巨樹たち

群馬県吾妻郡「神代杉(親子杉)」

大杉の着ぐるみを着た杉

 榛名神社へ行った足で、偶然たどり着いた巨樹。
 というか、「巨樹遺構」です。

 道沿い、鳥居のすぐ横に写真のような巨大な幹が見え、思わずブレーキを踏みました(急ブレーキはあぶない)。
 このインパクトはかなりのもの……いや、その点だけで語るなら、当然大きいことがわかっている「榛名神社の矢立杉」よりも目を奪われました。

 しかし、何かがおかしい……。
 いえ、写真でごらんの方は、どういうことかすぐにおわかりですね。
 この杉はとうの昔に枯れてしまっており……よく崩壊したケヤキの巨樹にされているような小屋根がかけられている……
 だけでなく、それを貫通して、もっと若い別の杉が生えています。

 状況が混み合っていますが、つまりはサブタイトルの通り、今生きている杉は、かつてあったご神木の「着ぐるみ」を着ているというような状態。
 にしては、頭が(傘屋根からも)出てしまっているところがまたコミカルな眺め。

 どうしてもこの驚くべき状況に目が行ってしまいますが、外側のみ残っている「神代杉」は日本武尊(ヤマトタケルノミコト)のお手植え伝説の残るご神木だったそう。
 根付いていた頃樹齢すでに1400年、幹周囲9.75メートルの巨杉だったと言いますから、外見のスケールで言えば、奇しくも(再び)「榛名神社の矢立杉」と同じくらいの規模だったことになります。

 神代杉には大きな虚(うろ)があったようで、1742年、中に入ったうっかり旅人が火をたいて失火してしまう(何をやってるんだ!)。
 さらに1783年には、浅間山が噴火して熱泥流に飲まれる。
 全く災難続きです。この緊急時に住職(龍徳寺は今はなき寺か?)の活躍で、現在の高さでズバッと伐られた……なんだか鬼滅の刃とかみたいな由縁……。

 

 実は解説板はもうひとつあって、これもまた思わず二度見する内容。
 「平成七年に国道拡張工事で現在の位置に移動」、「枯れ幹の中の杉の年輪は216本あった」とのこと。
 切り倒さない限り年輪は数えられないでしょうから、二代目杉も切られ、現在の杉は三代目だと思われます。
 三代目は、平成七年に植えられた杉にしては大きいので、初代(のガワ)はこの際アタッチメント式に改造されたということなのでしょう。

 巨樹の驚異がいかに人の視線を集めるかを実証する興味深い存在だと思いました。
 なお、神社の境内には、現役のご神木の役割を担う別の杉もあるので、探してみるのも一興です。

「神代杉(親子杉)」
 群馬県吾妻郡東吾妻町矢倉
 矢倉鳥頭神社
 推定樹齢:1400年(当時)
 樹種:スギ
 樹高:不明
 幹周:9.75メートル

 訪問:2017.6

探訪メモ:
 道沿いにあり、訪ねるのに難は全くありません。この容姿が突然現れるので、運転中に目を奪われないように注意!
 西へ向かうと、有名な「八ッ場ダム」もあります。

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