巨樹たち

群馬県高崎市「榛名神社の矢立杉」

信玄が戦勝祈願した杉

 草津温泉で一泊してから、早朝6時、群馬県高崎市の榛名神社に参詣しました。
(※優雅な観光旅行のように書いていますが、車中泊です。確かに温泉は入りました。草津の酸性の湯で美肌に……)

 格式高い神社で、参道は非常に長く、本殿近くに立つ巨樹「矢立杉」の姿が現れるまで1キロ以上も歩かねばなりません。
 もっとも、その途中にも豊かな自然風景、渓谷と巨岩、いくつものお社があって、目に楽しい道です。

 「矢立杉」は、本殿手前の石段の横に立っています。
 天を衝くようにとはまさにこのこと。二本一対の幹は定規で引いたように真っすぐです。

 「矢立」の神事とは、主に戦勝祈願のために矢を射ることのようです。
 戦いに臨んだ武田信玄がこの杉に向かって矢立を行った故事からこの名があるとのこと。
 その当時すでに他を圧倒する巨樹だったと思われ、樹齢は500年程度とされているようですが、信玄のエピソードと絡めてリアリティある数字だと感じました。
 国指定天然記念物指定であり、群馬県の巨樹を巡る上でのランドマークとなるのは間違いありません。

 仰ぎ見る頭上で二叉に分岐している……
 というより、夫婦杉型の合体杉ではなかろうかと思います。
 正確な数値はわかりませんが、樹高は55メートルとされ、杉巨樹の中でもかなりの高身長です。
 神社への石段を登りつつ、見下ろし、見上げる、感嘆する。
 この一連の動作によって、いっそう高さが実感されます。

 ただ、樹皮の様子を見ると、かさかさと荒れ、剥けたようになっており、万全に健康というわけでもなさそうです。草津のお湯で癒してあげたい……。
 実際、1982年には台風の被害にあったそうで、大枝が折れるなどして樹勢が心配されていたようです。
 現在もはるか上空に枝がありますが、樹冠自体はそれほど大きくないように感じました。

 「矢立杉」を見た後、驚くべき巨岩のゲートをくぐり、榛名神社の黒を基調としたどっしりとしたかっこいい本殿に参詣しました。
 その周囲に屹立する杉たちもまたかなり大きく、目を惹きます。 
 野性味のあるうねった枝、もくもくとした葉の茂りも濃く、矢立杉の子孫かもしれないな、と直感するのでした。

「榛名神社の矢立杉」
 群馬県高崎市榛名山町849
 榛名神社
 推定樹齢:500年
 樹種:スギ
 樹高:55メートル
 幹周:9.4メートル

 国指定天然記念物
 訪問:2017.6

探訪メモ:
 全国に知られる神社なので、間違うはずもなし……
 と思いきや、榛名神社は大小数多く存在しており、違う神社にカーナビをセットしてしまう凡ミス。
 榛名湖を視野に入れれば間違いませんし、観光にも最適です。

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