巨樹たち

茨城県つくば市「筑波山神社大杉/大御堂のスダジイ」

もっとこのタコさんに注目してあげて

 4月、筑波山。
 できたてほやほや! みたいな多重トーンの緑が綺麗でした。
 茨城県民にとっての筑波山といえば、小中学のゴミ拾い遠足で登らされ、つまり人生の一合目で興味を失うスポット。
 まあ、蝦蟇の油とかもあんまし欲しくないですしね……。

 と、ノスタルジーに浸っているうち、山道に入ってしまいました。
 最大幅1.9メーターのところ、幅1.8メーターの車で走る?
 まあ、いけるでしょ。

 って、後で見たら「小型車以外通行不能」ってなってたのか……。

 ウワーやめときゃ良かった!

 ドラレコが超広角なので結構広く見えてしまいますが、ひどい狭さです。
 というか両側の側溝が兇悪! 怖え!

 ……以上、平地から吹き上がった風があまりの角度に吹き戻ってしまうという「風返峠」でした。
 こんななのに、対向車も来ます。
 遠回りでも避けるルートをお勧めしておきますよ。

 そんなこんなで、筑波山へ登山する者はまず参詣なさい……という構えの筑波山神社に到着。
 今回の大杉はご神木であり、典型的な立ち位置、山門(「随神門」、市指定重要文化財)の隣にあります。
 山門? 神社に山門というところが茨城県日立市「御岩山神社」と同様、山岳信仰とのつながりを匂わせるではありませんか。

 改めて「筑波山神社大杉」のもとへ。
 茨城県のサイトによれば、神社内で最大のスギだそうで、その目通り幹周囲は9.8メートルと、かなり目を引く数値。
 ですがご覧の通り、ちょっと変わった風貌をしていて……

 強烈な根上がり状態なのです。
 「地表から1.3メートルの箇所を測定した値」という基準に愚直に従えば、かなり根っこに近い太い部分を計測することになってしまう。
 しかし、この場合は板根を持つサキシマスオウか何かのように、「幹」とはっきり判断される箇所を測定すべきでしょう。
 おそらくそのルールに則った値が巨樹DBに登録されていた800センチという数値なのだと推測します。

 それにしても、まるで蛸のような、かなり個性的な姿。 
 この規模のスギともなれば土の下はこうなっているのだ……と肉眼で確認できてしまう状態。
 なぜ土がなくなったのか不可解ですが、スギとしては元に戻してほしいと思っているんじゃないでしょうか。

 それとも、築山ごと根で呑み込んでしまった? 
 いや、白っぽく変色して樹皮の感じが異なる高さまでは土に覆われているべき……そう見えて仕方がない。

 この根幹部を見ていると、強い渇きを感じます。
 異形は異形でも、降雪による豊富な水量に育まれた裏杉たちとは決定的に環境が違う。
 洞杉台杉と同等の生命力がこのスギに宿っていたとして、乾燥した関東平野の只中では発揮できそうもない……。

 そのせいもあるか、ご神木的なオーラが感じられない……
 というか、ほとんどの参拝者が気づかず、気づいても一瞥しただけで通り過ぎて行ってしまいます。
 しつこくカメラを向けていると、ようやく数人が戻って来てスマホを向けていましたが……。
 常に気遣っているのは、後ろにある超絶レトロなお土産物屋さん「杉本屋」さんくらいなもんだ。

 裏側に回ってみると、樹皮の状態も良好とは言い難く(病虫害か)、ふかふかした表皮が損なわれてしまっています。
 目立っている巨大な根にしても白骨化・空洞化しているし、もっと手厚く扱ってあげて欲しい!

 説明文だって簡素すぎる。
 しかも、神社内にあるから安心と判断されたものか、天然記念物無指定。
 さらに驚いたことには、筑波山神社のサイトでもこの大杉には全く触れていない。呆然……。

 この際、古いエピソードを発掘するなり、ないならないで、「ナントカ上人がぶっ刺した耳かきが~」とか、伝説をちょっと捏造するくらい構わないと思う。
 せめてちゃんと見てやってくれ! と願います。

 山門の階段上から見下ろしてみると、かなり堂々とした体躯のスギなのは確か。
 見に行ってガッカリするようなことはまずないはず。
 筑波山においでの際は、どうか気付いてあげてください。

「筑波山神社大杉」
 茨城県つくば市筑波731
 筑波山神社
 推定樹齢:800年
 樹種:スギ
 樹高:32メートル
 幹周:8メートル
 (あるいは9.8メートル)

 訪問:2018.4

探訪メモ:
 Googlemapで直近の写真を見て、少なくとも樹勢は衰えていない様子に健気さを感じました。
 また、「杉本屋」さんでは、この大杉の枯葉を使ったお香を販売し始めたとのこと。
 意欲的な取り組みに拍手!

 「大御堂のスダジイ」とともにぜひご訪問を。

 上記データ、8メートルという幹周は、デフォルトで環境省DBに入力されていた数値です。
 過去、そこに追加する形で、自分が写真やコメントをフォローアップした経緯があります。

大御堂のスダジイ

 存在感を消してたたずむ大杉の他に、スダジイの巨樹もあります。
 筑波山神社に到達する手前の「中禅寺」というお寺、この本堂前にあるので「大御堂(おおみどう)のスダジイ」と呼ばれているようです。

 2018年の訪問当時は大規模工事中(2020年に完成したそうです)。
 経路や配置が変更され、仮設の建屋でお参りを済ませる形式。
 スダジイもフェンスの脇から身を乗り出してなんとか撮った感じでした。

 トップ写真のものが最大とみられる個体。
 節くれだち、瘤を生じ、長い生涯を外見に反映させていくスダジイ巨樹特有の厳めしさがありますね。

 他にも、一族をなすシイなのか、大御堂の敷地を囲むように(無造作に)巨樹が点在していました。
 神社へ向かう道路に身を乗り出すように生えているこのシイもかなりの大きさ。
 同じく幹周6、7メートルほどはありそうで、見応えを感じます。

 この後、筆者は東北に移住してしまい、筑波山神社へ再訪していませんが、これら名もなきスダジイたちが整理されずに残っているのか少し気がかりではあります。
 Googlemapにおいて、

 「御堂のために新しく駐車場が作られ、木自体には影響ないものの、この木の周りの静かでおごそかな風情はなくなってしまいました。」

 とコメントされている方がおられ、さもありなんと。

「大御堂のスダジイ」
 茨城県つくば市筑波748−1026
 筑波山 大御堂
 推定樹齢:400年
 樹種:スダジイ
 樹高:20メートル
 幹周:7.6メートル

 訪問:2018.4

探訪メモ:
 Googlemapでも「筑波山御堂前の巨樹」で検索可能。
 ぜひ筑波山神社の大杉とセットで訪ねてみてください。 

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