってトーテムポールのように枝葉をぶった切られた街路樹を見ても感じることですが、
人間の都合だけで樹木がぞんざいに扱われるのはいかがなものかと思いますね。
せっかく大きく成長できたんだ。何とかこう、上手い付き合い方はできないものかな、と。
このクラスの目立つ巨樹なら保護しようとする勢力も存在するはずなので、頑張っていただきたいですね。
coma
to-fuさん>
初コメント、ありがとうございます!! お名前が自動で大文字化してしまうのはどうにかしたい!!
ワードプレスは勉強しながらなのでお恥ずかしい限りなのですが、ひとまずコンテンツを作れるまでは行けたと見て、作業しながら学んで行きます。
フリーのブログでもできない事はないんですが、やっぱり十数年の雑味がすごくて。煮詰めて固めたいなと思いますね。笑
車では行けない東京街中の巨樹ということで、思い浮かんだのはこの樹でした。
スナップで何度も撮ったあの樹……どうしただろう? と、そんな思い出し方。
どうやら当時の自分にも、スギとヒマラヤスギは違う、くらいの感覚はあったらしく……でも、このY字路の方が気になったのかもしれません。当時、路地は好きでしたからね。
巨樹を見て回ってこの樹を見に行った時、えっ、天然記念物じゃないんだ? というのはちょっとしたショックでした。
記憶の中の美化された像に劣らず立派で個性的な樹なのに……と。
この樹を伐るか残すかで、谷中の度量を測ってしまいそうです。
無くすのは一瞬でできますが、共存するのは難しい。
……でも、そんなに難しくて価値がないことなのか? と思うのは、やっぱり僕が部外者だという証拠なのでしょうか。
RYO-JI
広角ズームに専用サイト開設・・・スゴイ、いつの間に。
いや、おめでとうございます。
絶対に巨樹専用サイトを開設すべきだとずっと思っています、私も。
でもねぇ、諸々の作業や勉強を想像するだけで心が折れてしまって手が出ません。
だからこそ狛さんが実行し始めたのには大賛辞を贈りたいと思います。
そしてこのヒマラヤスギ、誰かの写真で見た覚えがあります。
この辺りをスナップする人は多いみたいですね。
そんな人達には、このヒマラヤスギとパン屋の光景は撮らずにはいられないでしょう。
都会には貴重な地域にとけ込んだ樹なので、是非ともランドマークとしてでも残していただきたいです。
coma
RYO-JIさん>
コメントありがとうございます!
優柔不断なので、ひとつ動かすまでは人の何倍かくどくど考えてしまいます。笑
それゆえに、やりながら直していけばいい! とスタートすることにしまして。
広角レンズも、どっちかというとそんな感じです。
勉強は気が重いですが、いつも何かしら新しいことをやると、正当な逃げ道にもなるし、いいですよね。
RYO-JIさんの探訪記も貴重な資料であり、単純に良い出来なので、大切に扱ってしかるべきだと思います。
ともに、どんどんやっていきましょう!
谷中・根津・千駄木、「谷根千」は、お散歩フォトの聖地みたいな街ですから、かなり多くの人の写真に写っていると思います。
東京は建物も面白いですが、それらとともに100年の歴史を生きてきたこの巨樹も、大切にしてほしいですね。
この突然現れてびっくりする大きな姿、大好きです。
ヒマラヤスギ合唱団
こんもりとした緑陰がなくなり、スティックセニョールのようにスリムになった樹間からは、東京スカイツリーが見えるようになりました。「谷中のスカイのツリー」とも呼びたくなる美しい青空が広がっています。
台風の傷跡から約5年。ヒマラヤスギは健康を取り戻し、さらなる台風対策のため、樹木医によるブレーシング作業を行うことになりました。(2024年9月10日予定)
微力ながら今後とも力を尽くしていきますので、折に触れファインダーを通じ、見守っていただければ幸いです。
狛
ヒマラヤスギ合唱団様
コメントありがとうございます。
近年ますます巨大化した台風が襲来するたび気になっていた「谷中のヒマラヤスギ」のその後でした。
実際、倒れてしまう巨樹も多い中で、補強が施されるとは!
ヒマラヤスギを大切にする皆さんの思いの強さを頼もしく感じるとともに、まだこの先も街のシンボルツリーを見られることを嬉しく思います。
ぜひ近いうち、再訪させていただきます。