巨樹たち 茨城県水戸市「愛宕山古墳のコブシ」 / 6 コメント 全国第3位のコブシの巨樹 新型コロナウィルスの猛威も自然界には全く影響なく、花も咲けば芽も吹く。 人混みに揉まれるのは気が引けるにしても、春らしい風景が見たいものです。 当然、桜の動向が気になりますが、もっと気が早い、春の到来を知らせるような樹を訪ねてみました。 古墳に生えているというコブシの巨樹……茨城県水戸市「愛宕山古墳のコブシ」が目的地。 リサーチ段階では、環境省巨樹DBで樹種を「コブシ」、地域を「茨城県」と「千葉県」と指定して検索。 モクレン科であるコブシは、ホオノキやユリノキ同様、巨樹のレギュレーション(地上1.3メートル地点で幹周囲3メートル以上)を満たす個体が登録されています。 しかし、千葉県では0件。 茨城県では7件あるも、スギやクスのように化け物じみた大きさのものはなく、3メートル台と4メートル台の個体にとどまる。 その中から探訪可能な距離のものに絞り、この樹に出会ったのです。 DBに記載はそこまでで、水戸市のホームページに流れて断定となりました。 よく行き来していた国道51号から逸れることわずか数百メートル。 長閑な集落風景と耕作地の真ん中に取り残された小島のような雑木の塊がすぐに見つかりました。 古墳の墳丘ということですが、築山とか神社の小富士くらいの大きさ。 ましてや関西の前方後円墳のような印象的な形状でもない。 頂上?に古びた小さな愛宕神社があり、古墳の盛りを転用して神社が置かれ、小さすぎるとわかっていながら「山」と名付けたのでしょう。 支配勢力の上書き更新の意味合いで、わざとこうしたのかもしれないですね。 コブシは神社の入り口から左手の斜面中腹にあります。 道中、あちこちに庭木のコブシの白い花が見え、「やった!」と確信したものの……巨樹のコブシは満開にはまだ間がありそう。 イチョウの黄葉と似て、巨樹となると若干時期がずれる印象がありますね。 しかし、ちらほら咲く白い花は青空に美しく映え、「ここにいるぞ」と主張していました。 「コブシ」は、漢字では「辛夷」と書く。 意外な字面ですが、漢方薬で種子を用い(蓄膿に効くらしい)、種子は噛むと辛いらしいので、このような字になったのでしょう。 夷は「エビス」とも読み、異境やその民を表す字で、中国からの伝来を匂わせているようにも感じます。 また、大振りな6枚の花弁も、香水の原料として有用だそうです。 ひとしきり花を観賞し、視線を奥に送ると、薄暗い木立の中に影となっているコブシにあるまじき巨大な幹に気づきます。 とりあえず石段を登って愛宕神社にお詣りし、社の裏のコブシ巨樹のもとへ。 本当にこれがコブシの樹か!? と疑うような太さ、高さです。 庭木や学校の校庭にある印象ですが、こんな印象はない。 長く生きるとこんなに巨大になるのか? と度肝を抜かれます。 三又に分かれた幹はがっちりと強固な根で固められており、一本が分岐したものに見えます。 スギなどとはまるで違う質感の樹皮、中身が詰まって大変重そうな幹。 あの花が付いていなければ、やはり到底コブシと思えない。 飛び抜けた存在感。 目通りの幹周囲は市のサイトでは4.6メートル、巨樹DBでは4.2メートルとなっています。 不安定な斜面に生えており、計測地点がばらつくのでしょう。 3又のうちの1本は、かつての枝折れによるものか、空洞化していました。 まるで開きにされた大ウナギのよう……しかし、この幹が枝をつけ、花を咲かせているのです。 予想を遥かに上回る良い巨樹に出会えたことで、コブシという樹種にも興味が増しました。 巨樹が樹種自体を知る機会を与えてくれると、多くのことを学べるように思います。 帰宅後、日本全国のコブシ巨樹を検索しました。 ……そしてまた驚く。 なんとこのコブシ、全国で第3位の大きさだそうです。 岩手県宮古市の個体が幹周囲4.8メートルで上位に来ますが、差は少ない。 図らずも日本最大級のコブシを観察していたとは。 巨樹ファンとして、感慨深いものがあります。※1 「愛宕山古墳のコブシ」茨城県水戸市栗崎町2253樹齢:不明樹種:コブシ樹高:25メートル幹周:4.6メートル市指定天然記念物訪問:2020.3 探訪メモ: 途中の道が狭く、集落の中を通るので、事故に気をつけて。 駐車場はありませんが、長閑なところなので、路肩に停めました。 下記の芳賀(はが)神社に続く道は、出征する兵士を見送ったため「出世街道」とか言われていたようです。 2020.6 再訪 鮮やかな緑の葉をどっさりと付け、樹勢は良好のようです。 見ているこちらも元気になる眺めでした。 近くの芳賀神社には樹齢200年とされる大ケヤキ(幹周4.6m)もありました。 幹上部が膨れ上がり、数値よりも迫力があります。 石段脇にあるケヤキ(幹周囲3m台)も根上がりが目を引きます。 コブシがある愛宕山古墳もこの芳賀神社が管理されているとの記述があります。 ※1 掲載後、コメントにて巨樹探訪仲間のto-fuさんより、知られざる日本一のコブシ巨樹、岐阜県「野麦のコブシ」の存在を教えてもらいました。 幹周囲5.3メートル、なぜか環境省DBに載っていません。 これにより、この「愛宕山古墳のコブシ」は第3位ということになりました。 関連
to-fu 2020年3月23日 at 5:01 PM 返信 我が家のご近所さんの庭に立派なこぶしの木が生えているんですが、それでもたぶん幹周1m そこそこでしょうかね。こぶしで4mだと!?って驚いてしまいました。想像すらできません。 ちなみにRYO-JIさんが書かれていたツバキとサザンカの関係の如く、モクレンとコブシも いまいち見分けがつきません。改めて調べてみたら出生や花弁の数など色々違うみたいですけど… ひょっとすると前回あの爺杉を訪問した際、近くをニアミスしてたんでしょうかね? 4mのこぶしだなんて俄然興味が湧いてきました。早速地図にチェックを入れておきます! で、センサーサイズ。やっぱり壁がありますよねえ。 設定を詰めればAPS-Cやそれ以下でもそれなりに仕上げることは可能なんですが、あの帰宅して RAWデータを弄った時の安心感たるや、一度味わってしまうとセンシティブな小センサー機の データを弄るのが億劫になってしまいます。モニターでJPGを見る限りなら大きな差は無いんです けど、どうせ撮るなら良質なデータで残したいと思ってしまうのは仕方ありませんよね。
狛 2020年3月24日 at 8:37 AM 返信 to-fuさん> コブシといえば庭木のイメージですよね。しかし、成田からこちらの田舎道を走ってくると、山の中に唐突に真っ白になっている大木を見かけることがあるのです。あんなところに野生味あるコブシがあったのか……と、春になると注意を引かれるんです。 で、そういえば巨樹……と、今年は検索してみました。御苑でユリノキを見たのもつながっているかもしれません。 うちの方から上って行って、やっと水戸市に入るというようなところですね。 まったくノーマークで、こんなとこは通過するだけだな……と思ってたところなので、かなり意外でした。 ほぼ注目を集めていませんが、渡辺本2冊合わせても1.8mのコブシが1本載っているだけですから、これは相当凄いと思うんです。 ぜひto-fuさんにも訪ねてみてほしいです。 で、そう、花は待ってくれないし、遠征ではないので古い機材で撮りましたが、やっぱり心残りですね。笑 撮っている最中は良いかな〜と思うんですが、あがりを見ると無念。 フルだとこうはならないし、使い勝手でも断然上なので、もう無理に小さいフォーマットに戻す理由が見つからないですね……。 何より、巨樹撮影もチャンスが限られるので、全力を尽くさねば! と思いますよね。
RYO-JI 2020年3月23日 at 9:55 PM 返信 to-fuさん同様にモクレンとの違いが・・・というかパッと見でモクレンやん!と信じて疑ってませんでした(笑)。 桜以外で開花時期に巨樹を見に行こうという発想は無かっただけに、これはいい刺激になりました。 そういう検索方法で巨樹を楽しむ術があるのか・・・と。 どんな樹種であれ、国内のランカークラスはさすがに見応えあるでしょうね。 もちろんそれにはそれなりの知識を持って臨まないと勿体無い気もしますけど。 そういう意味でもまだまだ樹種のことを学ばなければと反省したり。 かつては、センサーサイズ上等主義はいかがなものか?そう思っていましたが、一度フルサイズ機を使ってみると・・・ですね。 今後当然のように更なる高画質化が進むことを考えると、色々と怖いなぁとも思ってしまいます、金銭的に(笑)。
狛 2020年3月24日 at 8:45 AM 返信 RYO-JIさん> モクレンは紫色だろ? と思うと、ハクモクレンという白いのもあるのですよね。笑 モクレンはもっと花がもっちりしているというか、ボリュームがあり、コブシはもうちょっと小ぶりで開いた感じになると思います。 とはいえ、花が咲いてないと区別できないのか……と、自分の未熟さが浮き彫りに。。 数字づらに縛られなければ、各樹種に巨樹があるので、こうした追い方も面白いですよね。いろいろな樹種のことを知る機会にもなりそうです。 ちなみに、モクレンの方も巨樹がないか検索したんですが、こちらは該当がなかったです。コブシの方が大きくなるのかも。 最大と思われるコブシは岩手県にあるようです。 きれいに写るという論点が違うんですよね。深さとか余裕の点で違うので、立体感や存在感が全然変わってきます。 もうじきK-1が戻ってくるはずなので、撮り直しに……と、今度は僕が東北に移動してしまいました。 すぐに桜の時期になるので、ちょっと撮っているとあっという間に春が進んでしまいそうですね。
to-fu 2020年3月28日 at 10:08 PM 返信 コブシの巨樹に興味を持って近隣のものを調べてみたのですが、近隣だと巨樹DB未掲載の 岐阜県高山市の「野麦のコブシ」というものが凄そうです。 いや待てよ、高山って本当に近隣か?と冷静に考えたら苦笑いしてしまうんですけど、 今年の目的地の一つにしたいと思います。コブシに巨樹があるとは考えたこともなかったので、 こちらの狛さんのエントリーには本当に感謝です!
狛 2020年3月29日 at 9:40 PM 返信 to-fuさん> 自分はDBでの検索だけでしたので、「野麦のコブシ」、いつものおじさんのページで見て驚きました。 たたずまいもいいし、周辺の風景もよさそう。行ってみたいですねえ。 高山は……あそこまで行くとさすがに違う国に来た感がありますよね。笑 でも行きたい。 コブシとしてはやはり5メートル台が限界の大きさのようですね。すごいな……と思うと同時、我が県のコブシもやはりこれは大したもんだぞと認識できて嬉しかったです。 情報ありがとうございます!
6件のコメント
to-fu
我が家のご近所さんの庭に立派なこぶしの木が生えているんですが、それでもたぶん幹周1m
そこそこでしょうかね。こぶしで4mだと!?って驚いてしまいました。想像すらできません。
ちなみにRYO-JIさんが書かれていたツバキとサザンカの関係の如く、モクレンとコブシも
いまいち見分けがつきません。改めて調べてみたら出生や花弁の数など色々違うみたいですけど…
ひょっとすると前回あの爺杉を訪問した際、近くをニアミスしてたんでしょうかね?
4mのこぶしだなんて俄然興味が湧いてきました。早速地図にチェックを入れておきます!
で、センサーサイズ。やっぱり壁がありますよねえ。
設定を詰めればAPS-Cやそれ以下でもそれなりに仕上げることは可能なんですが、あの帰宅して
RAWデータを弄った時の安心感たるや、一度味わってしまうとセンシティブな小センサー機の
データを弄るのが億劫になってしまいます。モニターでJPGを見る限りなら大きな差は無いんです
けど、どうせ撮るなら良質なデータで残したいと思ってしまうのは仕方ありませんよね。
狛
to-fuさん>
コブシといえば庭木のイメージですよね。しかし、成田からこちらの田舎道を走ってくると、山の中に唐突に真っ白になっている大木を見かけることがあるのです。あんなところに野生味あるコブシがあったのか……と、春になると注意を引かれるんです。
で、そういえば巨樹……と、今年は検索してみました。御苑でユリノキを見たのもつながっているかもしれません。
うちの方から上って行って、やっと水戸市に入るというようなところですね。
まったくノーマークで、こんなとこは通過するだけだな……と思ってたところなので、かなり意外でした。
ほぼ注目を集めていませんが、渡辺本2冊合わせても1.8mのコブシが1本載っているだけですから、これは相当凄いと思うんです。
ぜひto-fuさんにも訪ねてみてほしいです。
で、そう、花は待ってくれないし、遠征ではないので古い機材で撮りましたが、やっぱり心残りですね。笑
撮っている最中は良いかな〜と思うんですが、あがりを見ると無念。
フルだとこうはならないし、使い勝手でも断然上なので、もう無理に小さいフォーマットに戻す理由が見つからないですね……。
何より、巨樹撮影もチャンスが限られるので、全力を尽くさねば! と思いますよね。
RYO-JI
to-fuさん同様にモクレンとの違いが・・・というかパッと見でモクレンやん!と信じて疑ってませんでした(笑)。
桜以外で開花時期に巨樹を見に行こうという発想は無かっただけに、これはいい刺激になりました。
そういう検索方法で巨樹を楽しむ術があるのか・・・と。
どんな樹種であれ、国内のランカークラスはさすがに見応えあるでしょうね。
もちろんそれにはそれなりの知識を持って臨まないと勿体無い気もしますけど。
そういう意味でもまだまだ樹種のことを学ばなければと反省したり。
かつては、センサーサイズ上等主義はいかがなものか?そう思っていましたが、一度フルサイズ機を使ってみると・・・ですね。
今後当然のように更なる高画質化が進むことを考えると、色々と怖いなぁとも思ってしまいます、金銭的に(笑)。
狛
RYO-JIさん>
モクレンは紫色だろ? と思うと、ハクモクレンという白いのもあるのですよね。笑
モクレンはもっと花がもっちりしているというか、ボリュームがあり、コブシはもうちょっと小ぶりで開いた感じになると思います。
とはいえ、花が咲いてないと区別できないのか……と、自分の未熟さが浮き彫りに。。
数字づらに縛られなければ、各樹種に巨樹があるので、こうした追い方も面白いですよね。いろいろな樹種のことを知る機会にもなりそうです。
ちなみに、モクレンの方も巨樹がないか検索したんですが、こちらは該当がなかったです。コブシの方が大きくなるのかも。
最大と思われるコブシは岩手県にあるようです。
きれいに写るという論点が違うんですよね。深さとか余裕の点で違うので、立体感や存在感が全然変わってきます。
もうじきK-1が戻ってくるはずなので、撮り直しに……と、今度は僕が東北に移動してしまいました。
すぐに桜の時期になるので、ちょっと撮っているとあっという間に春が進んでしまいそうですね。
to-fu
コブシの巨樹に興味を持って近隣のものを調べてみたのですが、近隣だと巨樹DB未掲載の
岐阜県高山市の「野麦のコブシ」というものが凄そうです。
いや待てよ、高山って本当に近隣か?と冷静に考えたら苦笑いしてしまうんですけど、
今年の目的地の一つにしたいと思います。コブシに巨樹があるとは考えたこともなかったので、
こちらの狛さんのエントリーには本当に感謝です!
狛
to-fuさん>
自分はDBでの検索だけでしたので、「野麦のコブシ」、いつものおじさんのページで見て驚きました。
たたずまいもいいし、周辺の風景もよさそう。行ってみたいですねえ。
高山は……あそこまで行くとさすがに違う国に来た感がありますよね。笑 でも行きたい。
コブシとしてはやはり5メートル台が限界の大きさのようですね。すごいな……と思うと同時、我が県のコブシもやはりこれは大したもんだぞと認識できて嬉しかったです。
情報ありがとうございます!