巨樹たち

福井県今立郡「稲荷の大杉」

荒魂大杉大明神

 福井県今立郡池田町稲荷、「須波阿湏疑神社(すわあずきじんじゃ)」にご神木の大杉を訪ねました。
 聞き慣れない神社名で、何度も間違え、覚えるのもちょっと苦労しました。
 町の観光サイトによれば、

「神社の名前の由来は、スワの神とアズキの神の2つからきており、アズキの神(大野手比売命)は、瀬戸内海の小豆島にも祀られています。」

 とのこと。
 地名自体に「稲荷」とついている通り倉稲魂命(宇迦之御魂神、うかのみたまのみこと)を祀ってもいます。
 格式高い神社で、歴史や文化財等に触れていると一面埋まってしまうので、詳細は検索下さい。
 「湏」がなかなか変換できないので、「須」と書かれているケースも多いですが、問題なく検索できました。

 涼しい空気の中、本殿に手を合わせ、裏手にある看板を見つけて山に入る。
 約5分とのことですが、ちょっとばかり登ります。

 やがて訪れる、「稲荷の大杉」の申し分ない登場シーン。
 説明の必要すらない一本杉。胸が高鳴ります。

 片側が斜面で、簡素ながら柵で囲われていることもあり、決まった位置から撮影するしかない状況ですが、重厚な存在感は十分味わうことができます。

 解説板にありますが、716年の古文書にすでにこの杉が「大杉」と書かれているという。
 とすれば1300、いや1500歳をゆうに超える老樹ということになりそうです。
 幹の立派さに比して枝張りはあまり大きくなく、そのお歳ゆえと感じなくもない。
 雪の影響なのでしょう、大枝が折れて地面に転がり、苔むしている。
 背の高い樹ですが、幸い落雷は受けていないようです。

 裏杉の荒々しさというよりも、厳しい環境を黙々と生き抜いている樹という印象を受けました。

 現地の解説板。
 古文書による樹齢も含め踏み込み難い面もありますが、各データ集での幹周は8.6メートルとされています。
 福井県および北陸は全国に名の轟く怪物的なスギを擁していますし、個人的には由緒ある「ご神木の筆頭」と捉えました。
 この神木自体が倉稲魂命の神籬(ひもろぎ)、つまり憑代だとあり、一方で「荒魂大杉大明神」という神名も存在する。
 

 豊穣を願うのは自然なこと。
 そのために立派な依り代を用意し、神をお迎えしようと考えるのも自然な流れと言えます。
 依り代が立派ならばこそ、神様の顕現も容易になるかもしれない。
 杉のたたずまいから、そうも思うのでした。

「稲荷の大杉」
 福井県今立郡池田町稲荷 
 須波阿湏疑神社
 推定樹齢:1300年
 樹種:スギ
 樹高:40メートル
 幹周:8.6メートル

 県指定天然記念物
 訪問:2018.5

探訪メモ:
 地域随一の立派な神社で、広い駐車場があります。団体での参拝も多いと思われます。
 写真からわかる程度の野外活動になりますので、滑らない靴などがあった方がいいでしょう。
 「一里塚のケヤキ(とエノキの合体樹)」もすぐ向かいにあります。

「2018年・福井~兵庫巨樹探訪旅」もぜひご覧ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA