巨樹たち

千葉県山武市「長光寺のしだれ桜」

頭上を覆い尽くす「姥彼岸枝垂れ桜」

 山武市といえば、千葉県の内陸部に位置する物産作物盛りだくさんの土地柄。走っていると、黒い土の農地がよく目につきます。

 長光寺はこのあたりではおそらく最も大きな日蓮宗のお寺。
 ここに一本の巨樹としても特筆すべき桜があり、数年、時期になると通っています。

(開花状況などは千葉県の観光サイトに載っています。)

 門をくぐってまっすぐ参道を進む。
 大きな杉並木が続き、映画のロケで使えそうな雰囲気です。

 真正面の本堂前にそびえているのがシダレザクラの巨樹。
 奥に見えるは、こちらも立派な、二世樹です。
 根元から長大な大枝を伸ばし、優雅さが目を惹き付けて離しません。

 幹周は約5メートルとのこと。
 桜としてはかなりの巨体ですが、枝張りの広大さは、その幹からしてもアンバランスに思えるほど。
 枝張り面積は800平方メートル(242坪)を超えるそうです。
 これを支えているのだから、根はものすごい張り方をしているのでしょう。
 ひょっとすると、本堂の下も全て根かもしれません。

 通称「ウバヒガンザクラ」とのことですが、基本的にはエドヒガンと同種のようです。
 「ここは江戸じゃねえ、江戸に気を遣う必要も無え!」という気概の表れだとか、「葉(歯)が花(鼻)より先に出る」ヤマザクラに対して、「葉(歯)無し」でウバヒガン……などというヒネった解釈もあるとか。

 園芸種のソメイヨシノよりもはるかに長寿命を誇り、巨樹化している桜の大多数がヤマザクラとエドヒガンです。

 桜色が濃く、煙ったような春の光の中で撮っても綺麗に映える。

 正確には満開よりも1、2日過ぎたタイミングだったでしょうが、二世樹の加勢もあって、見応え十分。
 子孫といえど、昭和40年植樹なので、樹齢50年の立派な樹です。
 若いだけあって、本体に比べて花のつきが良い。

 周囲を巡って鑑賞することができます。
 もちろん咲いている時期に訪問したいものですが、苔むした太い幹は単純に巨樹として見てもかなりの貫禄。

 しだれの無数の枝の下に入って見上げていると、まるで広大高密度な宇宙を観じているかのよう。
 仏教の寺院にぴったり……というか、それが育んできた桜だからこそ、が正しいでしょうか。

 横に広がる樹形のため、強風の影響を受けやすいでしょう。
 過去、大枝が折れたともありますが、大切に保護され、状態は悪くないと感じます。

 若い頃は東京のソメイヨシノでにぎやかな花見をしましたが、今となっては、こうして一本桜をじっくり眺める方が性に合っていると感じます。

2017年訪問時

 巨大な山桜である「吉高の大桜」は、いまだ一分咲きというところでしたが、同日の訪問(2017年)だったのに、こちらはすでに散ってしまっていました。
 桜を撮るというのは、本当に難しいなと思い知ります……。

「長光寺のしだれ桜」
千葉県山武市埴谷 長光寺
樹齢:300年
樹種:エドヒガンザクラ
樹高:15メートル
幹周:5メートル

市指定天然記念物

2017.4、2018.3末 訪問

 探訪メモ:
 お寺の広い駐車場をお借りすることができます。
 ぽつぽつと屋台や野菜を売る露天なども出ていました。

 巨樹ではありませんが、近隣の妙宣寺も桜の名所です。

 桜は本当に難しい。
 2018年は地元の方の生中継? タレコミ? を聞いて走りました。
 ちょうど満開……のはずでしたが、春の台風。一夜にしてほとんど全てが散ってしまいました。

 いつでも迎えてくれるような辻のヤマザクラ、香取市「澤大櫻」に慰められました。

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