巨樹たち 徳島県三好郡「加茂の大クス」 / 0件のコメント 一樹、森成す三加茂大楠 恵まれし国・徳島県の巨樹めぐりにおいて、決して素通りするわけにはいかない1本はどれか? やはり「このお方」を外しては本末転倒でしょう。 「加茂の大クス」。 「東根の大ケヤキ」などとともに、単独樹木では6件しかない国の特別天然記念物に指定されている特大級の大クスです。 所在地を調べるのに苦労はない。 市街地に近く、平坦かつ開けたところにあるので、車中数百メートル前段階からその姿が見える。 この時点で興奮の度合いは急上昇し、ありえないことに道を間違えてしまいました。 思いがけずクスの真ん前に出てしまう。 直進可能ですが……樹冠は際限なく巨大になり、車でくぐるような状態に! こんなにでかいのか!? 開いた口が塞がりません。 正面側の駐車スペースで車を降り、三人そろってほとんど無言、一直線に撮影に向かいました。 ……が、すぐに途方に暮れました。 とんでもない巨樹です。目の当たりにして、呆然と立ち尽くす他ありません。 少し距離を詰めては、また撮る。 どうしてもそんな、無為な繰り返しになってしまいます。 巨大過ぎて、ディテールを見られる距離では全体像がちっともフレームに収まらない。 仕方なく、ぐるぐると周囲を撮り回る。 この樹のために県が土地を買い上げて管理しているそうで、遮るものもなく、実に気持ちよさそうに育っています。 道の上を枝が悠々とまたぐ。 周囲が開けているために比較対象がありませんが、枝張りは差し渡し50メートル以上にも及んでいます。 その巨大さは衛星画像の方がよくわかります。 どの方向から測っても50メートル近い枝張り長を叩き出す……こんな樹が他にあるか? 全く、唸るような規模。これがただ1本の巨樹のなせる技なのです。 超巨大。ですが、とんがったところがない。 大らかすぎるほどに大らかで、この先1000年も安心して見ていられる。 それはやはり、我々が寿命100年にも満たない生命体だからでしょうか……。 何回生まれ変わったとしても、ここへ来さえすれば、変わらぬこの樹に会えるような気がします。 これまでに見た中で間違いなく最大の樹冠は、覗き込む者を大海の小魚の気分にさせます。 嬉々として集まっていた鳥たちもまさにそんな気分で、この樹の中を「泳いで」いたことでしょう。 しかし……いやー、まったく…… 日本全国どころか世界にも誇れる巨樹でしょうね。 あまりにも巨大過ぎ、とてもとても、この樹の全貌を捉えられるとは思えない。 関西のお二人も「あかん」とか言ってましたが笑、まさにそんな感じ。お手上げです。 この樹の本質をバッチリ捉えるなんて、何百回訪ね、何十年費やせば果たせることなのやら。 これ、ある意味、富士山に通じる感覚だろうと。 究極存在感を帯びる数少ない実在物と言えるはずです。 案内板の表記では、目通り幹周囲は13メートルということになっていますが、見れば見るほど、「それだけしかないのか?」と三人で訝しみました。 推定樹齢は1000年ですが、巨大さからは納得できるにしても、全く若々しい樹勢を感じます。(※数値については修正値を発見。最下部に捕捉します) この日は神社(若宮神社)祭礼の準備のために作業されている方がおられました。 我々人間より、いっそ自動車をモジュールにするのが適切だとは……めまいがしますね。 加茂の大クス……まさに特別天然記念物の名に疑いなし! とてつもない樹でありながら、いつの時代も多くの人々に愛され、この樹を中心としたコミュニティがある。 これこそ巨樹の理想形。 徳島へおいでの際は、どなたも実物をご覧頂き、ぞんぶんに仰け反ってください。 「加茂の大クス」 徳島県三好郡東みよし町加茂 推定樹齢:1000年 樹種:クス 樹高:23.35メートル 幹周:16.72メートル (2019年修正値) 国指定特別天然記念物 訪問:2019.5 探訪メモ: ご覧のように周囲が公園として整備されており、心ゆくまで特級の巨樹を堪能することができます。 自治体の各取り組みに心から感謝。 東みよし町のホームページに最新らしき計測値が載っていましたので、上記データもその値で修正。 なんと17メートル近い幹周があり、20年で3メートルも成長しているらしい。驚愕です。 いろいろなモノと大きさ比較をしているこちらの記事も面白い。わかるような、わからないような……。笑 巨樹の在り様は千差万別。 例えば秋田県「吹張の大槻木」を馬鹿正直に地上1.3メートル地点で測ってしまえば、22.8メートルという驚異の幹周を叩き出すことになります。 ……が、それはしない約束らしい。 「加茂の大クス」のように正々堂々、正攻法で巨大さを感じられる巨樹は本当に貴重ですね。 <徳島・高知 巨樹探訪旅の記事もどうぞ>徳島・高知 四国巨樹探訪旅3 関連