巨樹たち

新潟県佐渡市「長谷の高野マキ/三本スギ」

花豊かな古刹の巨樹たち

 2015年、思い付きでの佐渡島、観光と巨樹の旅。

 「新穂大野の大イチョウ」のある「清水寺(せいすいじ)」から、同じく佐渡市内から車で20分ほどの立地にある北豊山(きたぶざん)「長谷寺」にやってきました。
 清水寺が京都のキヨミズデラを手本としているのと同じく、こちらも地形が大和の長谷寺に似ているところをとったと言い、(「はせでら」ではなく)「ちょうこくじ」と命名されたとのこと。

 門から本堂まで登っていく道のりだけでも新緑と数々咲き乱れる花がたいへん美しく、名物の牡丹はちょっとした牡丹園ほども見応えがありました。
 さらには動物たち。というか、ウサギたち。かわいいウサチャンがその辺にいます(ヘビサンもいましたけど)。
 兎を縁起物としていて、「ウサギ観音」なるものもあるようです。

 実際、エンタテイメント溢るるお寺だなあ……と印象深いのですが、その歴史は古く、1200年ほども遡るという。
 そして、それを立証するかのように今も立ち続けるのが、コウヤマキ三本杉という巨樹たちです。

 まずはコウヤマキ。
 お花を楽しみながら石段を上っていくと、その大きさと独特な風貌で足を止めさせます。
 この時はまだコウヤマキの巨樹に出会ったことがなく、樹種に対して首を傾げました。
 幹の感じはスギに近い気もするが、それにしては枝が多い。
 葉の見た目は遠目からだとマツに見えるが、それにしては主幹がまっすぐで太すぎる……。

 案内板を読み、「これがコウヤマキ!」と合点がいきました。
 和歌山県の高野山では霊木として崇められ、そのため「高野槙」の名がある。

 本堂へ続く石段の途中、築山状になった庭にずんと植わっている逞しい樹です。
 相当に長い年月を経ているはずですが、枝も葉も多く、生命力に満ちあふれています。
 葉はマツに似ていますが、先端は尖っていません。

 長谷寺によれば、
 「この木の根元には、三百年前から地蔵尊が鎮座しており、高野槙の幹に触れることで、二重のご利益が頂けると言われています。」
 とのこと。

 とてもかっこいい巨樹だなと感じ、コウヤマキという樹種に対しても興味を喚起してくれました。
 実際、後年いくつか見て来た顔ぶれはどれも個性的。
 何より、「1属1種、コウヤマキ科コウヤマキ属コウヤマキ」という、日本固有種であることが日本人として誇らしい。

 庭があったら是非植えてみたい……いや、畏れ多いか。
 それでも、植えてみたい樹があるって、いいですよね。

 環境省データベースの数値と、案内板・佐渡市のホームページの数値に差がありますが、DBのデータの方が新しいように感じ、そちらを採用します。
 ちなみに、登録名は「ちょうこくのコウヤマキ」ではなく、「はせのコウヤマキ」のようですよ。

「長谷の高野マキ」
 新潟県佐渡市長谷13
 北豊山 長谷寺
 推定樹齢:500年
 樹種:コウヤマキ
 樹高:30メートル
 幹周:5.5メートル

 県指定天然記念物
 訪問:2015.5

探訪メモ:
 長谷寺に駐車場あり。
 お寺のホームページから各種充実の見学体験プランが申し込めるようですので、参加してみるのも面白いかも!

長谷の三本スギ

 コウヤマキを右手に石段を登っていくと、さて、再び首を傾げることになります。
「えーと……さっきからずっと、あのスギと本堂の遠近感がおかしいんだけど?」

 そう違和感を覚えるかのようなスギが三本も、石段を登りきったところ、決して広くない場所に直立しています。
 立派な長谷寺の本堂が小さく見えるくらい、でかい。
 本堂よりむしろこのスギ巨樹トリオに興奮して、思わず駆け寄ってしまいました。

 まさに直立不動。
 しかし近づいて触れてみると、樹皮は柔らかく、暖かい感じすらしました。
 三本とも同じくらいの太さ、高さであるので、おそらく兄弟のような間柄なのでしょう。
 数百年間、ともにここで成長してきたのです。

 喜んでいるわたくしを、スケールがわりにお使いください(↓のモノクロ写真)。
 写真を見ていて気付きましたが、杉に絡み付いているキヅタの大きさもなかなかなもの。

 コウヤマキとともに県指定天然記念物とされ、佐渡市のホームページには以下のようにあります。
「このスギは独立した3本の巨木からなり、樹高はいずれも50メートルに達し、目通り幹囲は東の木が6.4メートル、中央の木が6.2メートル、西の木が6.5メートルに達する。」
 樹高は環境庁DBでは40メートルとされていますが、幹周はおおよそ忠実。
 というか、多少測定高さが違っても変化のない、きわめて真っすぐな幹を誇っています。

 佐渡でも最大級のスギ……と思わず筆が動きかけますが、実は佐渡島には巨杉がゴロゴロある。
 佐渡市でも7メートルを超える個体がある他、ガイド付きでないと立ち入れない新潟大学演習林内で、近年、野生の巨大杉がたくさん発見されているという。
 古代からの歴史と信仰、巨樹の群れ……なんともロマンのある島、佐渡。
 再訪の機会が訪れることを願ってやみません。

「長谷の三本スギ」
 新潟県佐渡市長谷13
 北豊山 長谷寺
 推定樹齢:500年
 樹種:スギ
 樹高:40メートル
 幹周:6.4メートル/6.26メートル/6.5メートル

 県指定天然記念物
 訪問:2015.5

 こちらも天然記念物登録名は「はせのさんぼんすぎ」
  まあ、語呂とか語感の良い方を選びたいですよね。

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