巨樹たち

茨城県桜川市「雨引観音の宿椎」

坂東三十三霊場のスダジイ

 茨城県桜川市の「雨引観音」
 古刹であり、花の名所でもあるらしく、山の上にあるのに、駐車場にはたくさんの車が停まっていました。
 途中の道は、その先にそんな大きなお寺があるとは思えないような細道。視界が開けてびっくりしました。

 巨樹のお目当ては幹周囲7メートルを超えるスダジイ。
 「宿椎(やどしい)」という樹です。

 「板東33観音霊場第24番札所・雨引山楽法寺」というのがお寺の正式名で、この霊場巡りをする方達は必ず寄る。
 しかし、お遍路さんのような方は見当たりません。
 目立つのは若い夫婦、しかも赤ちゃん連れ。
 雨引観音のHPによれば、推古天皇(女性天皇)も安産祈念したという、子宝・安産・子育ての名刹なのですね。

 目標の宿椎も、この時点ですでに見えていますね。
 秋でも落葉せずにこんもりと茂っているので、すぐにわかりました。

 さらに近づくと、その規模の大きさがわかります。
 樹冠としては多少周囲の別のスダジイと被っているところがありますが、これは期待できそうです。
 突き出している幹もかなりの太さに見えます。

 石垣手前まで来ると、身を乗り出すように生育するその幹を仰ぎ見ることができます。
 なるほど、これは確実に7メートルか、それ以上あるように見える。
 巨大なスダジイ特有の塊感。

 本堂に登る石段の途中、踊り場のようなところ、狭いスペースに目一杯という感じで生育しています。

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 真下から見上げるとすごい迫力。
 うねる主幹は極太。極めてゴツゴツ。
 覆いかぶさってくるかのように……いや、実際、長く伸びた枝々が下の順路の頭上を覆っています。
 しかし、抱っこした赤ちゃんを気にしている多くの人が、シイには気づきもせず通過していく……。

 手水があって、石段をまたちょっと登ると、正面に「宿椎」が来ます。
 大きい。基準高さで幹周7メートル。しかしその上部ははるかに太い
 コブ状に盛り上がって、すごいボリュームです。

 その大きさ、捉えにくい形状を何とかカメラに収めようと試みます。
 繰り返し撮っていると、石段を登ってきた方々もようやく気づき始め、「でかい樹だ!」とか言って写真に撮り始めます。
 そうそう、それでいい……などと思いつつ、スダジイを撮った写真を後で見て楽しめる人ってどれだけいるでしょうか。笑

 台風によるものか、大枝が欠損しているところがありますが、樹勢はかなり良さそうです。
 競争相手がいない立地で、空中に長大な枝をさしのばして、存分に日光を浴びています。 

 茶屋の脇(狭い)をすり抜けると、満足ではありませんが、上から宿椎を見ることもできました。
 7メートルは、むしろ一番細いところを測ったのでは? と思うような体躯。
 この辺りの造形がやたらに力強く、躍動感があります。

 

 主幹に大きな不朽などはなく、概ね健全と言えると思います。着生植物もない。

 別段霊樹などと崇められている樹ではないようです。
 大和村指定天然記念物とのことですが、その村も桜川市に合併されて消え、指定がどうなっているのかよくわかりません。

 お寺が有名な一方で注目されていない樹かもしれませんが、迫力あり、安心して見られる良いスダジイの巨樹だと感じました。
 周囲の木々や庭の一部という感じでちゃんと手を入れてくださっているのだと思います。

 そして、気になる「宿椎」の名の由来ですが。
 「応永三年(1396)の火災の折、本尊みずからこの木に難を逃れたという」……というようなエピソードを拾うことができます。それゆえに「宿椎」という。
 ストレートに「その当時にはこの樹が存在していた」と取れば、樹齢は少なくとも600年〜700年と推定できそうです。
「本尊みずからこの椎の梢に隠れた」「本尊が飛んで逃げ込んだ」……と、ドラマチックな記述もありますが、物理的に「火災の中、本尊を運び出してとりあえずここまで避難させた」ということなのかもしれません。

 いずれにせよ、歴史あるお寺が有するのにふさわしい貫禄ある巨樹なのは疑いない。巨樹の姿がそのご利益を裏打ちしているようにも思います。

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 「雨引観音の宿椎」
 茨城県桜川市本木 雨引観音
 樹齢:不明
 樹種:スダジイ
 樹高:15メートル
 幹周:7.5メートル

 村指定天然記念物

 2018.11訪問

 探訪メモ:
 ここへ登る「雨引観音線」は少し心細くなるような細さ。時期によってはここに多くの人が訪ねると思われます。オフシーズンなら駐車場は十二分すぎる広さ。
 孔雀が……放し飼いされていてびっくり。

 余談:
 この時、駐車場の隅には、テコでも動かないような大きなシイの枝が横たわっていました。
 大きなシイが多いので断定はできませんが、もしかしたら折れた宿椎の枝もあったかもしれません。

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