巨樹たち 千葉県鴨川市「清澄の大スギ/大クス」 / 2 コメント 清澄の大スギ 千葉県最大のスギにして最大巨樹 冬でも温暖な房総半島、外房(太平洋側)南部をうらうら流してきました。 花咲き乱れ、椰子なんか生えてる(植えてる)圧倒的南国ぶりです。 千葉県に住んでいた我が子供時代、鴨川市のイメージと言えば「鴨川シーワールド(シャチがいます!)」以外なんもないとこだなあ…… 失礼、遠足で必ず行く、大変楽しい思い出の地です。 日蓮聖人ゆかりの地でもあり、「上野村ノ大椎」のふもとでは、まさに一大歴史ドラマが展開しました。 ここ清澄寺(せいちょうじ)も、聖人出家の地として古くから有名です。 実は何度か訪ねていて、当然巨樹を撮影しているんですが、どうしてか毎回満足に撮れない……。 今回もその理由を考えつつ、うららかな日差しの中、門をくぐっていけば、すぐ正面に巨大なスギが出迎えてくれます。 もちろんこれが「清澄の大スギ」。 周囲は広く囲われており、大切にされていることが伺えます。 つまりは間近で観察したり触れたりできないということですが、それでも他のスギと違いすぎるその規模の大きさは一目瞭然。 地上1.3m地点での幹周囲15メートルという驚愕の数値を記録しています。 他の樹種を加味してもこれより大きな樹は千葉県には存在せず、全国のスギ巨樹中でも第4位の大きさ。 実際見てみると、根本の発達が大きい樹で、これが数値の飛躍的アップに関係していることは明らか。 上部の幹も太いと言えば太いのですが、スギ巨樹連に言わせれば「彼はちょっとズルいよね」かも。笑 しかし、明記すべきポイントですが、「これほど巨大な単幹のスギはほとんどない」。これです。 大きな幹周囲数値を叩き出すスギ巨樹のほとんどが合体杉。 「巨大な幹が8本にわかれ~」……いやそれ、8本同時に植えたやつですよね? という合体杉。 超メジャーなカリスマ・縄文杉だって最近では合体杉らしいと言われている。 個人的には、野生を感じる裏杉衆はどうも信用(?)できないところがある。 この樹と文字通りサシで勝負できるのは、岐阜県「加子母の杉」(幹周13m)くらいのものじゃないか? と思い浮かべますが、いかがでしょうか。 Wikipediaを覗けば、「かつては清澄の大スギの西側約30メートルのところに、ほぼ同じ大きさのスギがもう1本あった。 しかし、1954年(昭和29年)の台風で倒れてしまい、その時にこの木も巻き添えになって南側半分の枝がそぎ落とされるような形で失われてしまった。 土地の人は当時のことを「地震だと近所が大騒ぎになったほどだった」とそのすさまじさを語っている。……」 なるほど、大杉の片方の側面は今も削がれたような痛々しい傷痕になっています。 「幹の東側基部に空洞ができていて、その内部は祠になっている」 との記述もありますが、実際見た感じでは祠は確認できず(というか、角度的に見えない)。 外科手術的に塞がれたのかもしれません。 さらに、高橋弘氏によれば、「そのとき倒れた方のスギは年輪の数が380前後だったといい、そこから類推するとこの木の樹齢も500歳以下である可能性が指摘されている。 これは南房総の温暖で降雨にも恵まれた気候がスギの成長を促進したものと考えられている」 ……とのこと(文はwiki掲載のもの)。勉強になります。 お寺では「千年杉」と呼び、高知県「杉の大杉」、岐阜県「石徹白の大杉」と比べるところ、かなりの自信が伺えますが、自分としても高橋説がリアルだと考えます。 科学的観測は無視できないし……というか、むしろその成長の早さこそ驚異的ではありませんか。 何にせよ特筆すべき巨杉なのは確かで、大正13年には国の天然記念物に指定されています。 ロングドライブがてらの外房巨樹巡り、まさに目玉の一本と言えます。 「清澄の大スギ」 千葉県鴨川市清澄322 清澄寺 推定樹齢:300年以上 樹種:スギ 樹高:40メートル 幹周:15メートル 国指定天然記念物 新日本名木100選 他多数指定 全樹種県内幹周1位 訪問:2021.3 他 探訪メモ: 清澄寺訪問に関しては、別記しようと思います。※ 書籍などで古い写真を確認しやすい有名巨樹ですが、年々の台風の巨大化は心配ですね……。 清澄の大クス 大杉より目立たないが、間違いなく大きい 大杉をまず見る。それは定め。「はあ……全くすごい巨樹だ。しかし、今回も写真のデキはいまいちだ……」 とかなんとか、一息ついて、左手の小高くなった方を仰ぎ見る。 何か、わさっとした樹冠があるのに気づきます。 あれも巨樹だ! と確信して駆け寄る。 すると、この大クスに出会うことができます。笑 同じ敷地内に全国に轟く大杉が存在する不幸…… と言いますか、いかにも二番手みたいな印象で見てしまいますが、幹周囲はしっかり8メートル以上あり、千葉県では「環の大クス」、「神崎の大クス」などに並ぶ大クスだと言えます。 九州、四国のクス勢にはとても敵いませんが、千葉県ではシイ勢力が優勢ですからね……。 足元がちょっと窮屈そうですが、綺麗な主幹をもった、健康そうな大クスです。 「清澄の大クス」 千葉県鴨川市清澄322 清澄寺 推定樹齢:300年以上 樹種:クス 樹高:15メートル 幹周:8メートル 訪問:2021.3 他 ドライブ旅行の趣向にもよりますが…… 清澄寺への訪問後、つい北上して帰りたくなってしまうところ、「七里川温泉」へ向かう県道81号には、すれ違い不可の狭小山道が続く箇所がありますので、運転苦手な方はご注意を。 レンタカーのお姉さんたちがどうしても譲らず、クネクネ道を数十メートルバック…… お礼くらい言ってくれよ! なんて展開になるかもしれませんよ?(なった) 七里川温泉では、なぜか猫と遊べて、なぜか炉端焼きが食べられますが、天津方面の太平洋は美しいですよ? 関連
RYO-JI 2023年2月14日 at 9:55 PM 返信 鴨川と言えばシーワールド、というのはまったく縁のない奈良県民ですらイメージでいる程メジャーですよ。 『でも、なんかそんな興奮しないんだよな……』という心の声が聞こえてきたような気がしましたが(笑)、 いやこりゃもう随分立派で興奮間違いなしという感じで拝見しましたよ。 実物の印象とは違うのでしょうかねぇ。 確かにスギ巨樹連の呟きはごもっとも、ですが、それを言い出すと我が県が誇る高井の千本杉なんてもう極悪の所業ですからね(笑)。 一方であの杉の大杉や石徹白の大杉と並ぶ存在に明記してあるのはいかがなものか?と思わなくもないです、正直。 しかし30m離れた大杉が倒れて被害を受けたってスゴく残念なことではありますが、それだけ離れてても被害を受けるって 倒れた奴も相当な巨樹だったと想像できて震えますね。 そして千葉県にもそんな大クスがあったのかと驚きました。 杉推しが優ってしまっているから存在は薄いかもしれませんが、清澄寺は必見の価値ある場所ですね!
狛 2023年2月15日 at 9:20 AM 返信 RYO-JIさん> どうやら思ったより全国区のようですね……やるな鴨川市。 関東在住時代、房総ドライブが心地よいこともあって何度も訪ねていますが、何と言いますか、難しい巨樹のひとつですね。 福島県「杉沢の大杉」も同じケースですが、「ほほーう……」以上。になってしまうんですよねえ。 そう、まさに「高井の千本杉」の邪道ぶりはその真逆を行ってて(ほめてます)、驚愕と興奮に全振りしてますね。笑 巨樹の在り方も色々ですが、個人的には今のとこ邪道ファンかも……(プロレスか?) 倒れた隣のスギは見過ごせない存在です。 おそらくは大杉と兄弟に当たる樹齢・大きさだったのだと想像します。 並び立った姿はさぞ圧巻だったでしょうが、互いに影響し合うでしょうし、こうなる運命だったかもしれませんね。 クスは正直、気付かないで帰ってしまう人も多そうです。 こちらは間近で仰ぎ見ることができるので、素直に「大きな樹!」と感嘆できていいですね。
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RYO-JI
鴨川と言えばシーワールド、というのはまったく縁のない奈良県民ですらイメージでいる程メジャーですよ。
『でも、なんかそんな興奮しないんだよな……』という心の声が聞こえてきたような気がしましたが(笑)、
いやこりゃもう随分立派で興奮間違いなしという感じで拝見しましたよ。
実物の印象とは違うのでしょうかねぇ。
確かにスギ巨樹連の呟きはごもっとも、ですが、それを言い出すと我が県が誇る高井の千本杉なんてもう極悪の所業ですからね(笑)。
一方であの杉の大杉や石徹白の大杉と並ぶ存在に明記してあるのはいかがなものか?と思わなくもないです、正直。
しかし30m離れた大杉が倒れて被害を受けたってスゴく残念なことではありますが、それだけ離れてても被害を受けるって
倒れた奴も相当な巨樹だったと想像できて震えますね。
そして千葉県にもそんな大クスがあったのかと驚きました。
杉推しが優ってしまっているから存在は薄いかもしれませんが、清澄寺は必見の価値ある場所ですね!
狛
RYO-JIさん>
どうやら思ったより全国区のようですね……やるな鴨川市。
関東在住時代、房総ドライブが心地よいこともあって何度も訪ねていますが、何と言いますか、難しい巨樹のひとつですね。
福島県「杉沢の大杉」も同じケースですが、「ほほーう……」以上。になってしまうんですよねえ。
そう、まさに「高井の千本杉」の邪道ぶりはその真逆を行ってて(ほめてます)、驚愕と興奮に全振りしてますね。笑
巨樹の在り方も色々ですが、個人的には今のとこ邪道ファンかも……(プロレスか?)
倒れた隣のスギは見過ごせない存在です。
おそらくは大杉と兄弟に当たる樹齢・大きさだったのだと想像します。
並び立った姿はさぞ圧巻だったでしょうが、互いに影響し合うでしょうし、こうなる運命だったかもしれませんね。
クスは正直、気付かないで帰ってしまう人も多そうです。
こちらは間近で仰ぎ見ることができるので、素直に「大きな樹!」と感嘆できていいですね。