巨樹たち

宮城県柴田郡川崎町「桜地蔵」

地蔵堂を貫く古桜

 この樹に最初に出会ったのは、まだ雪のチラつく3月末。
 少ない情報からとある巨樹を求めて走ってきて、しかし、吹雪になってきてしまい、ついに諦めるしかなかった。
 辛うじてキャラの立ったサブ・ターゲットを撮影することができたけど、そんな日も初めてじゃないさ……とかなんとか、ごまかして走っている時、突如としてこの巨樹が目の前に!

 ……これだけだと、何に興奮しているのか、さっぱり共感できないと思いますが。

 どうでしょうか、この眺め。
 物質転送機の出現座標指定を間違って「あっ、やべえ!」って、ぶっ刺してしまったような……
 一気に正気度を持って行かれ、うわあっ! と急ブレーキを踏みました(危ないので注意しましょう)。
 刺さっている。空海サンがお箸をぶっ刺したのとはまた違った意味で、桜の巨樹が刺さっている……。

 この日の本命は見つからなかったけれど……いや! この桜を最初から知っていたら、間違いなくこちらをメインをメインにしていましたよ。

 宮城の三月では、まだまだ桜の開花には至りません。
 そわそわしながら四月を迎え、見当をつけて再訪しています。

 この年は福島の「三春滝桜」も拝みに行ったものの、勇み足の二分咲き程度。この桜地蔵は五分弱というところでしょうか。
 徹底的に休みが合わなかったんです。思い通りに運ばないのが桜……。
 まだ咲ききっていない状況なので余計にそう見えるのかもしれませんが、紅色を濃く感じる花色です。
 解説によれば、「アズマヒガン」という聞き慣れない古い品種とのこと。

 巨樹という側面から見てみましょう。
 幹はかなり根本から二又に分岐しており、片方は建物の中に消えています。接近して撮ると、両方をフレームに収めるのは困難。

 解説板のデータでは幹周3.2メートルと記載されていますが、おそらく太い方の幹を測った数値でしょう。
 試みに検索してみると、二本を合算したのか、7メートル以上の数値で記述されているものもありましたが、さすがに異論を呼びそう。
 全貌が見えないので、建物、つまり地蔵堂の方に向かってみましょう。

 一本で二度おいしい巨樹。
 うーん、なんなんだ、この眺めは。笑
 外見がああなので当然と言えば当然なのですが……度が過ぎた当然だ、これは。
 お地蔵さんもなかなか大きいのですが、この幹姿、桜の巨樹として十分立派なサイズ。
 何より、この特殊な状況で生きているにも関わらず、明らかに健康状態が良い。

 お地蔵さんと桜が同列の信仰対象になっている。
 地獄から衆生の魂を救済する地蔵菩薩と、咲いて散ることで生死を暗喩する桜。
 その両者に引き合う力を感じるというのは考え過ぎでしょうか。

 ちょっとした集会くらいは開けそうな広い地蔵堂自体も、手入れが行き届いていて、地域の方々に大切にされていることが伺えました。
 すぐ外に、その名も「桜地蔵」バス停があり、雪の日や夏の暑い日には、ここでバスを待つのかもしれません。
 地域のシンボルとしての巨樹に出会う度、暖かい気持ちになれます。
 ウチにはこんなすごい樹がある! と、きっと語られていることでしょう。

 解説板。
 アズマヒガンという聞きなれない種類について、「日本で最も長命な原種」とある。     
 建立時期と桜との関係もはっきりとしている様子。大桜の元にお堂が建てられ、桜の成長に合わせて建て直すことになったのでしょう。
 当初はこんな風に貫通スタイルではなかったのかもしれませんね。

 ちなみに、ここでは「地蔵桜」ですが、他とかぶるので、バス停にちなんで「桜地蔵」と記載させて頂きました。

 もう一度書きますが、この桜のことは全くのノーマークだっただけに、センセーショナルな出会いでした。
 巨樹巡りの旅先では時々似たようなことが起きるのですが……もしかしたら巨樹が呼んでくれたのかも?
 ……なんて思うのは、やっぱりわざとらしいでしょうか。笑

「桜地蔵」
 宮城県柴田郡川崎町前川堀切
 宮城交通「桜地蔵」バス停
 樹齢:380年
 樹種:アズマヒガン
 樹高:20メートル
 幹周:3.2メートル

 町指定天然記念物

 訪問:2019.3.30、4.14

探訪メモ:
 路肩含め、辛うじて1台停められる程度の余裕は見つけられます。
 が、バス停0分ですので、もちろんバスで訪ねるのもオススメです。
 なお、河北新報の報道によると、2018年には、4/12に満開となったという記事を見つけました。

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