傾いてはいるものの、幹は堂々としています。
不朽や空洞も見えないし、乾燥している側はモミ特有のゴツゴツした質感を見せつけてくれ、このパターンが美しいとさえ思えます。
周囲には他にもトチのような樹種がポツポツとありましたが、それらは朽ちて菌類に蝕まれ、崩壊したりしていて、決して安穏な環境ではないと物語っているようでした。
そういう陰気を感じる林の中だからこそ、このモミの樹皮の質感だけが際立って健全に目に映ったのかもしれません。
(後でつるぎ町の資料を見てみると、すぐそばに大きなアカガシがあったようですが、ひょっとして我々が見た崩壊した朽木がそれだったのでしょうか……)
スタイルそのままに巨大化するせいで、写真に撮っても大きさが伝わりにくいことで有名なモミの巨樹(我々の中で)。
これまでも全国第1位「追手神社のモミ(兵庫県)」、暫定第5位「雷電神社のモミ(福島県)」などを見ましたが、いずれも同じ感覚に戸惑っています。
このモミも……やはり同様ですね。
実物を肉眼で見た感じでは圧倒されるほど大きいのに、写真に撮ってしまうと、「どれだけ」というのが失われてしまいます。
いやいや、もはやここまでくると、この「伝わらなさ」こそが正しく巨大なモミを見た実感なのだと思ってしまいます。