巨樹たち

埼玉県秩父市「駒つなぎのケヤキ(龍神木)」

秩父パワーの噴出地

 標高1100メートルの三峯神社から下山、秩父市街まで戻ってきました(ここの標高は280メートルくらいらしい)。
 秩父市、「ちょうど落ち着く大きさの町」と言ったらよいでしょうか。
 「笑点」の林家たい平師匠がたびたび秩父のことをネタにしてますが、まさにご生家の近くにあるのが、この立派な秩父今宮神社。

 正面から境内に入ってすぐ、武甲山からの伏流水が湧いているという「龍神池」が。
 ウロに観音を格納したケヤキの根が、おお、池の上にせり出している……! 

 こういったケヤキ巨樹の特色は兵庫県「木の根橋」で見たそれと似て……
 などと巨樹マニアは興奮を隠せませんが、メインはまだ奥に。いや、トップ写真でバレていますけども。

 市街地の中心部にクレーターのようにぽっかり存在する信仰空間、そのまさに中心地にドンと据わっているのが「駒つなぎのケヤキ」
 ぐるりと取り囲む赤い幟の間から覗き込めば、高レベルなケヤキ巨樹特有のずっしりどっしり体型。
 主幹はすでになく、ずんぐりと三叉になった姿からは縄文時代の火焔式土器を連想しました。
 そこから伸びた太い枝が形成する樹冠にアオバズクの営巣も確認されているそうです。

 梃子でも動きそうにない。間違いなくここには巨大な力がみなぎっている。これぞケヤキ巨樹という在り様だなと。
 元々ケヤキがあった場所に神社を作ったか、さもなくば建立記念樹的に植えたか。
 そう想像したくなるほど境内(広場)のど真ん中に生育しています。
 神社サイトによれば、西暦100年頃の水神信仰にまで起源を遡れるそうですが、大ケヤキの推定樹齢は1000年。
 つまり、巨樹よりも手前の「龍神池」の方が倍くらい古い。のかもしれません。

 解説によって幹周データにバラつきがあり、二つの解説もそれぞれ「7.9メートル」「8.56メートル」、環境省DBでは8.2メートル。
 まあ、だいたい8メートル台前半の幹周囲で、DB登録で絞るなら埼玉県でベスト3には必ず入るケヤキだと言えそう。 

 この、幹が見えないほど無数の幟に囲まれた全景が好き。
 いや、本当にぐっと覗き込まないと見えない、撮れないんですけども……。笑
 ワッショイワッショイと、神輿担ぎだか胴上げだかをされているようで、むやみな賑やかさを感じさせます。

 たった一個の巨大な存在と、それを祀る無数の賑やかな存在たち。
 それこそ、この町の信仰や心の風景そのもののように思えてなりません。
 「秩父夜祭」も、こういうムードなんじゃないかな。と。

 実際、ここに身をおくと、何だか妙に楽しい気分になってくるのです。
 街中に空いた水気たっぷりなオアシスとも言えるでしょうし、こういうのを丸めて「パワースポット!」だと呼ぶのなら、いっそそれでいいか! とさえ思いました。
 中心のでかくて太いご神木、八大龍王、銭洗いの泉、茅の輪くぐり(ペット用もある)、お稲荷、役小角まで拝むことができる。
 欲張りすぎじゃない? と苦笑いしつつも、楽しくて、ついそれぞれ巡ってしまう。

 江戸時代の武士が馬をつないだから「駒つなぎのケヤキ」。
 この巨樹には、その他にも「龍神木」という呼び名があるらしい。
 由縁についてはオフィシャル解説をお読み頂きたい……

 「龍」という字がいきなり「雨かんむりに龍」になってて、ちょいと変換できない。
 ……はいいとして、平成3年? 神変がかなり最近であることに驚かされました。

 平成に入ってからほぼ境内全てと呼べる範囲でメンテナンスが施されたそうで、なるほど、色鮮やかに感じるのも当然です。
 21世紀、現代日本人の信仰モチベーションはむしろ高まっているんじゃないか? とさえ思わされるスポットでした。

「駒つなぎのケヤキ(龍神木)」
 埼玉県秩父市中町16−10
 今宮神社
 推定樹齢:1000年
 樹種:ケヤキ
 樹高:27.9メートル
 幹周:8.56メートル

 県指定天然記念物
 訪問:2023.11

探訪メモ:
 車で行く場合、正面道路以外はかなり道幅が狭いのでご注意を。
 数台分の駐車場があります。

 平成20年6月、「武甲山伏流水」が環境省指定の「平成の名水百選」に選ばれたそうです。

4件のコメント

  • RYO-JI

    旗の数が容赦なさすぎる(笑)。
    これだけ賑やかに装飾?されている巨樹も珍しいですね。
    ここまでくると『撮影できない・・・』という嘆きすら出てこず、むしろこの様を楽しく感じるに違いないです。
    主幹が失われてなおこの樹冠、逞し過ぎます。
    アオバズクが営巣しているのも何か特別な感じがします。
    江戸時代のお馬さんもこんなケヤキに繋がれたならジッとするしかないですね(どうやっても勝てない)。
    龍神木という名称は、より威厳があって由緒ある神社には相応しいような気もします。
    ですが、この何でもアリな神社には駒つなぎの方が合っているかもしれません(恐らく旗のイメージのせい)。
    とても楽しい巨樹巡りができそうなケヤキで嬉しくなりましたよ。

    • RYO-JIさん
      壁として巨樹を隠すのが役目、いや、そうしてたくさんの想いに手厚く守られているのだと見て取れます。
      でも、巨樹見えないし、と、撮れない……。笑
      秩父には地方都市として一通りの機能がありつつ、歴史と自然に恵まれた心地よさを感じました。
      秩父的には町のど真ん中なのにアオバズクが寄り付いているのも、雰囲気を象徴していると思いますね。
      駒をつないだというだけで巨樹に名前がついてしまうような人物像なのに、「要職にあった武士」の名前が解説されていないのはどういうことなのか……。
      いくらか幕府への忖度があったのかも? などとも思ってしまいました。

  • to-fu

    怒涛の八大龍王神を見て何となくあの出島のシイの怒涛の石仏を思い出しました。
    しかし秩父駅の徒歩圏内にこんな立派なケヤキがあったなんて。
    20年前の自分に教えてあげたい。(たぶん、スルーされるだろうなあ。)

    あの辺りは土壌が如何にも豊かそうで、鉄道や幹線道路が通るまでは野間の大ケヤキが生えている
    大阪能勢の辺りと同じような環境だったのだろうな、と勝手に親近感が湧いてしまいました。
    立ち姿もどことなく似ているような気がします。

    靇神木伝説も検索しました。
    昔の自分なら一笑に付していたような気もしますが、色々な巨樹を見てきた今なら
    なるほど、そういうこともあるのかも、と思えるから不思議です。

    • to-fuさん
      この幟……と、覗き込んだりくぐってみようとしたり。自分がとてもマヌケに感じました。
      規模はかないませんが、自分もどことなく「野間の大ケヤキ」を想像しました。
      近くにある秩父神社も立派で、市街を開発しながらもこういう信仰空間を大切にしてきたことが感じられます。
      三峯神社は奥の院的な位置づけでしょうが、三峯講の人たちがたくさん街を訪れたでしょうし、どこか四国の遍路接待のような空気もあったかもしれないなと。
      かといって、あのどでかい鉱山を見上げると、またちょっと想像の路線が変わるんですが。面白い街ですね、秩父。

      平成に入ってから伝承エピソードが追加されたケースは珍しいですよね。しかも複数名の方々がその場で体験されている。
      「私は龍を見た!」とか言われてしまうと、あ、うん、龍かあ、龍ねぇ……みたいな反応になってしまいますが、こういった神秘現象はもしかしたら自分の前にも起こるかもしれない。
      自分の前にというか、非凡な巨樹の前には、というべきですかね。

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