車道からはその姿は判然としませんでしたが、取り巻くように細い遊歩道が作られており、やがてその姿が明らかになります。
「千本杉」という固有名称ですが……さて、我々は杉並木を見に来た訳ではないのです。
とすれば、○本杉という、例の合体杉のバリエーションだとすぐわかる。
生命力が強く、柔軟で長命。
スギはしばしばその成長の過程で隣にある樹を巻き込み、一体化しつつさらに巨大化していきます。
一方で、「巨樹」という存在はあくまで個体として見るもの。
それゆえ、合体杉というものは軽んじられる傾向があります。
幹周囲13メートル! と声高に言ったところで、それが何本も束になったものだとすると、環境庁などのランキングからも番外とされてしまう。
個人ではなく団体や群衆のように扱われ、有り難がられないわけです。
この旅の終盤に訪れることになる岐阜県の「坂下の十二本ヒノキ」などもそうで、ズンと聳える単幹巨樹の影に隠れがち。
そんなこと言ったら、かの縄文杉も合体樹だという説もあるらしいですが……。
ともあれ、何事も実物を見て判断したいものです。