徳島・高知 四国巨樹探訪旅4

高知市から北上しつつの巨樹探訪、長い一日のはじまり

(2019年5月の遠征記事をお届けしています。)

 朝5時。
 高知でナンバーワンのホテルでさっそく目が覚めます。

 昨日の肉体疲労で寝つきは大変よく、回復もよい。せっかくナンバーワ……もうこれやめてもいいですか? 

 二度寝するかどうかをよくよく考えてみたんですが、なにしろおうちから900キロも離れたところで迎えた朝、寝ていてはもったいないという結論に至りました。

 そう言って何をするのかというと、街を徘徊するんですけどね。
 高知の南国ぶりはすごい。
 なるほど、わかる、今日も30℃を超える……そういう、大気の力みを朝5時でも感じます。
 5月5時でもTシャツでうろうろできる。
 ちびちびスナップを撮り歩き。

 

 うん、思った通り、見どころや拾い物の多い街でした。
 ぜひまたカメラをぶら下げて歩きたいものです。
 もちろん巨樹の写真もしっかり撮りたいですが、一度ちゃんと車を降りないと旅の心が満足しない。
 歩きたい気持ちにさせてくれる街に泊まれるのは実に良いものです。

 さて、高知でナンバーワンのホテルへと戻り、朝食の菓子パンをかじってもまだ時間があります。
 相変わらず部屋中、ベッドの下までナンバーワンを探すのですが、ついに見つからないし……
 と、「せっかくだから」というあまり積極的でない動機で行った屋上露天風呂が高知でナンバーワンでした。
 南国の空の下、謳い文句どおり高知市を一望に見渡せる。この朝風呂は最高に気持ちいい!

 開放感のあまり、下から見えちゃわないかしら? あるいは、波を立てたら下界の人にかかっちゃうんじゃないかしら? というような心配をするほどでした。
 こんな風呂があるんだったら、次高知に来る時に再予約するのもやぶさかではない。早く言ってくださいよ。

 そんなこんなで8時半に。
 昨晩あれからひとりで鍋焼きラーメンまで食いに行ったらしいto-fuさん、道中にある店などやけに事情通のRYO-JI さんと合流。高層駐車場からフォレスター号を奪還し、旅を再開させました。
 楽しく走って、あれよあれよと大豊町まで来ました。
 本日は高知を北上しつつ、並みいる巨樹たちを探訪していきます。 
 まず第一ポイントとして……いきなり巨樹界の大カリスマが登場。

 いきなりクライマックス、最初からメインイベント。
 実は昨日寄れた位置関係ですが、色々回って摩耗した感性で対峙するのは惜しすぎる。だったら次の日に回すぜ! という作戦。

 道の駅からすぐ近くなんですが、うまくしたもので、ここからは見えなくなっているんですね。
 to-fuさんはこの道の駅で、しらたきだかこんにゃくだか、なんかその手のものを買っていました(報告)。 

 「杉の大杉」は、全国的にも大変に有名な巨樹です。
 もちろん、町の重要な観光資源になっている。
 「杉の大杉」なんて、呼べば呼ぶほど妙な名前ですが、この大杉の元に人々が住まうようになり、「杉」という村を作ったという由縁です。
「すぎにあるすぎのおおすぎおおきすぎ、すぎっていいすぎ」
 と覚えるといいと思います(うるさい)。

杉の大杉

写真クリックで個別ページへ

伝説を生きる超巨大神代杉

「杉の大杉」
高知県長岡郡大豊町杉794
八坂神社
推定樹齢:1000年以上
樹種:スギ
樹高:
57メートル/50メートル
幹周:
15.6メートル/11.4メートル

国指定特別天然記念物
樹種別四国1位(南株)
樹種別全国3位(南株)

訪問:2019.5

 杉の大杉に念願の対面を果たしてから1時間半……めいめい、時を忘れて夢中に撮り続けました。
 何枚撮ったのだろうとカウントしてみると、自分は、ほぼ200枚。
 連射で撮るようなものではないですし、1対の樹とじっくり向かいあいながら撮ってこの枚数というのは、自分としては結構なものです。
 それだけこの巨樹が色々な顔を見せてくれたということでもあるし、我々の技術なぞは到底歯が立たないということでもある。
 そういう経験ができたことを、本当にありがたく思います。

 全力を尽くし、ややフラフラして出てくるとすでにお昼、ただ写真撮ってるだけのように見えますが、けっこうエネルギー使ってます……。
 すると、事情通のRYO-JIさんが言うではありませんか。「この先に、いい店がある」。

 もちろん、満場一致で走ります。
 高速のインターがあるとは言え、大豊町は山に囲まれたのどかなところですが、そこに突如、屈強な男たちが列をなしている店が出現するではありませんか。

 ギリギリ駐車し、我々も並ぶ。
 腹をすかせたバイカー集団が次々駆けこんできて、列の長さ、厳めしさもどんどんアップ。
 獲物を待ち構える血に飢えた獣たちのような列のさなかにあって、我々もちょっとこれまでの冒険の会話をしてみたり、ワイルドさを演出してみました。

 この列が発するあまりの殺気に近所で火事が発生したらしく(?)、うーかんかん、うーかんかん、旧型の消防自動車が走り抜け、その後をなんか変な軽がすごいスピードで追従、
 「なんだあれ?」 「あれ、何の役に立つんだ……?」
 と、一同が首をひねっていると、どうやら道を間違えたらしく、うーかんかん、と猛スピードで引き返してくるハプンニングも。

 しばらくののち、ドーン!
 敦賀・勝山あたりでソースカツ丼に染まり続けた我々ですが、ここ「ひばり食堂」で何を食うかというと、このタイプのカツ丼ですよ!
 「杉の大杉」の巨大さになぞらえたかどうかは知りませんが、カツ丼はノーマルでこの大きさ。すげえ。
 臆することなく食らいつきます。たまんなくうめえな、と顔を上げると、いっしょに並んでいた現地の屈強な男たちは、
 「カツ丼大盛とラーメン」 「……を、3こ」
 とかいう注文を普通にして普通に食らっているし、この辺りはこうでなきゃ生きて行けないんでしょう(極端)。

 もぐもぐ……。
 Q: なぜ「ひばり食堂」ですか?
 A: 美空ひばりサンが世に出る以前、杉の大杉を参拝し、この杉のように大きな歌手になれますようにと願掛けをした故事から。
 杉の大杉の向こうには、うっかり近づくとひばりサンの曲が流れだす碑などもあって、我々は行きませんでしたが、代わりに今ここでカツ丼をむさぼり食っているというワケ。

 もちろん、余すところなく完食、うまいカツ丼でした。
 おやじさんの生産能力が2巡目から急激に低下するため並ぶのは必至ですが、「杉の大杉 → カツ丼」の確固たるルーティンが我々の中で構築されたのは言うまでもありません。

 腹くちくなると目の皮たるむ……と言いまして、じゃあちょっとおひるね……
 ではなく、ここからアクセル踏んでスパルタンに次の探訪に突き進みます! 誰だそんな予定立てたのは!

四国秘境の巨樹探訪旅

 ここからは徳島への戻り足での巨樹行。
 四国山地に南から乗り入れるような感じで、山深い集落を転々と、個性派ぞろいの杉を訪ねる旅になりました。
 それにしても……ここはどこなんだよ。
 ものすごいところ、と、平野民にはそれくらいしか言葉もありません。
 役に立たない地図を交えて解説していこうと思います。
 いや、どうせ、今回の四国巨樹探訪に関しては、ろくな道案内はできないんですよ。
 現地から質問して頂ければ、「あー、そこは確かこうだったと思う」的な貧弱コールセンターくらいならできるかも、そのレベルです。
 こういうところでもgoogle mapで取っ掛かりを見つけられるんですから、現代情報化社会はほんとすごい。

 国道から一本入るとすぐにこんな感じです。
 このままずっとすれ違えない。
 あなたとわたしは向かいあったまま、逃げられない。
 いえ、そうね、舗装してあるだけマシよね。

 ……そんな、サツバツとした道を登って行きましたよね。

 杉林を抜けると、ただ「高台」というには切り立ちすぎな集落に出ました。
 道幅は相変わらずギリギリのまま外側がもれなく崖っぷちという状況が続き、ハンドルに手汗がすごい。
 こういうところに暮らしている人もいるんだなあ……。

 どうやら我が車のハバではその先不安、つっかえちゃう。そう思えたので、かろうじて広くなっている場所に一旦停車。巨樹の所在地としても近いはずですが、入り口がよくわからず。

 探したり訊いたりの結果、このドラレコ画像の右側、ちょうどお二人が眺めているスロープ辺りが入り口であるということが判明しました。……一般のお宅じゃないですか?

 いや、実際、私有地であると思いますので、もしお訪ねの際は住民の方にお声がけの上お進み下さい。
 その先、すごく美しい小道が続く。花咲き、小鳥は唄う……そんな中、我々はまだ見ぬ巨樹への出会いと、背後の風景の崖っぷちさにソワソワしながら歩みを進めます……。

 ここいら、ソワソワが過ぎて写真撮ってなかったです。
 今から考えればもっと撮っていて不思議はないくらい印象的な風景だったんですが、やっぱり自分の心のスタビライザーが過負荷だったんでしょうか。
 ご同行のRYO-JIさんの紀行写真がこの辺を捉えておられるので、ぜひご覧になってください。
 The B grade ・・・「初夏の四国旅・・・二日目」

六社聖神社の大杉

写真クリックで個別ページへ

天空集落の御神木

「六社聖神社の大杉」
 高知県長岡郡大豊町日浦
 推定樹齢:不明
 樹種:スギ
 樹高:38メートル
 幹周:9.1メートル

 訪問:2019.5

 この、急斜面にひっついたような集落で出会ったのが「六社聖神社の大杉」。
 息を飲むようなこの風景を数百年にわたって見下ろしてきた杉に、感嘆の息を吐かずにはいられませんでした。
 実際のところ、もしこんな集落が自分の故郷だったとしたら、人生観は大きく違ったものになっていたはずです。

 天空の城ラピュタかなんかにいるような気分でした。
 ラピュタにゃまだ行ったことないですけどね……。

 国土地理院の大雑把な地形図によれば、この辺りの標高は320mほどらしい。
 おそらく、100〜200メートルを一気に登り、見下ろすような地形になっているのではないでしょうか。

 続きましては、再びヨサク(すでに呼び捨て)に降り、吉野川に沿うようにして東へ、およそ30分、十数キロ。
 マップの道の描き方からしてすでに、難度が増すことが予感できますが……。

 またもや。
 杉林はタイムトンネル。
 さっき通ったはずの道をまた通ってる私?

 狭路を抜けていくと、やはり苦労して切り開いたであろう小さな集落が点々と現れます。この辺りでは、このような生活も珍しくはないのか……。
 むしろ、こんな場所をウロウロ走り回る変な水戸ナンバーの方がよほど珍しいでしょうよね……。
 やや迷いつつも、三人寄ればもんじゅのアレということで、まあ正しくはカーナビとスマホと若干の勘の集合に過ぎませんが。
 とにかく、どうしてだか目的地に到着しました。 

 日射に痛めつけられたドライブレコーダーの映像では分かりづらいですが、正面の一番奥に目的の「桃原の牡丹スギ」が立っているのがすぐにわかりました。

 それくらい、孤独なほどに、形態が異なっている。
 手前にあるプレハブのような建造物が弓の神事を行う場所だったようです。

桃原の牡丹スギ

写真クリックで個別ページへ

異形の大杉と彷徨える巫女たち

「桃原の牡丹スギ」
 高知県長岡郡大豊町桃原 熊野十二社神社
 推定樹齢:1200年
 樹種:スギ
 樹高:31メートル
 幹周:10.6メートル

 県指定天然記念物
 訪問:2019.5

 名前とは裏腹に刺々しく荒々しい、野生を感じる異形の杉でした。
 印象としては、爬虫類……を通り越して太古の魚類を連想するような質感とフォルムだと思いましたね。
 忘れられない巨樹となりそうです。

 国土地理院のデータによれば、桃原集落の標高は570mほどだそうです。
 山地に近づいている分、全体的に標高が上がっている印象。
 しかしやはり、一本の巨樹を目指すたび、山と谷、かなりの標高を登り降りしているのは間違いなさそうです。

 さて、もう今日は「杉巡り」と名前を変えてしまってもいいでしょう。杉で始まり、杉で終わる……いっそ、そう決まった方がキレイです。
 リストアップ最後となる杉は、徳島県に入ったところにあります。

 これまた深い……。平面図で見れば、なんか気持ちの悪い迷路みたいなところを走るのかと思いがちですが、これがバカみたいな急斜面に巻きついているとしたらどうでしょう。
 想像できましたか? それが現実です。

 有名な渓谷の景勝地、大歩危・小歩危に程近く、かずら橋で有名な祖谷にも近い。
 万人が秘境という言葉に乗せて想像するこんな土地で山に分け入るというのは、嫌な予感しかしませんね。

 ほら。
 トンネルをくぐればそこは……

 豆知識を語ると、どうやらこの周辺はとある超有名グループの方々の別荘地があるらしく……
 って、ごめんなさい! 平家の落人伝説のことですっ!

 タチの悪い嘘情報に騙されてるんじゃないですか?
 もしくはタヌキにでも化かされてるんじゃないんでしょうか?

 この辺まで進むと、カーナビのGPSが盛んに迷い始めます。
 あまりにも蛇行し過ぎ、急に高度を駆け上り続けるせいで、道同士が接近し過ぎて認識できなくなっている模様。
 もちろん、山蔭や木陰に入ってしまうことも多い。
 世間からの隔絶感をじっくりと噛みしめるドライブです。

 有名な「落ちたら死ぬ」看板をここにもつけて欲しいものですね。
 なぜって? 落ちたら死ぬからです。

 とはいえ、もうこの頃にはこのテの道にだいぶ慣れてきている自分がおり、というか、車中、いちいち驚くのに疲れてしまいました。
 むっつりとぐねぐね道を登り、登り、ひたすら登って行った覚えがあります…….。

 が、その時、すっかり錯乱していたナビ子さんが、突如、目的地に接近宣言。

 おおおお……!
 と、一同、声を漏らしたのを覚えています。
 「五所神社(大宮神社)の大杉」と対面した瞬間でした。

五所神社の大スギ

写真クリックで個別ページへ

平家落人の里の巨大杉

「五所神社の大スギ」
徳島県三好市西祖谷山村上吾橋 五所神社(大宮神社)
推定樹齢:1100年
樹種:スギ
樹高:30メートル
幹周:12.9メートル(実測)

樹種別(スギ)幹周県1位
県指定天然記念物

訪問:2019.5

 杉では、徳島県最大の幹周囲を誇る巨樹です。
 実測もさせて頂き、12.9メートルという迫力の数値を実感。
 これだけの巨樹を手ずから測ることができたという経験だけで、これまでの険しく長い道のりが報われました。

 ああ……やった。やりました。
 17時を過ぎ、夕暮れを前にして、予定していた全ての巨樹リストを探訪完了することができました。
 撮り終えてからしばし放心状態になってしまい、路肩に腰掛け、大杉の全体像や見下ろす山の風景をぼーっと眺めました。

 もちろん、四国の巨樹は、まだまだ深部にツワモノが潜んでいることでしょう。

 しかし、深追いしすぎて他の方々、現地の方々に迷惑をかけてはいけない。
 ましてや、これから日が暮れてから、あのおっかない道を走る勇気はありはしない。
 我々には、戻らねばならない日常があるのですね。

 とはいえ、あまりの浮世離れした光景のため、写真撮りとしてはしばし車を停めてはシャッターを切らずにはいられない。なんてところだ……。

 データによれば、この周囲の標高はだいたい620mほどらしい。しかし、極めて切り立った地形であるので、計測ポイントがちょっとずれただけで凄まじく数値が変動します。
 崖底から天空へ一直線。まさにそんな地形です。

 大歩危峡まで降りてくると、「下界」という感じがしました。
 日が落ちた渓谷は風が冷たいくらいで、絶景を撮っているとにわかに冷えが来そうでした。
 少なくとも離合困難や崖から転落→爆死の危機からは解放されたのだ……という弛緩もあったのかもしれません。

 こういう時、どこからともなく、あったかいコーヒー(紙コップのやつ)を調達してくるのがRYO-JIさんです。
 向こうに自販機ありましたよ? なんつって、そりゃあもう飛びつきますよね。
 このハードな巨樹探訪の達成感と疲労感をかみしめつつ、世に聞こえた大歩危の渓谷美を見下ろしながら飲む。
 ただの自販機カップコーヒーでも、この上なくうまかったですね。

人里にもどる

 出発の地、美馬にまで戻ってきました。
 これまで初めて目に飛び込んでくる光景の連続で、既視感ある場所に戻ってくるという感覚はこういうものだったか! と、それだけで少し感動しそうになりました。
 語りあっても、とてもただの2日間とは思えないような濃密すぎる2日でした。

 どんどん夜へと向かっていく残り火のような明るさの中で、また近い再会を約束し、お別れしました。
 お二人はこれからそれぞれ近畿に戻られるとのこと。お気をつけて!

 さて……僕は、どうすんのかな……。
 帰り道、to-fuさんから安くて快適なお宿を紹介してもらったものの、問い合わせたところ、すでに満室とのこと……。
 これだけ危なっかしい道をこなしてきたわけなので、そらもう、ふかふか寝床で安眠する権利が俺にはある! と思っていたのですが、意気消沈。
 まあ、お宿でお風呂だけは入らせてもらうことができたので、最悪の事態だけは免れましたが。

 結局、セブンイレブンで「ちゅうかどん」をガツガツ3分で食い、20分ばかり走って、道の駅みままで戻りました。
 疲れにのしかかられているこんな時には、新しいことはせぬことです。
 みまの駅。ここもすでに懐かしいような……せめて、2日前に車中泊したマスとは違うマスに泊まろうぜ、相棒。

 手慣れたもんで、5分で支度、特に何の娯楽を欲するわけでもなく、寝袋にイン。
 ああ……と思ってバックアップを取りがてら、今日撮った写真を見返したいと思うも、志半ばで眠りの淵に落ち込みました。
 その入り口は、今日走った四国の山地と同じくらい切り立っていて、どこまでも落ちていきそうに深かったのでした……。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です