巨樹たち 高知県大豊町「杉の大杉」 / 0件のコメント 伝説を生きる超巨大神代杉 四国巨樹探訪旅は徳島から高知へと移りましたが、一発目で最大のカリスマに挑戦する運びとなりました。 超弩級の巨大杉「杉の大杉」です。 現地に着き、拝観料200円を払って振り向けば、もう、どうしても隠せない巨大杉の先端部が見えている。 念願叶う、と、ドキドキしながら八坂神社の鳥居をくぐった途端、3人揃って足を止め、動けなくなってしまいました。 なんなんだこれ……。 巨大すぎて、脳が「それ」を樹木であるとは認識してくれない。 岩山か、そうでなければ、直立したタンカーとか、そういう部類の存在感を感じるのを如何ともし難い……。 モノにはそれ相応のレベルがあるということでしょうが、この樹は、その仕切を飛び越えてしまっている。 思い浮かぶ比喩に対してぶつかる「いや、やっぱり樹木だわ……」のインパクトが強すぎ、痺れて立ち尽くすしか無くなるのです。 そう……とんでもないことですが、この超絶巨大な物体は樹木です。 何言ってるんだこいつは、と思われるかもしれませんが……。 「存在」や「実在」などという、そのもののことを考え込んでしまいます。 幼少の頃、巨大な像や船や恐竜や、そういう馬鹿でかいモノが怖かった。 おそらく、その頃のちっぽけな自分がこのとんでもない杉の前に立ったとしたら、恐ろしくて泣き喚いたんじゃないかと思います。 その一方で、「怖い」と感じるモノに、常に興味を惹かる心理の不思議。 それも当然、「怖い」ものに無関心だと、すぐに食われたり踏み潰されたりしてしまう。 巨樹に対する興味は、この根源的かつ合理的な仕組みが原点なのだろう……とさえ考えてしまいました。 オーケー、かろうじてオーケー、目の前のとんでもないコレは、樹だ。 話がどっかに飛んで行ってしまいがちですが、巨樹であることを踏まえ、考えてみましょう(何言ってんだ)。 誰もが知る超有名カリスマ巨樹・屋久島の「縄文杉」が日本最大のスギだと思っていませんか? 確かに、幹周囲16メートルというデータは大したものですが、最も大きいかというと、そうではない。あえてそう言います。 数値的にさらに大きいとされているものもあるし、近づくことが許されないなら、大きさを実感できないのでは? というネガティブ要素もある。 そりゃあ屋久島へも一度は行くべきですが、「巨樹なら屋久島!」にならないのは、身近に潜む大物を探訪する魅力の方が強いから。 と、言っておきましょう。 「杉の大杉」の大きさは、縄文杉にも劣りません。 2001年の環境省調査では、南大杉の幹周が15.6メートルあり、これだけでも肉迫している。 その上、ご覧の通りもう一本、11メートルを超える北大杉が聳え立っています。 しかも、この「超」巨樹を数メートルの距離で目の当たりにできる! ……と、興奮して書いてますが、いやー、写真に撮ると、この強大無比な存在感、全く表現できないですね。苦笑するしかない。 ここまで寄れてこのザマですから、遠くから望遠で撮る縄文杉は……撮りに行く前からもったいないなと思ってしまいます。 同士3人で訪ねたのは幸い。 大杉の前にto-fuさんと RYO-JIさんをちょっと置いてみて、この巨大杉が高層ビルも同然だと示すことはできます。 我々3名の共通意見ですが、もっともっと老いていると思い込んでいました。 ところが、いざ現地に立って見てみると、これほどの大きさと高齢さを見せつけつつも、まだまだ枝葉の繁りは多く、強い生命力を感じさせます。 この、枝の範疇にとどまらない(幹だろこれ……)枝の眺めも、ほんとにすごい。 正面から見ると保護部分が目立つものの、裏側は無傷に近く、樹皮も健全。 (ああ、ただ撮ってるだけになってるなあ……) 巨大すぎる体躯の中に、古代から生きている証、無限のディテールが感じられる。 素戔嗚尊が植えたという伝説すらあり……その場合の神秘的推定樹齢は3000年。 それはないにしても、「1000年以上の歳月を生きる伝説の樹」という言葉に疑いを感じないのは確か。 巨大巨大と何回書けばいいんだ。笑 とにかくフレームに入りきらない。裏側の土手に登ると、かろうじて上部も眺めることができます。 この大質量が崩壊しないように、物騒なアンカーを打って、ワイヤーでテンションをかけていました。 樹高は、一部では68メートル(南大杉)とするものもあり、おそらく日本で一番高い樹となってしまう。 その後の計測で改められたものの、それでも57メートルという数値らしい。 太くかつ高い、本当に並ぶもののない巨樹です。 北大杉と南大杉の距離感からして、土の中で両者が合体しているのは確実ですが、さすがに1本の樹と見るのは難ですね。 なので、南大杉は高知で2位、北大杉は5位の巨樹とランクされている。 いや、株立ちのクスやカツラも多数存在する高知県においてですよ。 樹種別(スギ)に限れば、南大杉は当然のごとく1位。 いやー……興奮冷めやらず、同じような写真を何百枚も撮ってしまいました。 前日ラスト「加茂の大クス」と並び、この「杉の大杉」も天然記念物の中のいわば国宝、国指定特別天然記念物に指定されています。 特天に指定されている杉は、他にはかの「石徹白の大杉」のみ。 まさに特天にハズレなし、か……。 特天ともなると、受け止める側がオーバーフローしてしまうと暗に突きつけられたように感じますが……。 立派な解説版は、さすが多言語で書かれていますが、樹齢・幹周・樹高においてレギュレーションにイマイチ従っていないのが気になります。 樹齢なんかはお好みでいいですが、ネット時代、この表記では情報が錯綜してしまう。 いつ測ったの? の問題も。特天ともなると恐れ多くて、更新が遅れてしまうのでしょうか。 ちなみに、2010年頃は周囲に絶えず解説放送が流れていたそうで、ま、それは蛇足だよねと。 現在、観察や撮影に静かに打ち込めるのはありがたい。 もっとも、有名な名所ですのでお客さんはひっきりなしです。 とにかく、とにかく、そういうワケで。 念願の巨樹についに対することができ、気づけば1時間半、夢中で撮ってました。 世の中にはとんでもないものが実在する。 日常生活では得難い感情を呼び起こしてくれる、巨樹中の巨樹です。 「杉の大杉」 高知県長岡郡大豊町杉 794 八坂神社 推定樹齢:1000年以上 樹種:スギ 樹高:南株:57メートル 北株:50メートル 幹周:南株:15.6メートル 北株:11.4メートル 国指定特別天然記念物 樹種別四国1位(南株) 樹種別全国3位(南株) 訪問:2019.5 探訪メモ: 超有名な巨樹で、アクセスはこの上なく良好。 高知高速自動車道の大豊インターチェンジで降り、道の駅「大杉」という、分かりやすさ1000%の道の駅でトイレ休憩したら、もう目と鼻の先です。 <徳島・高知 巨樹探訪旅の記事もどうぞ>徳島・高知 四国巨樹探訪旅4 関連