巨樹たち

宮城県大崎市「祇劫寺のコウヤマキ」

滝のような枝々が圧巻

 涌谷伊達家ゆかりの寺である祇劫寺。
 県天の巨樹である「祇劫寺のマルミガヤ」を先に見ましたが、祇劫寺の本命と呼べる巨樹が別にあります。
 それがこちら、国指定天然記念物のコウヤマキです。

 敷地内ではほぼ一番背が高い樹で、コウヤマキの特徴を知っていると、実は本堂を目前にした段階で視野に入ります。
 あの、スギのようにもマツのようにも見える……けれど、どちらとも違う独特の佇まい。
 もともと見かける頻度が少ない樹種なので、巨樹ともなれば興味津々(これまで見たのは、那須と、佐渡と……と数えるくらいしかありません)。

 本堂すぐ裏に、独特な姿でそびえています。
 まず、葉の形が違うので、全体の質感がスギやヒノキとは違う。
 枝がブラシのように毛羽立ち、幹が見えないくらいに全体を覆い尽くしています。地表スレスレに跳ね上がるようにして上を向いている枝が異様です。

 幹が見えないので、枝の下に潜り込むことになります。
 薄暗い! カメラのISO感度が一気に跳ね上がります。
 それよりこの、振り乱した髪のような無数の枝々です。目を奪われました。
 やや偏った広がり方をしており、斜面を降るようにして雪崩れている。本数は……数百もあるでしょうか、これが、正面から見た時に全体を覆い尽くしていたのです。
 下の方には支えが入り、保たれている。人為的にこの形が作られていることが伺えます。

 よく融合していますが、2本の合体樹です。全く同じ大きさの2本が、並んで育ってくっついている。
 コウヤマキは成長が遅い樹種だということで、最初から束に植えることで巨樹化を狙ったのかもしれません。
 樹皮はスギに似た感じですが、もっと赤銅色が強い。

 根が渦を巻くようにうねっているのも特徴。
 古くからこの土手に踏ん張ってきたのでしょう。

 見下ろす本堂は木造平屋建てで、お寺然としたファサードがない作り(撮ればよかった)。
 枝垂れた枝の下の土はジメジメしていて、ちょっとした湿地のようです。
 少し離れたところにも子孫であろう若いコウヤマキがあります。

 特徴的な葉。滑らかで艶があり、針のよう。かと言ってマツのように刺さりはしない。モミやカヤとも違う。
 確かにイヌマキの葉に近い感じなので、なるほど、マキ……などと言いたくなりますが、マツ目コウヤマキ科コウヤマキ属はたった1種しかなく、日本の固有種
 イヌマキの「イヌ」は「モドキ」的な意味合いで、「マキ」こそは「真木」、この高野槙のことを指すそうです(文字通り漢字「木」に「真」ですね)。高野槙を別名ホンマキとも呼ぶとのこと。

 マツ目の裸子植物なので雄花はマツに似ていますが、房のまま落ちているところが違うかなと。
 まつぼっくり……もとい、「こうやまきぼっくり」もたくさん落ちていますね。こちらもマツとは少し面持ちが違います。

 メドゥーサな枝々があまりにすごいので、誇張だと言われるのは百も承知で超広角でグワッ! と撮りたくなる巨樹です。
 同寺のマルミガヤでも同じことを書きましたが、幹周囲数値より、こうして個性を叩きつけてくれることが嬉しいですね。

 それでも、国指定天然記念物というポジションはどうなのか? それにふさわしいのか?
 ……経験上、国天指定は鵜呑みにしない習慣が身につきましたが、この樹はどうでしょうか。
 (しかも、コウヤマキの国天は2本のみ。この樹と、愛知県新城市「甘泉寺のコウヤマキ」。)

 コウヤマキで幹周5メートルは全国暫定8位にあたる(巨樹DBより)大きさ……というと、そうでもなさそうですが、それ以上のものもほぼ僅差。
 それよりもこの威容と、自生北限が福島県とされるコウヤマキが遙か北の地で巨樹となっている点が評価されているのだと思われます。

 それにしても……久しぶりの巨樹撮影で勘を取り戻すのに手間取りました。
 良い樹なので、またしばらく後に再訪してじっくり眺めたいです。

「祇劫寺のコウヤマキ」
 宮城県大崎市田尻大貫宿上屋敷24 祇劫寺
 推定樹齢:600年
 樹種:コウヤマキ
 樹高:30メートル
 幹周:5.0メートル

 国指定天然記念物

 訪問:2020.5

 探訪メモ:
 祇劫寺の外に明確な駐車場がなく、門も狭いです。駐車によって檀家の方の出入りを妨げないように気をつけましょう。

 祇劫寺の巨樹については、現地に解説板が見当たりませんでした。

 余談:
 個体数が少ないコウヤマキ、ランキングの上位巨樹制覇を目論むのも面白いかもしれません。
 環境省DBリストの一番上にある個体は、静岡県静岡市清水区の「大平のコウヤマキ」のことだと思われますが、850cmは根周りらしく、幹周囲は550cmとのこと。
 やはりそこまで大きくはならないようです。
 これも見てみたいですが、なかなかの登山になるようで……。

4件のコメント

  • to-fu

    これは凄い!
    コウヤマキの巨樹は一本しか見たことがなく、しかもその巨樹は本殿の中にあって根本が完全に見えないタイプのものだったのでイマイチ魅力が分からなかったのですが、この枝ぶりにしてもスギやヒノキとは違った魅力がありますね。それぞれの枝がここまで長く伸びるものなんですねえ。そして早速15-30mmの真価を発揮しているではありませんか。まさに超広角で撮られるためにここで待っていたようにしか思えません 笑 このコウヤマキは私も是非とも見てみたいです。

    静岡県山間部は本当に大物揃いですよね。掛川奥地(一応浜松市扱いですが…)の「春埜杉」とか。あちらの林道は地図上で眺めるだけでも脂汗が出そうなくらいハイレベルなので、どうしても躊躇してしまいます。お酒も料理も美味しい土地なので、行ってみたい気持ちは十二分にあるんですが。うーん。

    • to-fuさん>
      コウヤマキも、幹周囲だけでは語れない魅力を発散している樹種の一角です。
      この樹はかなり際立っているとは思いますが、以前見た佐渡のコウヤマキの写真を見返してみると、どうやらこの全体を覆い隠すような枝振りは樹種の特徴でもあるようです。
      スギやヒノキに目が慣れていると、なんだあの樹は!? と惹き付けられます。
      外からは幹が見えず、枝の中では引いた画角で撮れない。はからずも超広角が役に立った……というより、超広角でしか全体像が撮れない状況でした。笑

      静岡には僕も挑戦したいんですが、一度伊豆山中で迷い、かといって町まで降りてくるとすごい渋滞だったりで、結局痛い空振りに終わった経験があります。
      じっくり腰を据えて、戦略を練りたいような地域ですよね……。

  • RYO-JI

    私もコウヤマキの巨樹は一本しか見ていませんが、それとはまったく印象が違って驚きました。
    幹周からは想像できない程の枝の量、ヒドイ、いやスゴイ!
    樹高や幹周で我が身を誇示するのではなく、枝葉のボリュームで勢力拡大を狙うタイプですね。
    こういうのは数値以上の迫力があって、事前情報とのギャップを大いに楽しめる感じがします。
    そして超広角レンズの威力は絶大ですね!

    静岡の巨樹もそれなりにピックアップしていますが、訪問し甲斐のあるランカーが揃っていますよね。
    堪能するには時間的余裕が必要でしょう。
    狛さんの旅の目的地にするには、やや距離が近過ぎ?ますかね(笑)。

    • RYO-JIさん>
      ほんと、蛇の大群のようでやりすぎ感があります。笑
      これでも折れずに伸び続けるのですから、枝の柔軟性も結構なもの。
      コウヤマキも歴史の古い針葉樹ですし、こうして地上に届いた枝から更新する……なんてことがあるかもしれませんね。
      もともとそこまで飛び抜けた大きさにはならないようですが、雰囲気がある樹種で寺社によくマッチします。
      その名の通り高野山あたりが本場らしいですし、奈良周辺に大きいのがありそうですよね。

      静岡は……東京がやはり高い壁なんですよね。。
      一度行ったらしばらく滞在するつもりで重点的に回ってみたいです。
      まさか……静岡サミット?笑

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