巨樹たち 千葉県香取市「澤大櫻」 / 0件のコメント 寺の名残の老山桜 巨樹を見るようになってから、並木をなすソメイヨシノよりも風格を感じさせるエドヒガンなどの単独木の方が魅力的に感じられるようになってきました。 桜にはもちろん華やかな春の色を期待したいですが、巨樹としての桜を意識した場合、それと同時に「渋さ」という要素が確実に存在していると思います。 毎年見に行っている「長光寺のしだれ桜」や、もはや国宝とも呼べる「三春滝桜」は、華やかさの面だけで見てもかなりのものがありますが、よく通る道の傍ら、すごく「渋さ」で訴えかけてくる桜の巨樹があります。 千葉県香取市の道路中央分離帯にある「澤大櫻」、ヤマザクラの老巨樹です。 最初にお断りしておくと、写真は過去年のものです。 この樹が倒壊してしまったとかそういうことではなく……反対に、今年(2020年)も同じように咲いていたので、安心して写真を使っています。 ヤマザクラなので、花と同時に葉が出る。 その色が混じるのもあるでしょうが、毎年見ていて思うのは、どことなく花の色が濁っているような、くすんでいるような印象です。 実際にはそんなことはないのかもしれないし、日陰ができやすい周囲のせいもあるかもしれません。 しかし、そういう印象を毎年抱き、それがゆえにこのヤマザクラを個性的に感じます。 決して、それが残念だという話ではない。 それがすごく「渋さ」を感じさせ、貫禄あるなあと思っているのです。 老樹としての貫禄、渋さ。 そして、ヤマザクラゆえの野生味。 この桜は、咲いていない冬でも心を惹きつけるものがあります。 左の写真は、2月。こちらでは1年に1度あるかという雪の日に撮った写真です。 積雪が長く伸びる枝を縁取って、ああいいなあ、絵になる……と、思わず立ち寄ってしまいました。 すぐ隣接してセブンイレブン(セブン-イレブン香取沢店)があり、移動時に立ち寄ってはコーヒーを買い、ポケットに手を突っ込んでフラフラ歩いて桜の調子を見たりしています。 ほんの少し行くと、香取市の豊かな酪農資源を扱う「恋する豚研究所」もあります。 「なんでこんな辺鄙なところに作ったんだろ?」と思ってたら、あれよあれよと目の前に新しい道路が建造され、行政との癒ちゃ……なんでもありません。笑 2つに分岐した幹がそれぞれ2又になって重なっているような形をしていて、幹周の計測は難しそうですが、4メートルほどはあるのではないでしょうか。 近づいて観察してみるとなかなかの大きさです。 枝張りも広く、対岸の電線に接触しないか心配になるほど。 色彩的に地味なために咲いても花見客は全く集まりませんが、そんな姿をこそ見て、巨樹好きでよかったなあとしみじみ思う。 華やかな紅色だけが桜ではない。ましてや桜は花だけでもない。 ここにこうして、何百年も凛として立っている樹そのものに親しめるわけですから。 足元に碑があります。 ここはもともと澤村という村だったようで、元禄の頃、日櫻聖人という方が、「村の東方の真浄寺に枝垂れ桜を、西方にこの山桜を植え、この間を信仰浄土の地とした」とあります。 検索してみると真浄寺は現存しているらしいですが、少なくとも枝垂れ桜の巨樹は見つかりませんでした(今後調査してみます)。 一方で、「澤大櫻」としては、樹自体の様子からしても元禄時代(1700年頃)に植えられたとするのに疑問は感じません。 樹齢は300年強というところでしょう。 ヤマザクラならではの長寿さと強さを発揮してここまで生きてきた、そして今年も咲いている。 地元の巨樹とともに春を感じてみるのもいいもんだな、と思いました。 撮っているうちにどんどん空が染まり始めたので三脚を取り出しますが、やはり交通量がひっきりなし。 セブンイレブンへの出入りも多いので、案外特定アングルしか撮れない。 しゃがみ込んでローアングルから……とやりたいですが、一番いい位置が車の出入り口のど真ん中なので、すごく危ない。 何度やっても、その間に必ず車のヘッドライトが割り込んでしまう。 ちょっとばかし苦労しましたが、充実した撮影時間を過ごさせてくれました。 考えてみれば、夜はずっとコンビニの光に照らされ続けている。 本当はもっと白く写るべきなのにな……とは思いますが、こうして度々視界に入ってくれることが嬉しくもあります。 「古き良き隣人」という感じの桜の巨樹です。 「澤大櫻」 千葉県香取市沢 樹齢:300年以上 樹種:ヤマザクラ 樹高:15メートル 幹周:不明(4メートル以上、目測) 訪問:2018,2019,2020.3月末 探訪メモ: 撮っていると、つられてスマホを向けにくる方が何人か。車にブレーキを踏ませていました。気をつけて! セブンイレブンに一時的に停めさせていただくなら、何かお買い物を。 もちろんゴミの投げ捨ては論外! 撮りながら、いくつかゴミ拾いしたこともあります。 周囲の声など:「写真に撮ると、『ここにこんな桜があったんだ!』とびっくりした。地元でも注目している人はそんなにいないと思う。」「県外から『恋する豚研究所』にくる人も増えたので、春はもっと注目されると嬉しい」