巨樹たち 東京都新宿区「新宿御苑のユリノキ」 / 4 コメント 新宿御苑のシンボルツリー 東京在住時には頻繁に訪ねた新宿御苑。 大きな樹がある。それはもちろん記憶に残っていましたが、例えばプラタナスの巨樹を憶えていたかというと、自信はありません。 あの頃の自分の目は一体どこについてたんだろう……とうすら寒くなりますが。 しかし、そんな当時から、はっきり記憶していた新宿御苑の巨樹があります。それがこの「ユリノキ」。 御苑のホームページによれば、この広大な広場は「風景式庭園」と呼ぶらしく、 「ゆったりと広がる芝生と、自然のままにのびのび育った巨樹が特徴の庭園です。新宿門から整形式庭園へまっすぐのびた、見通し線(ビスタライン)の中央には、御苑のシンボルツリー・高さ30mをこえるユリノキが高くそびえています。」 ……と、こうあります。 というわけで、わざわざ探す必要もありません。 とにかくまっすぐ歩けば、ひときわ高いその姿が目に入ってきます。 しかし、この時すでに16時を過ぎ、閉園のアナウンスが鳴り始めるではありませんか。急がねば! (編注:当時、改修工事のため時短運営されてました。御苑の開園時間は時期によって変わるようです。月曜日は定休。) 庭園は広大。到着するまでに息が切れました。 当時無かった「巨樹を見る目」を通し、立派な幹3本を改めて鑑賞する。 隠さず言うと、樹の前、足下のプレートを読むまで、「ユリノキ」という樹種だと知りませんでした。 「あの樹、あの樹だよ、ほらあそこに見える……!」 訪ねるだけなら、まずそれだけで十分だったとも言えます。 ユリノキ。北アメリカ中部原産のモクレン科の高木。ユリノキ属は2種のみ。 葉は「Tシャツのような形」、黄葉もする。 東京国立博物館本館前庭にもユリノキの巨木があるそうで、 「明治8、9年頃渡来した30粒の種から育った一本の苗木から明治14年に現在地に植えられたといわれ、以来博物館の歴史を見守り続けている。東京国立博物館は「ユリノキの博物館」「ユリノキの館」などといわれる。(Wikipediaより)」 樹齢から考えて、この御苑のユリノキも、この種子の中のひとつだったのではないでしょうか。 逞しくも、どこか優美なシルエットが印象に残ります。 北海道で見たヤチダモにも似て……いや、どこかカツラ的な柔軟さも……と、未見の樹種の特徴を味わうのは楽しい。 初夏に花を咲かせることがモクレン科の最大の特徴でしょう。 モクレン、コブシ、ホオノキ……どれもが、巨樹化しつつも盛大な花をつける。見所の多い、好きな樹種です。 ユリノキも例外ではなく、チューリップツリーという英名通り、チューリップ型の花を咲かせ、蜂蜜もたくさんとれる。 写真のこれは、花の後でできた果実および種子。ここからバラバラと平たい種子が撒き散らされます。 拾ってきて育てたら……ものすごい巨樹が生えてしまうかも。 解説板がわりのパネル。推定樹齢120年とありますね。 別プレートに、「巨樹・巨樹林調査」のナンバリングもあり、「御苑の巨樹ラリー4番」、これを辿るのも面白そう。 全国屈指のプラタナス巨樹「新宿御苑のプラタナス」もあります。 急ぎ足での訪問になってしまいましたが、遠近、どちらで見ても大変絵になる美しい巨樹です。 広葉落葉樹はやはり葉がいっぱいの時に見たいものですが、秋冬のボーンだけの姿で樹形を把握しておくのも意味がある。 大都会のオアシス・御苑のシンボルツリーにはぴったりな存在だと思いました。 「新宿御苑のユリノキ」東京都新宿区内藤町11推定樹齢:120年樹種:ユリノキ樹高:35メートル目通り幹周:4.9メートル訪問:2020.2 探訪メモ: 入り口から離れてはいますが、まっすぐ進んでいくだけで、「風景式庭園」に到達し、見間違いようがない姿が中央に見えてきます。 新宿御苑ホームページには、この樹が頻繁に登場します。開花時期を知らせる更新も。ぜひ開いてみてください。 関連
to-fu 2020年3月13日 at 9:02 PM 返信 流石にこの木は覚えてますよ!もちろんユリノキだったなんて知りませんでしたけど… 改めて見ると本当に美しい樹形ですね。こんなにフォトジェニックな木だった?と驚きました。 まあ、それだけ樹木に対して意識が向いてなかったんでしょう。 きっとただデカい木だな、くらいの認識しか無かったのだと思います。 いつものようにワイルドな巨樹探訪もいいですが、広大な庭園をのんびり散歩しながら 目についた大きめの樹木を拾っていくような撮り方も楽しいですよね。 特にこれから散歩には最高の季節になりますので、どこへ行こうかと今から楽しみです。
狛 2020年3月14日 at 12:14 PM 返信 to-fuさん> この樹があると無いとでは景観の価値が大違いですよね。 数年巨樹を見てきましたが、欧米系?の樹種に遭遇することは少なく、なおさら新鮮な目線で見ることができました。 目黒区にも5m弱くらいの個体があるようですし、御苑のこの樹ほどのインパクトは難しい(この周囲環境はずるい笑)としても、注目して見てみたいと思いました。 この樹だけで終わってしまうともったいない。 そうですね、冒険からくる興奮はゼロですが、ちょっとアカデミックな?アーティスティックな?気分で巨樹を見ることができるのも良いですね。 かなり歩かされるので、都会の巨樹巡りにもよく出来たカメラバッグは必要かもしれません。笑
RYO-JI 2020年3月13日 at 9:20 PM 返信 巨樹に興味がない頃にも関わらず、見ていて記憶に残っている・・・。 そういうのは幹周などのサイズとかではなく、その「姿」が印象的だったので覚えているのでしょうね。 実際この立ち姿を拝見していると、美しいなぁと思います。 広大な場所にこれだけ樹高ある大きな樹があると、誰もが目に止めるでしょう。 森の奥でひっそりと朽ち果てそうになっている巨樹からすれば、随分と幸せな樹ですね。 ユリノキという名称は知っていましたが、その存在はあまり意識したことなかったです。 いかにも日本原産っぽい名前ですが、違うんですね(汗)。 勉強になります。
狛 2020年3月14日 at 12:22 PM 返信 RYO-JIさん> 当時は巨樹に対してほんとに盲目で、えっ、こんな樹の横を素通り!? という恐るべき事態が頻発していたわけですが、この樹はただ被写体としてだけでも記憶に残るのに十分でした。 3本1組ですが、枝張りで言えば周囲20メートル以上はあるでしょうし、夏に見たらどんな印象を受けるか、想像すると楽しみになります。 ユリノキをDBで調べると、意外や意外、青森などでも育っていたりして、都市型でありつつ気候耐性もありそうです。 我々が四国の山奥の集落で見た巨樹などとは全く真逆にいる巨樹。 観光地化しているというレベル以上の立地です。当たり前ですが、この樹はこれからもずっとこうして生きていくのでしょう。 ……そう考えると、これだけ見事に絵になる立地で落雷がないことは幸運です。 夏の東京と言えば雷と夕立……という印象もあるんですが、やっぱりビルの方に引き寄せられてるんですかね。笑 東京へ行く機会は減ってしまいましたが、また東京の巨樹巡り、してみたいです。
4件のコメント
to-fu
流石にこの木は覚えてますよ!もちろんユリノキだったなんて知りませんでしたけど…
改めて見ると本当に美しい樹形ですね。こんなにフォトジェニックな木だった?と驚きました。
まあ、それだけ樹木に対して意識が向いてなかったんでしょう。
きっとただデカい木だな、くらいの認識しか無かったのだと思います。
いつものようにワイルドな巨樹探訪もいいですが、広大な庭園をのんびり散歩しながら
目についた大きめの樹木を拾っていくような撮り方も楽しいですよね。
特にこれから散歩には最高の季節になりますので、どこへ行こうかと今から楽しみです。
狛
to-fuさん>
この樹があると無いとでは景観の価値が大違いですよね。
数年巨樹を見てきましたが、欧米系?の樹種に遭遇することは少なく、なおさら新鮮な目線で見ることができました。
目黒区にも5m弱くらいの個体があるようですし、御苑のこの樹ほどのインパクトは難しい(この周囲環境はずるい笑)としても、注目して見てみたいと思いました。
この樹だけで終わってしまうともったいない。
そうですね、冒険からくる興奮はゼロですが、ちょっとアカデミックな?アーティスティックな?気分で巨樹を見ることができるのも良いですね。
かなり歩かされるので、都会の巨樹巡りにもよく出来たカメラバッグは必要かもしれません。笑
RYO-JI
巨樹に興味がない頃にも関わらず、見ていて記憶に残っている・・・。
そういうのは幹周などのサイズとかではなく、その「姿」が印象的だったので覚えているのでしょうね。
実際この立ち姿を拝見していると、美しいなぁと思います。
広大な場所にこれだけ樹高ある大きな樹があると、誰もが目に止めるでしょう。
森の奥でひっそりと朽ち果てそうになっている巨樹からすれば、随分と幸せな樹ですね。
ユリノキという名称は知っていましたが、その存在はあまり意識したことなかったです。
いかにも日本原産っぽい名前ですが、違うんですね(汗)。
勉強になります。
狛
RYO-JIさん>
当時は巨樹に対してほんとに盲目で、えっ、こんな樹の横を素通り!? という恐るべき事態が頻発していたわけですが、この樹はただ被写体としてだけでも記憶に残るのに十分でした。
3本1組ですが、枝張りで言えば周囲20メートル以上はあるでしょうし、夏に見たらどんな印象を受けるか、想像すると楽しみになります。
ユリノキをDBで調べると、意外や意外、青森などでも育っていたりして、都市型でありつつ気候耐性もありそうです。
我々が四国の山奥の集落で見た巨樹などとは全く真逆にいる巨樹。
観光地化しているというレベル以上の立地です。当たり前ですが、この樹はこれからもずっとこうして生きていくのでしょう。
……そう考えると、これだけ見事に絵になる立地で落雷がないことは幸運です。
夏の東京と言えば雷と夕立……という印象もあるんですが、やっぱりビルの方に引き寄せられてるんですかね。笑
東京へ行く機会は減ってしまいましたが、また東京の巨樹巡り、してみたいです。