巨樹たち

千葉県印西市「吉高の大桜」

一樹で桜祭を催す大山桜

 千葉県印西市は、都心への利便性も高い一方で利根川沿いの自然環境も持ち合わせ、住みやすさランキングで連続首位をとったという、若い世代にも注目度の高い街です。
 中心部は相当高度に開発されていますが、周辺部はのどかな田園風景が続きます。
 ここに、全国を視野に入れても名が挙がるほどの立派な山桜があると知り、春雨の中、探訪してみました。

 桜は丘陵の上の集落にあり、かなり細い道を登っていくことに。
 地元ではかなり有名な樹で、開花時期には交通整理体制が敷かれるほど混雑します。

 集落内は道が狭くて離合困難、ましてや駐車場もない。
 一種、サクラ祭的に住民の方が急ごしらえしてくれた「P」があるものの、この雨でご覧のぬかるみですよ。笑

 集落内の道路は通行止めにされ、合羽姿のガードマンさんが常駐しています。
 このように、地元のご厚意で桜を楽しめるわけですが、この時期、どうしても窮屈を覚悟せねばならない……。

 しかし、「吉高の大桜」、見に行った甲斐のある名桜でした。

 本降りの雨の中、樹冠の規模を見た途端におおっと声をあげました。
 少し小高い築山のようなところに育っていて、咲き乱れる菜の花畑が周囲をガード、さらにその外側の広範囲に渡って柔らかなウッドチップが敷き詰められています。
 個人所有の巨樹だそうですが、想いの大きさが伺えますね。

 正面から対峙した「吉高の大桜」、圧倒されるような巨樹ぶりです。
 山桜であり、花とともに葉が出ることもあってか、ソメイヨシノよりも野生の逞しさが感じられます。

 しかし、残念ながら満開とはいかず。
 ソメイヨシノの満開宣言は出たものの、山桜は若干時期が遅くなるようです。
 ガードマンさんが話しかけてきてくれて、

 「これを何分咲きかって訊かれてもねえ……正直困っちゃったよ」

 なんてこぼしてましたが。
 一部咲きくらいでしょうかね……。苦笑

 とは言え、「ひとたび満開になると、2、3日しか保たない」そうで。
 (開花情報などは印西市のホームページに掲載されます。)

 最大幅24メートルというこの枝のスケール感からして、満開はさぞすごいに違いない。
 会社なぞ休んじまえ、密着して撮る価値がある対象だぞこれは! 
 ……写真撮りとしての熱意が試されそうです。

 ガードマンさん、こちらを不憫に思ったのか、自分ごとのように「ごめんね」なんて言ってくれました。
 雨は冷たいけど、その気持ちがあったかいです。ありがとうございます。
 でも、巨樹として見れば、満開じゃなくても全然平気!
 このすごい幹だけで、訪ねて来た苦労が報われるんです。
 (……そう説明したら、「そうなの? ではごゆっくり」だそうで。笑)

 保護の成果でしょう、大きなダメージを感じさせず、広大な範囲に枝を広げていました。

 解説文(クリックで拡大)。
 データは「根周り」ですが、この樹の場合、根周りと幹周りはほぼ同じに見えるので、幹周6メートルほどはあるとして良いでしょう。

 このテキストを書いている今頃、満開なのかな……と、そわそわします。
 咲けば、桜祭は大賑わい確実ですね。

「吉高の大桜」
千葉県印西市吉高
樹齢:300年
樹種:ヤマザクラ
樹高:11.7メートル
幹周:6メートル

市指定天然記念物

2017.4.15 訪問

 探訪メモ:
 集落内はかなり狭く、開花時期には混雑します。
 ガードマンさんの話によれば、この年、桜祭が設定した駐車場は2キロほど離れた学校?らしく、花見時には公共交通+徒歩を前提とした方が良さそうです。

 2017年、ヤマザクラは一分咲きだったにもかかわらず、エドヒガンは散ってしまっていました(山武市「長光寺のしだれ桜」など)。
 桜祭の主催側も読みを外してしまったようで、タイミングのシビアさを思い知ります……。

 後日、地元の方から、吉高の山桜の写真がプリントされたメモ帳をいただきました。
 こういったグッズ販売もしているようです。

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