巨樹たち

千葉県香取市「澤大櫻」

寺の名残の老山桜

 巨樹を見るようになってから、ソメイヨシノよりもエドヒガンなどの単独木の方が魅力的に思えてきました。
 もちろん華やかな春の色を期待しますが、巨樹としての風格や渋さを魅力に感じます。

 よく通る道の傍ら、その風格や渋さで訴えかけてくる桜の巨樹があります。
 千葉県香取市、道路中央分離帯にある「澤大櫻(さわのおおさくら)」、ヤマザクラの老巨樹です。

 ヤマザクラなので、花と同時に葉が出る。
 褐色にも銅色~金色にすら見える葉の色が混じるせいで、なんとなく白に墨を混ぜたような、くすんだ印象を受けます。
 影ができやすい周辺環境のせいかもしれませんが、毎年そんな印象とともにこのヤマザクラを個性的に感じます。
 それが残念だという話では決してなく、貫禄あるなあと思わせてくれます。

 加えて、ヤマザクラゆえの野生味。咲いていない冬でも心を惹きつけるものがあります。

 写真は2月、香取市では年に一度あるかという雪の日。
 長く伸びる枝を積雪が縁取り、絵になるなあ……と、思わず立ち寄ってしまいました。

 隣地はセブンイレブン香取沢店なので、寄り道してはコーヒーを買って、ポケットに手を突っ込んでフラフラ桜の調子を見たりしています。

 ほんの少し行くと、香取市の豊かな酪農資源を扱う「恋する豚研究所」も。
 なんでこんなとこに作ったんだろ? と思ってたら、あれよあれよと目の前に新しい道路が建造され、これって行政との癒……なんでもありません。笑

 二つに分岐した幹が、またそれぞれ二又になって重なっている。
 幹周の計測は難しそうですが、足元の標柱の裏には幹周5.4米と記されていました。
 サクラの巨樹としてはなかなかの大きさです。枝張りも広く、対岸の電線に接触しないか心配になるほど。

 色彩的に地味なためか花見客は集まりませんが、そんな姿をこそ見て、巨樹好きでよかったなあとしみじみ思う。
 華やかな紅色だけが桜ではない。ましてや桜は花だけでもない。
 ここにこうして、何百年も凛として立っている樹そのものに親しめるわけですから。 

 ここはもともと澤村という村だったようで、元禄の頃、日櫻聖人という方が、「村の東方の真浄寺に枝垂れ桜を、西方にこの山桜を植え、この間を信仰浄土の地とした」とあります。

 検索してみると真浄寺は現存しているようですが、巨樹視点での枝垂れ桜は見つかりませんでした。 
 一方で、この「澤大櫻」としては、元禄時代(1700年頃)に植えられたとするのに疑問は感じません。
 樹齢300年強というところでしょう。

 ヤマザクラならではの長寿さと強さを発揮してここまで生きてきた、そして今年も咲いている。
 地元の巨樹とともに春を感じてみるのもいいもんだな、と思いました。

 やはり常に交通量がひっきりなし、セブンイレブンへの出入りもあって、無理して構図を追うのは危ない。
 そして、何度やってもその間に必ず車のヘッドライトが割り込んでしまう。
 考えてみれば、夜はずっとコンビニの光に照らされ続けている。

 本当はもっと白く写るべきなのに……とも思いつつ、「古き良き隣人」として親しめることが嬉しいヤマザクラ巨樹です。

「澤大櫻」
 千葉県香取市沢
 樹齢:300年以上
 樹種:ヤマザクラ
 樹高:15メートル
 幹周:5.4メートル

 訪問:2018,2019,2020.3月末

 探訪メモ:
 つられてスマホを向けにくる方が何人か。車にブレーキを踏ませていました。気をつけて!
 セブンイレブンに一時的に停めさせていただくなら、何かお買い物を。
 もちろんゴミの投げ捨ては論外! 
 撮りながら、いくつかゴミ拾いしたこともあります。

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