巨樹たち

福井県今立郡「一里塚のケヤキ(とエノキの合体樹)」

一里塚の歴史と文化を語る二本

 福井県での巨樹探訪。深夜の「千足杉」に続き二本目も、予期せぬ出会いでした。

 今立群池田町の「須波阿湏疑神社(すわあづきじんじゃ))」のご神木「稲荷の大杉」を訪ねた折、門前の道路を挟んだ土地に樹影を確認。
 一目見て「ここにも巨樹が!」と脚を止める存在感を感じました。

 神社の解説板には地図とともに「社頭(しゃとう)一里塚」とあり、池田町指定文化財とされています。

 江戸幕府が江戸に至る各地主要街道に一里塚を置くように命じたのは慶長6年(1601)のことだそう。
 その名の通り一里ごとにあり、距離を計算する役に立っていたのでしょう。
 傍らの祠も道祖神のようです。

 一里塚には目印の樹が植えられるのが一般的で、エノキやムクが人里の樹と感じるのも一里塚での存在感でしょう。
 関東にもぽつぽつと名残のエノキが見つかります。
 エノキが選ばれるのは、よく育って目立つからで「榎」という漢字も「夏に日影を作ってくれる樹」という意味の和製漢字らしいです。
 秋田県湯沢市では、雪深いためかケヤキが選ばれていて、特筆すべき巨樹となって今も残っています。

 写真のこの樹に話を戻すと、二又の巨樹ですが、よく見ると別々の樹が半々で合体していることがわかります。
 エノキとケヤキで、同時に植えられたものでしょう。
 上記の樹の役割から、塚の建立と植樹はそう違わないはずで、1600年代前半頃、推定樹齢400年くらいになるのでしょうか。

 ケヤキがエノキの上にのしかかるように乗っかっており、大きいのはケヤキの方。
 重たいな……と感じていそうなエノキの方が苔むしていて、性格の違いが感じられます。

 巨樹データベースでは「一里塚のケヤキ」と掲載されていますが、試しに「池田町」「エノキ」で検索すると「一里塚のエノキ」もあります。
 幹周囲は「一里塚のケヤキ」550センチ、「一里塚のエノキ」は300センチ。
 合計して8.5メートル……まではなく、根回りを測っているか、内訳3メートルがエノキと見るべきかなと。

 どちらもキノコに弱い樹種ですが、今も樹勢は悪くないようです。
 半々くらいで分担している樹冠が印象に残りました。

「一里塚のケヤキ(とエノキの合体樹)」
 福井県今立郡池田町稲荷
 須波阿湏疑神社前
 推定樹齢:400年程度
 樹種:エノキ、ケヤキ
 樹高:20メートル程度
 幹周:5.5メートル

 池田町指定文化財(一里塚)
 訪問:2018.5

探訪メモ:
 須波阿湏疑神社訪問の際にはお見逃しなく。
 神社の有名なご神木に対してオマケ的に撮ってしまいましたが、歴史や文化について掘り下げるのが面白いタイプの巨樹と言えますね。

「2018年・福井~兵庫巨樹探訪旅」もぜひご覧ください。

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