巨樹たち

福井県丹生郡「千足杉」

真夜中、中央分離帯に現れる

 福井県への巨樹探訪旅において、最初に対面した巨樹。
 と言っても、まさか巨樹の方から現れるとは予想だにしていませんでした。

 夜のうちに福井入りしようと考え、茨城から750キロの一気走り。
 越前町の道の駅まであと少しだぞと、24時の暗黒道路を突っ走っていたところ……写真の通り、いきなり現れました。

 水銀灯の光がひずませる闇の中、あッ! と声を上げてブレーキを踏んでしまうのも無理はなく……。
 恐る恐る横を通過しようとすると……幹が増える。
 中央にもいびつな副幹のできそこないがあり、直立しながらも裏杉味がある。
 数秒だけ迷いましたが、覚悟を決め、カメラをつかんで車を降りました。

 ISO感度を12800まで上げているので(でも手ブレしてますが)、明るく写ってるように見えますが、肉眼だともっとかなり暗いのです。 
 ライティングのタチも悪い。杉の肌を不気味な陰影で浮かび上がらせておきながら、最上部は闇に飲まれるままにさせている。
 ファインダーを覗いていると、しーんと静まり返っている山の中で、いきなりバタバタッと何かが音を立て、慌てふためきます。

 峠の中央分離帯という立地は、以前茨城で遭遇した「本山の一本杉」と同じケースですが、やはり特別な意味を勘ぐらずにはいられません(「本山の一本杉」にはオカルティックなウワサがあるらしい……)。

 どうやら「千足杉」というお方らしい。越前町指定天然記念物。
 普段見ている書籍やサイトにも載っていませんが、さすが地元、越前町の観光サイト「えちぜんナビ」に貴重な記述がありました。
 ついでに昼間の姿も見ることができます(読みは濁らず「せんそくすぎ」)。

 「昔、旅人がワラジをここで履き替え残していき、それが多くたまったことで千足杉と呼ばれることになったと言われています。」

 なるほど……それが由来。
 ここまで登坂してくると草鞋がダメになってしまうのか、あるいは、儀式的に新しい草鞋をおろしたものか。
 ……古草鞋を供えて祈ると水虫が治るとか?
 それだと、現在もこの辺は草鞋だらけだったかもしれない。

 真夜中の闇の中、不意打ちのように現れた巨樹。
 この先の巨樹巡りへの期待が格段と高まりました。


「千足杉」
 福井県丹生郡越前町寺 
 道路中央分離帯
 樹齢:不明
 樹種:スギ
 樹高:23メートル
 幹周:4.2メートル

 町指定天然記念物
 訪問:2018.5

探訪メモ:
 駐車場はありません(あるわけない)。
 できれば筆者と同様真夜中に訪問してみてください……
 突然視界に現れますので、事故にだけはご注意くださいね……

「2018年・福井~兵庫巨樹探訪旅」もぜひご覧ください。

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