巨樹たち

東京都新宿区「新宿御苑のプラタナス」

日本最大のプラタナス(推定)

 東京での徒歩による巨樹探訪。いよいよ日が傾いてきました。
 17時に渋谷で人と会う約束なので、時間的にもここが最後のポイントになります。

 樹木景色がとても楽しい新宿御苑で出会った、プラタナスの巨樹を紹介したいと思います。

 新宿御苑。
 とても久しぶりに来ましたが、まず入園料が500円もして、昔からこうだったか? と一歩足が止まりそうになりました。情けない話です。
 そうそう、最後に来た時には大温室が工事中で、だから割高な印象を受けたのかも知れません。
 僕はそのまま東京から去ることになったわけですが……

 今回の来園でもまた(時間ゆえに)温室を楽しむことはできなかったのですが、昔には無かった「樹木を楽しむ目」が多少あります。
 すると……正門(新宿門)をくぐってすぐ、500円なら安い! と言ったとか。

 樹木を主役に据えた風景が美しい。
 樹が大きい。様々な樹種があって勉強になるし、写真の腕を磨くにもとても良い場所ですね。

 思い入れのあまり前置きが長くなりました。
 プラタナスの巨樹は、門から入って右手へ進むとすぐに見えてきます。

 大きい。
 巨樹特有の、風景から浮き上がって見えるかのような気配。
 あの樹だ……とすぐにわかりました。
 プラタナス特有の、まだらに樹皮が剥げる模様も目を引きます。

 落葉樹なので、冬は完全にスケルトン状態です。
 代わりに、足下にはふかふかになるほど大きな葉が積もっている。
 そして、プラタナスと言えば、印象に残るのはあの特徴的な実です。
 鈴のように見えるので、和名は「スズカケノキ」と言うのだそうです。
 スズカケノキの花言葉は……「天才」。アテネの哲学者が樹下で説いたからだそうです。ざっくり。

 

 足下にあるのは裂け、綿みたいな中身が出ています。
 実の中には綿毛の束がついた種子がぎっしり詰まっている……というか、たんぽぽの綿毛を高密度にしたようなモノが、あの鈴の正体なのですね。
 踏んだりすると簡単にほぐれて、綿毛が舞い、プラタナスの種を遠く広く運んでいきます。

 新宿御苑の中でも、とりわけ大きい樹のうちの一本と言えるでしょう。
 そう意識すると、この御苑には無数の立派な樹があり、一本一本をじっくり見たくなってきます。

 安定感のある幹は、足下のプレート(下記)によれば、幹周囲630cm
 幹自体の高さは10mもないと思いますが、想像以上に枝張りが良く、これはまたもう一度、葉を満載にした姿を見てみたいものだと思わせてくれます。

 刻々と夕方の陽が回ってきて、サイド光が巨樹を立体的に浮かび上がらせます。
 どっしりと動じず、これだけ長大な枝をたくさん伸ばしても動じない。いい樹だな……と思わず呟きが漏れます。

 街路樹になるのは、やはり環境適応性が高いからでしょう。
 世界四大街路樹は、プラタナス、ニレ、ボダイジュ、マロニエ、だそうです。
 このうち、日本だとニレはケヤキ、マロニエはトチとなりますね。

 プラタナスの足下に据えられたプレートは英語。
 planes、plane treesがプラタナスの英名。和名はスズカケノキです。

 樹齢は120年以上とのこと。
 新宿御苑の歴史をホームページで調べると……

「……明治39年(1906)に皇室庭園として誕生しました。
国際外交拠点のパレスガーデンとして発展し、昭和24年(1949)に国民公園として一般に公開されました。」

  とのことなので、庭園としてオープンする以前から植えられていたことになりそうです。

 庭園以前は国営の農業試験場だったとの記述も。
 スズカケノキが日本に入ってきたのは明治時代だそうなので、試験のために最初期に植えられたものの可能性もありそうです。東京の歴史そのものですね。

 このプレート、巨樹巡りのラリーにもなっているようで、時間がある時にぜひ回ってフルコンプしてみたいところです。

 ずっと奥へ進んでいくと、有名な、絵になるプラタナス並木。
 プラタナスの巨樹とも親戚関係にあるものかもしれません。

 御苑内には他にも4m、5mクラスのプラタナスがちらほら。
 右の個体は傷みが激しいようで養生中です。がんばれ。

 環境省「巨樹・巨木林データベース」でプラタナスを検索すると、大きい順で並べ替えた時の最上位が新宿御苑の個体となります。

 ちなみに、データベースで最大の個体の幹周は520cmとなっている。
 どちらが正しいのか……これも、次回来たら実測しないと収まりが悪いですね。
 ともあれ、環境省に登録されているものの中では、日本最大の幹周囲を誇るプラタナスということになると思われます。

 こんな大都市のど真ん中で、樹種ナンバーワンと出会えるなんて。
 東京見物の傍ら、今度は葉がある時期に会ってみたいものですね。

「新宿御苑のプラタナス」
東京都新宿区内藤町11
推定樹齢:120年
樹種:プラタナス
樹高:26メートル
目通り幹周:6.3メートル
(環境省DB値5.2m?)

訪問:2020.2

 探訪メモ:
 電車で行きましょう。
 プラタナスへは、新宿門を通ってすぐ右へ。1、2分歩くと見えてきます。
 新宿御苑はどの季節でも伸び伸びと過ごせます。
 見所も多いですし、ゆっくり散策したいですね。

 雑談:

 全く無学なもので、プラタナスという樹種については、なぜかポプラと混同して記憶していました。
 生まれ育った街に樹皮に特徴がある並木があって、あの葉、実、そして特有の匂い(個人的には良い匂いとは思えない)……このプラタナスに間違いないのですが、地元では「ポプラ並木」と呼んでいた。
 調べてみるとプラタナスはスズカケノキ科、ポプラはヤナギ科なので全然違う樹なのですが、どうも綿毛のような種子を持つところが共通点のようです。

4件のコメント

  • to-fu

    新宿御苑…記憶では150円とか本当に気持ち程度の入園料だったような気がしますが。
    せこいかもしれませんが500円になると昔のようにちょっと時間潰しに、とはいきませんね。
    あれだけの広さを考えると決して高くはないんですけど、うーん。

    いやー、それにしてもこんな素晴らしい木が生えていたんですね。
    並木道は記憶にありますが、街路樹として植えられているプラタナスくらいしか見たことがありませんから
    この巨大さには驚きです。こんなに大きくなる樹種なんですねえ。仰るようにこれはぜひとも葉を茂らせた
    ときの姿を見てみたいものです。巨樹ラリーを楽しめることも考えたら500円も何とか捻出できます 笑

  • to-fuさん>
    そうなんですよ、確か200円代とか……そんな感覚だったんです。え、500円?! と不意を突かれました。笑
    東京時代は買い物して残った時間は御苑で……など、気軽に寄っていたと思うんですけどね。
    それでも、いざ入ってみると、夕方に訪ねたのが惜しいほど良い時間が過ごせました。

    我々の人生は10年ひと昔ですが、巨樹はその時もほぼ変わらない姿であったはずですよね。
    本当に、ここまで印象に残っていないなんて。
    御苑の管理の元に生きてきたプラタナスですから、生い立ちは確かでしょうし、とかく雑に扱われてしまう街路樹種としては貴重な個体だと思いました。
    神社仏閣に植えられる樹種でもないですしね。
    今度はいい季節のいい時間に行って、順路を回ってみたいです。
    このために1日使うことになってしまいそうですね。

  • RYO-JI

    新宿御苑という名称は知っていましたが、大都会の真ん中にこんな緑があるのはいいですね。
    同じ都会でも大阪は緑が少ないですから。

    プラタナスという樹種はまったくのノーマークでした。
    西日本にはほぼ皆無なんですねぇ。
    巨樹界において120年はまだまだ幼いといえるレベルでしょうが、充分巨樹と言える風格を纏っているように見えます。
    枯れている状態でそうですから、新緑の時期などの雄姿を是非とも見てみたいと思いました。
    入園料は高いっちゃあ高いですが(汗)、他にも楽しみがありそうなので時間に余裕があれば価値はありますね。

    世界四大街路樹、面白いですね。
    日本だったらイチョウは確実にランクインしそう(イメージです)。

  • RYO-JIさん>
    新宿御苑、入園料高い……とまずインプットしてしまってスミマセン!
    内容はすごく良いので、東京に来られた際にはぜひお立ち寄りください(できれば時間に余裕を持って)。
    オススメしておきます。

    プラタナスはありふれた樹種と言えますが、巨樹として注目度は高くないですよね。
    120年でこれほどですから素質は十分あると思いますが、巨樹となるまで育てようという意思の働きようがないのかもしれません。
    そういう意味では、農業実験として日本に持ち込まれた個体であろうと思われるこの御苑の樹は、日本におけるプラタナスの代表格と言っていいと思われます。
    世界レベルではどのくらいまで生きるのでしょうね。後々、他の季節にも見てみたい樹です。

    さすがRYO-JIさん。
    イチョウは日本の街路樹としては最多の樹種だそうですよ!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です