2023年・新潟県巨樹旅1

〇1日目(新潟入り、下越地方)

 長きに渡るコロナ謹慎が今年こそは明けるという2023年5月後半。
 無用の長物・ゴールデンウイークをやり過ごし、ついに巨樹遠征に出かけました。

 行き先に選んだのは新潟県。
 前回訪問から6~7年経った上でも印象深い巨樹が複数あり、バージョンアップ(※当時比)した機材で撮り直すだけでも動機としては充分。
 東北から陸路のみで行けるし、近すぎない距離感も良い。
 何より、豪雪地帯の「今しかない」というこの季節感がたまらない。

 早朝、仙台から高速に乗る。
 山形県の巨樹の誘惑を振り切るのがまた大変ですが、突っ切ります。

 グイグイ標高を駆け上って月山を越え(という表現が正しいかどうかは不明)、日本海側の山形県鶴岡市へ到達。
 言ってみれば早くもここで「列島横断」、東北の地図構成は実にシンプルです。
 五十川(いらがわ)といえば、かの名巨樹「山五十川の玉杉」に会いに行きたくなるも、今回はその方角に一礼してパスし、南下方向に舵を切ります。

 やがて山形県と新潟県、東北と中部の境界として有名な「鼠ヶ関」が見えてくる。
 すがすがしい日本海の風景を横目に、晴れて新潟県入りしました。

 新潟県最北部、村上市の小俣集落。
 個人的には最も訪問する動機に乏しい地域のため、今回あえてこちらを玄関口に選びましたが、さらにその最北辺に訪ねておきたい巨樹が。「小俣白山神社の大杉」です。

「小俣白山神社の大杉」


 大杉の巨大さは語るまでもなし(詳しくは個別記事をどうぞ)、山間の清流沿いに続く古き宿場の風情、美しき初夏の風景に、巨樹を抜きにしても再度訪ねたいと感じ入るものがありました。

 気になる「ラジウム清水」。
 コップが置いてあるので試しに一口すすると、コクのあるラジウム風味……ではなく、実にスッキリしたお水でした。
 大変冷たく、手や顔を洗いました。

 ……で、早くも一か所目にして昼を回る。
 早起きからの数時間の運転、装備背負って若干の徒歩、百数十枚の撮影でカロリーを消費していますが、唯一の南下路にもかかわらず、国道7号のロードサイドにはコンビニや食堂が滅多に出現しません。

 おそろしいことです。あらかじめ「ここでこれを」というプランを確立させていないと飢えは避けられない。しかも運悪く月曜で、おおむね飲食店は店休ときたもんだ。

 ……というわけで、トラッカーの皆さんの命綱なのが一目瞭然の「三面川(みおもてがわ)ドライブイン」に駆け込みました。
 たすけてくれ!

 そしてラーメンセット。フルサイズの醤油ラーメンとかつ丼、小鉢もついて900円。

 素晴らしい……実際味も素晴らしかったです。理想的あっさり中華そばに揚げたて熱々さくさくの紙カツ。量多すぎ? とよぎるも、無用の心配でした。

 福井のかつがソースに溺れるのと同様、ここ新潟では甘さとしょっぱさがちょうどいい「たれかつ」であって、嗚呼ニーガタ、ついに潜入してしまった……と感慨ひとしお。
 座敷でビールとチューハイをダムかよってほど流し込んだおっさんたちは、おそらく駐車場のトラックでひと眠りして夜走るんだろう(と、思う)。

 山深い地域であり、幾つかスギ巨樹をリストアップしてはいるものの、この時点でも網羅は不可能と判断、南下を続けました。
 村上市市街が近づいてきましたが、朝日地域で東へと転換、三面川沿いにしばらく進む。
 のどかな田園風景を眺めつつ、次の巨樹「熊野神社七本杉」附近に到着。

「熊野神社七本杉」

 「感動が薄れるからあえてあんまり調べないんだな、うん」
 など言うつもりもなく、現地ではフツウに困ってるんですが……
 まあ、ちょっと回り道したせいもあり、探訪は短時間で切り上げました。
 「七本杉」は派手めの合体杉、このテが好きなら見て損はないですよ。

 さあ、すでに15時を回っている。一日が短かすぎる! これぞ巨樹探訪の旅だな!
 喜んでる場合ではなく、ピックアップした候補のいくつか、最後から順にバツがついてってるぞ。
 見積もりが甘すぎやしないだろうか?

 次の巨樹も行くべきか迷いました。
 情報を得てはいたものの現地(=林道、山)判断が必要だったし……でも、あえて突っ切って探訪したのが「沼田林道のトチ」です。

「沼田林道のトチノキ」

 幹周、存在感ともに素晴らしい大栃。
 なのにほぼ知られていない。人の視野の広さ狭さについて考えさせられました。
 他人を揶揄するなんて滅相もない、自分も過去、かなり有名な巨樹の前さえスース―素通りしていた事実があります……。

 さて、想像以上のトチに大満足したものの、日照は完全に夕方のそれ。林道から這い出てきた段階で16時半を回ってたし。
 作戦ではここから一気に上越市まで歩を進め、さらに一か所立ち寄れたら……なんて思い浮かべてたんですが、カーナビ子さんいわく、

 『およそ200キロ、3時間くらいかかります♪』

 今、語尾でちょっと笑っただろ!?(相手は機械です)

 ……だめだこりゃ。ていうか、またしても新潟大陸の広大さをあまりになめすぎている!
 そうした自爆を経て、この日はもう追及を諦めました。
 ファイト残量はあったと思うけど、それと五分の疲労感、訪ねた巨樹はどれも満足感が高かったし。
 言うべきことも、言えることもほとんどない。そんな一日。

 かくして3時間高速を飛ばし、上越市に到達。当たり前ですが、もう夜です。
 大きな道の駅「よしかわ」、好都合にもすぐ向いに温泉施設がある。
 さらに最高なことには道の駅併設のセブンイレブンがあるじゃないですか。これでメシ問題も一気解決だ。

 温泉で汗を流し、できることは何一つない民草としてゼレンスキー氏のG7演説中継を広間で聞き、千切りキャベツ1袋を投入した「冷やしうどん 畜舎風」を車中黙食。
 あとは何もなく、久しぶりの車中泊です。
 懸念していた気温はそこまで高くなく、むしろ翌日から下降するという。
 それよりも、車泊がちょっとしたブームとなり、マナー違反する連中のせいで追い出しにかかる道の駅も少なくないらしい……それが不安でした。
 幸いそんなことは起きず、次第に同類のクルマたちが集まる気配を感じつつ、早めに消灯しました。

 (つづく)

この日の行程はこんな感じ。

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