巨樹たち

青森県十和田市「法量のイチョウ」

「日本一気難しい」巨大イチョウ

 階上町の巨樹探訪を経た翌朝。
 イチョウ大国青森県を代表する一樹、「法量のイチョウ」目指し、十和田市へとやってきました。
 市街地を抜け、奥入瀬川に沿って十和田湖へとつながる国道102号を西へ。
 全国的に有名な巨樹であり、各種ガイドブックやパンフにも載っているため、このルートを進む方には目標のひとつとしてマークされている可能性も高いはず。

 人気の高さを示すように、現地には広い駐車スペースがあります。
 「法量のイチョウ」は、奥入瀬川とは道路挟んで反対側、この写真でいえば右手の坂を上って行った先にあります。
 手前には解説板もありますが、初対面はあまり多くの情報を入れない方がおもしろい。最近の些細なこだわりです。
 まあ、有名な巨樹に関しては、いつの間にかだいたいの事柄が刷り込まれているものですし、戻り足で読めば不足なしでしょう(実際、そうしました)。 

 すがすがしい奥入瀬川の流れが見下ろせます。
 イチョウの後、ちょいと川岸まで降りて行って散策しました。

 ああ、間違いない。あれだ。
 おいらせ町「根岸の大イチョウ」、階上町「銀杏ノ木窪の大銀杏」も、まだきれいな緑色だったので、ここでも特に黄葉は期待していません。

 有名巨樹、ボヤボヤしてると観光バスが来てしまうかもしれませんよ、黄色くないからって油断はできない。
 さっそくヒューマンスケール撮影から取り掛かりました。
 この大きさに対する感嘆符はいくつ必要でしょうか。書くまでもなく、大変にでかい。笑
 周囲が大きく開けているので、イチョウの繁茂も気持ちよく広がっていて、スケール感を存分に味わえます。

 朝の光がまぶしくなってきて、撮影に最適とは言い難い光線状況になってしまいましたが(本末転倒ゆったり車中泊)、並みいるイチョウ巨樹の中で全国第4位ともいう大きさを堪能させて頂きます。

 葉の一枚一枚がとても大きい。
 この秋、さらに何本かイチョウを訪ねましたが、どれと比較しても明らかに大きかったです。

 仏教とともに伝来したというのがイチョウの通説ですが、ここでも推定樹齢1100年と、最大限そのセオリーで解釈されているようです。
 国道から見て訪ねやすい位置に立っていますが、この地はかつてお寺だったそうで、やはり話がつながります。
 逆に、あの道にも数百年来の歴史ありかと思うと、それも大したものですよ。

 てっぺんから足元までどっさりと葉で覆われていて、隣に立ったくらいでは全く幹が見えません。
 ライブビューでカメラを構え、なんか後ろめたいローアングル撮影をして、ようやくこれくらい見える。
 幹周囲は14.5メートルとされ、これまで出会ったイチョウ巨樹で最大!
 と、ストレートに感嘆したいものの、正直言って、思い切りよく葉が散ってしまわないと実感は難しいですね。

 周辺環境の整備工事が着工しているような雰囲気。
 青森県のサイトによれば、「根部の保護、ナラタケ病菌糸の付着防止のため、立ち入り防止柵を設置しております。」とのこと。
 病原菌が靴底に付着していないとも限りませんし、ムリヤリ接触しようとするのは良くないかも。
 また、後方にスギの苗が何本か植えてあったのが意外といえば意外……将来の風除けとしての想定なんでしょうか?

 今でもイチョウの近くに小さなお堂(お社?)が残っているのですが、反対側は広い草地で、かつての寺の境内なのかも。

 この草地から見た姿が「法量のイチョウ」の正面だと言えます(要するに、一枚目のヒューマンスケールは側面図)。
 大谷サンのホームランで有名になった球場の壁じゃありませんが、まさにでっかく分厚くモンスター的な緑の壁。
 上辺は凹の形に見えますが、おそらく過去の台風で折れた個所で、これによって樹高が低くなってしまったと聞きます。

 広角レンズを付けた上、どれだけバックすれば全体像が入るんだよ……と四苦八苦していると、新たな訪問者さんが。
 ご挨拶して気づいたのですが、階上町のフォーラムに参加されていた「巨樹の会」の方でした。笑
 車で山梨から来られたそうで、これから日本海側へ抜け、最大のイチョウ巨樹「北金ヶ沢のイチョウ」を目指すそうで。
 やる気がすごい。笑

 ということで、解説です。
 カラーのものは下の駐車場、文字だけの方はイチョウの近くにあります。
 黄葉時期を捉えるのが難しいため、カメラマン泣かせの「日本一気難しいイチョウ」といわれている。
 イチョウ巨樹を撮っていると、黄葉・落葉時期の個体差が大きいことに気づきますが、この「法量のイチョウ」は、黄葉せずに散ってしまうことすらある。
 そこを足しげく通ってモノにするのがネイチャー・カメラマン根性でしょうが、十和田市の観光サイト記事によれば、2021年は、2018年以来3年ぶりの完全黄葉だったとか。その前は2009年、1997年……と、なるほど、これはかなりの手ごわさ。

 じゃあ2023年はどうだったんだ?
 Googlemapの投稿を見ると、11月末でもほとんど色づいていず、やはり多くのカメラマンを失恋に陥れたと思われます。
 こればっかりは仕方ない。どんなに高級なカメラを持ってこようが、動画配信しようが、ドローンを飛ばそうが、イチョウにその気がなければこの膨大な緑が黄色に変じることはないんですから。

 約100年前、国の天然記念物に最初に指定されたイチョウのひとつだったのも頷ける、筋金入りの巨樹。
 逆に、この頑なな緑色こそが「法量のイチョウ」のアイデンティティのようにすら感じられました。

 ちょうどよく後ろ姿を撮らせて頂きました。
 なんという人間の小ささ……いや、「法量のイチョウ」のデカさか。笑

「法量のイチョウ」
 青森県十和田市法量銀杏木
 推定樹齢:1100年
 樹種:イチョウ
 樹高:25メートル
 幹周:14.5メートル

 国指定天然記念物 
 訪問:2023.10

探訪メモ:
 すぐ手前の道路沿い左右に駐車スペースが用意されています。
 トイレもあり、奥入瀬川の散策も併せ、時期には観光バスも来るのでしょう。  
 完璧な黄葉図を捉えるのは至難の業ですが、だいたい11月半ば~12月初め頃がピークではないでしょうか。
 雄の樹なので、ギンナンはなりません。

この旅の様子は「2023年・青森県東部巨樹探訪4」でどうぞ。

4件のコメント

  • to-fu

    夏に目指そうと思ったものの時間切れで諦めたイチョウです 笑
    十和田湖一周は思った以上に大変だった。
    というか、景色良すぎでいちいち車を停めて写真を撮りに向かってしまうんですよね…

    先人たちの写真は恐らく黄葉を目指してハズレを引いたスカスカなものばかりだったので、こんなに
    大きなイチョウだったのか!と驚きました。葉が茂っているとここまで巨躯が強調されるものなのか。
    仏教と共にイチョウさんが中国からやって来たのは鎌倉時代だとか6世紀頃だとか言われていますが、
    国内の大物たちを見ていると実感として「少なくともこれが1,000年未満ってことはなくない?」と
    実の目で見た実感として考え込んでしまいます。北金ヶ沢のアレが1,000年って本当かよ…

    どう撮影しても緑のカタマリになってしまう黄葉前のイチョウは苦手意識があってスルーしがちでしたが、
    狛さんのの一連のイチョウ巨樹写真を見て来年はもっと積極的に立ち寄ってみようと思いました。
    負け戦を繰り返すことになりそうな予感がありますが、挑むからこその面白さだってあるわけで。

    • to-fuさん
      ああ、とてもよくわかります。もうココだけ堪能できれば他はいいかなあーなんて思わせてきますよね、十和田湖。笑
      八戸方面から向かってきて本当に良かったとも思います。終着点としてふさわしいゾーンだとさえ思いますね。

      言われてみれば確かにそう、イチョウって黄色ばっかり写真に撮られて、葉の盛りなんて撮るのはそれこそ巨樹マニアだけかも。
      渡辺本とか、「人里の巨木たち」さんにはもちろん緑のイチョウもたくさん載ってますが、観光筋だとどうしても……ですね。
      「法量のイチョウ」に関しては、地元の観光サイトですら2021年黄葉時の写真を使い回してるくらいの難物ですが、皆さんにもぜひこのどでかい緑のカタマリに圧倒されてほしいものです。
      「加茂の大クス」も、(あ、こりゃあダメなやつだ……)と察しましたが、こちらもこちらで、葉っぱテクスチャーを貼った巨壁を撮ってるようなもんで、まったく写真が活きてこない!

      スギだと過酷な環境で成長が遅くなって姿に見合わない樹齢になる例もあり、なるほど……と深みを感じたりもしますが、そういうセオリーがイチョウには通用しない様子。
      この「法量のイチョウ」が4位だというので、それ以上のランカーを調べてみると、
      1:「北金ヶ沢のイチョウ(青森)」、2:「福城寺のイチョウ(熊本)」、3:「宮田のイチョウ(青森)」、同3位「長泉寺のイチョウ(岩手)」……
      って、なんで急に熊本が割り込んでくるんだよ、とか。笑 正しく計測・登録されていないのも多そうですし。
      一方で樹齢を考え始めると「仏教伝来以前はない」と明確に線引きしてきて、神代的存在を煽るスギ・クスと違って突然冷静に引き戻されるような感じになる。
      やっぱり欠かせない主役樹種なんだなあと感心する個性です。

  • RYO-JI

    ランカークラスのイチョウの登場、さすがの貫禄ですね!
    緑の塊としか言いようがない姿。
    本音を言うと、太い幹をもっとしっかり見せておくれよとも思います(笑)。
    ですが、ここまで圧倒的な緑の塊が眼前にあるとそれだけで満足してしまうのかもしれませんね。
    イチョウに関しては幹周や樹高以外にも、葉の量でもそのスケール感を表現できれば面白いでしょうね。
    容積か重量か何かでランキングできれば、このイチョウの凄さが更にわかり易そうかなぁと。
    まぁそう思ってしまうくらい繁茂がエグイということなのかもしれません(笑)。

    • RYO-JIさん
      そうですね、この葉……全部集めたら学校のプールくらいはいっぱいに埋め尽くせそう。もっとあるでしょうか。
      イチョウの葉を拾ってみるとかなり水分量がありますし、そうなってくるとやっぱりトン単位の重量があるでしょうね。
      ほんと、これだけの圧倒的な物量の葉を一本の樹木が毎年つけるなんて信じがたいこと。
      巨樹はすごいなと改めてシンプルに感じられました。
      黄葉に意識が行ってしまうイチョウですが、実は緑でも良し、散っても良しで、実は一年中見どころがありますね。

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