巨樹たち

福島県田村郡「三春滝桜」

圧巻! 日本一の巨桜

 日本を象徴する桜、そのカリスマ的存在が「日本三大桜」です。
 「山高神代桜」、「根尾谷薄墨桜」、そして「三春滝桜」

 できれば巨樹と1対1で静かに向き合いたいものですが、桜においてはそれが実現しません。
 しかし、思い切って突撃して良かったです。
 いや、「三春滝桜」は死ぬまでに1度は見ておくべき桜だ!
 と、そう言い切れる素晴らしい巨樹でした。

 (編注:2017年、2018年の訪問をメインにお届けします。)

<2017年訪問>

 この「三春滝桜」ならではの苦悩……この桜の凄さの裏返しとも言えるでしょう。

 例えばこの駐車場。
 テーマパークや大型アウトレットモールじゃないですよ。
 これがみんな一本の桜を見に来た車の群れだという事実、信じられますか。
 当然、駐車場に入るまで渋滞し、30分以上のろのろ牛歩してきました。

 保護管理資金として観覧料300円を支払い、チケットをもらう。
 向かう道中にゲートがあり、大勢のスタッフさんが。おそるべし。

 その先にも、屋台村はできているわ、無数の仮設トイレが用意されてるわで、完全にお祭り状態。
 「格が違う」というにも違いすぎる。
 一体どんなすごい桜なんだろうと、期待はどんどん膨らみ……そして……

 目の前に実物が現れた瞬間、思わず声をあげてしまいました。
 たしかにこれは物凄い! これが1本の桜の樹とは。感嘆しかありません。

 この圧倒的すぎるスケール感!
 単に巨樹として十分巨大でありつつ(地上1.3メートルでの幹周9.5メートル)、よりによって壮麗な枝垂れ桜であるという……。
 そしてその巨樹が、春を祝うかのように今目の前で満開に咲き誇っている。
 こんな巨樹が実在するんだ……と、しばし呆然としてしまう眺めです。

 傍にある階段を登っていけば、上方からも桜を眺めることができます。
 どこから見ても隙がない。あらゆる方向に枝を張り巡らせ、まさしく滝のように花を咲かせています。

 周囲の遊歩道を歩くと、花に手が届きそう。
 目の前や頭上がほぼ桜の洪水で埋め尽くされる。
 溺れそうなくらいの密度で、桜がのしかかってくる……圧倒。

 幕藩時代には藩主の大のお気に入りの御用木であり、この桜の枝の下は年貢は免除、毎日早馬を走らせて開花状況を調べさせ、満開時には自ら一行を率いてお花見に赴いたとか。
 実はこれでも05年の大雪で枝が十数本折れてしまう被害に遭ったのだそうですが、樹勢に衰えは見えません。
 地域の愛の賜物でしょうか。

<2018年訪問>

 2018年は、桜前線の通過スピードがかなり早く、前年より2週間程度前倒しになりました。
 滝桜渋滞は前年より長く、大駐車場もほぼ一杯。
 しかし、しばらく待てば満喫できると知っているので、のんびり並びました。

 撮影にまったく工夫は要りません。どこからでも絵になる。
 実際、この1本を見ただけで大満足してしまう。
 三春まで来て滝桜を訪ねないのはおかしいけれど、このままでは永遠に他の名付きの桜を回れなくなってしまう!(苦笑)

 晴天でしたが、三春町の気温は8℃。
 「梅・桃・桜が同時に咲く」から「三春」だという通り、春の到来を感じた花々が一気に咲き誇り、喜びを全開にしているかのようでした。

 三春への北上は、まるで季節が巻き戻るかのよう。
 関東への復路は、再び青葉の季節へどんどん進んでいきました。

<2019年訪問>

 休み不自由ゆえ、2019年はちょっと残念なタイミングで三春を訪ねることに。
 読みを効かせ、寸前まで開花予想を見て……ところが、想定外の降雪! 

 いつもなら大渋滞のチマタと化す道も、半分くらい。
 1……多めに見ても2分咲きくらいしょうか。残念!
 それでも、陽当たりのおかげか、他の大桜たちより幾分早いようでした。

 当日はすごく天気が良く、気温も20℃近くまで上昇、ここから急速に春が進行する気配。
 じっと見てたら目の前で次々桜が咲くんじゃないかと、無理な期待をしたくなる。
 炸裂寸前の花火大会(花火じゃなくて花火大会)を見ているかのようで、すごくそわそわしました。

 解説文。
 エドヒガンの中のベニシダレという品種で、国の天然記念物に指定された桜第一号とのこと。
 「滝桜の娘」こと「紅枝垂地蔵桜」をはじめ、後年の調査により滝桜周辺半径10キロ以内に400本以上の子孫樹が確認されている。
 オフィシャルで苗を販売する農家もあり、世界中に子孫が伝播しています。
 それどころか、08年には種子が人工衛星に乗って宇宙にも行ったそうです(宇宙桜)。

 個人的に、これを上回る壮大な桜というものが想像できません。
 「日本一の桜」と呼んでも何ら問題は生じないはず。
 「日本一の桜」であるなら、すなわち「世界一の桜」とは言えないか……そして、それなら「宇宙一の桜」なのではないか?
 そこまで飛躍しても何ら不思議はない。改めて、とてつもない桜です。

 ……2020年。
 春のお花見で拡大した新型コロナウィルス感染により、三春滝桜周辺も入場を規制されたようです。
 自分も自粛しました。
 人混みナシで見られたらラッキー! とは、とても言えない状況。

 この天下一の桜を不安なく楽しめる春が来ることを、心から願っています。

「三春滝桜」
福島県田村郡三春町大字滝字桜久保
推定樹齢:1000年
樹種:エドヒガン
樹高:19メートル
幹周:9.5メートル

国指定天然記念物
「新日本名木100選」
日本さくら名所100選

訪問:2017.4.23、2018.4.8、2019.4.14

 探訪メモ:
 満開時は長大な渋滞を避けられません。高速道路上に警戒看板が出るほど。
 気長に進みましょう。
 トイレ事情は特に用心しつつ、車内ランチのつもりで。

これはひみつの情報ですが……「滝桜ライブカメラ」を参照すれば、満開時を逃すことはありません。
事前にじりじりとチェックしましょう。

一緒に回るには無理がある! とも言えますが、三春町界隈には見逃せない名桜がたくさんあります。
ぜひチェックを。

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