巨樹たち 山形県西村山郡「神代カヤ」 / 2 コメント 「東北一」より「神代」にリアリティ この大カヤを訪ねたのは、2019年の晩夏、東北最強クラスのインパクトを誇る「松保の大杉」探訪を成し遂げた、その足ででした。 この巨樹の印象(後記します)に加え、長いコロナ謹慎もあり……気づけばだいぶ掲載が遅れてしまいました。 が、記憶から消えはせず、絶えず「放っといていいのか?」と気にはなっていたのです。 写真と記憶を総動員して、記事に残そうと思います。 その名も「神代カヤ」です。 上記の通り、山形県西村山郡大江町の山間、小釿(こじゅうな)集落というところにあります。 起伏に富んだのどかな風景が続き、里山の風景を撮るのも楽しい。 大カヤへの入り口には案内看板に加えてでっかい標柱。ピカピカのみかげ石ですよ。 書籍では前述の「松保の大杉」よりもこのカヤの方が大きな面積で掲載されていたりして、否応なしに期待が高まります。 (「大江町観光物産協会HP」では、この二樹を並べて掲載していていい感じ。) 下車し、案内通りに丘?を登っていくと、蜘蛛の巣に緊縛された古びたお社があり、同時に巨樹の姿も目に入ります。 背後を林に守られて立つ「神代カヤ」。 葉の色、密度、もちろん樹幹の形からも、一本だけ異なる樹種であることがすぐにわかります。 草刈りされてもすぐ復活してしまうのであろう草むらを踏み分け、できるだけ近づいてみます。 日当たりのよい方を枝で覆っており、幹を観察するには急斜面を回り込む必要がある。 なるほど、明らかに株立ち。 とか言ってしまうといかにもイヤなマニア野郎ですが、くだんの「東北一の大カヤ」の肩書、少々議論の余地はありそうです。 興味を向けられにくい樹種なのか、カヤについてはどうもデータの分析が進んでいない気がしますね。 おそらくこの巨樹はかなり古くからその看板を背負ってきたのだと見受けますが、例えば福島県「塩貝の大カヤ」の方が数値も見た目も大きいのではないか……。 そしてその「塩貝の大カヤ」にせよ、2000年の環境省ランキングには登場していないようです。 で、この「神代カヤ」の名も載っていません。 渡辺典博氏によれば、大きな幹9本が株立ちになったものだそう(解説には5本とある)。 「根」周9メートルとしているのは、斜面の下側から目通り高さを設定して測った数値ではないでしょうか。 そうすれば一体感のある根幹を測ったことになり、見た目もかなり迫力がある。 50年ほど前には幹が鋸で傷つけられ、枯死が心配されるほど衰弱した、ともありました。 現在の樹勢としてもあまりよくはないようです。 太い幹の一部が切除され、背側から太いワイヤーとアンカーで牽引されて立っています。 葉の茂りは厚くなく、どことなく色つやもよくない。 相当な高齢なのは間違いなく、「東北一」には待ったをかけても、「神代」の呼び名の方はすんなり受け入れてしまうような風格を感じました。 解説には、なんとこの樹の精霊がお伊勢参りをしたとあります。 (「みろく堂」のスギは未調査。現存しないのかも。) このエピソードは、福島県「杉沢の大スギ」にそっくり。 確かあの大杉は「お杉さん」という娘さんに化け、ホームシックになった挙句、殿方と結婚して子供まで設けたんですよ。あらまあ! 最後に。明らかにマルミガヤです。 マルミガヤに限って言えば、これは確かに東北一と言える巨樹かもしれません。 以後、徐々にでも樹勢を取り戻してくれることを祈りたいです。 「神代カヤ」 山形県西村山郡大江町小釿28 推定樹齢:1500年 樹種:マルミガヤ 樹高:19メートル 根周:9メートル 県指定天然記念物 訪問:2019.9 探訪メモ: 集落内は一本道の登坂で、道幅は狭すぎず、しかし離合余裕と言えるほど広くもない。 カヤへの看板の少し先の右手に集落の集会場らしき建物があったので、そこのスペースに停めさせていただきました。 集落の方がおられるようでしたら一応ご挨拶を。 関連
to-fu 2023年9月18日 at 9:50 PM 返信 巨樹本の正面写真を見たかぎりでは単幹の大木が裂けているようにも見えたのですが、なるほど明らかに株立ちですね。 しかしこの正面から向き合ったときの枝張りはなかなか見事ではありませんか。 根元の解説板が成人男性くらいの高さ?と考えると、視界に入った瞬間はかなりのインパクトがありそうです。 (意地悪な見方をすると登場シーンがピークか?と思えなくもありませんが…) 地図で見たかぎりでは「大井沢の大クリ」とも近そうですね。 大クリ、大カヤ、そしてシメに巨大スギというルートで。ああ、妄想が膨らみます。 それだけ回れたらあとはもう温泉に浸かってうまいもの食って寝るだけだな…
狛 2023年9月19日 at 10:08 AM 返信 to-fuさん> そういや載せてなかったじゃないか、という巨樹の記事でした。コメントありがとうございます。 何百年もこういう斜面に育ってきた巨樹ですから、測定基準に当てはめるには難しさがありますよね。 どうしても背面から見た分散した印象(というか、正面で見ていた「幹」がほぼ見えなくなる……)と、直前の「松保の大スギ」ショックがデカすぎて、損な立場になってしまった大カヤでした。 それでも、東北に身を置いてカヤ巨樹を見る機会が増えるにつれ、再評価したくなる巨樹だったとも言えます。 これほど存在感のあるカヤは、やはりそうそう見られないです。 高速を上手く使えば案外近くに着地できるんですが、同時に、山深い土地ゆえスムーズにいかない面もありますね。 コース化となると、やっぱりというか当然というか「松保の大スギ」が最難関、ここで時間も体力もメンタルも使い果たすことが目に見えている……。苦笑 一方で、月山湖~大井沢辺りは景色がすごく良いので、写真撮りのクルマは速度を大幅に損なう懸念があります(そば、きのこの誘惑も)。 他に、山菜、牛肉、ラーメン、果物、お酒……と、トラップの山なので、ぜひいらしてください。笑
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to-fu
巨樹本の正面写真を見たかぎりでは単幹の大木が裂けているようにも見えたのですが、なるほど明らかに株立ちですね。
しかしこの正面から向き合ったときの枝張りはなかなか見事ではありませんか。
根元の解説板が成人男性くらいの高さ?と考えると、視界に入った瞬間はかなりのインパクトがありそうです。
(意地悪な見方をすると登場シーンがピークか?と思えなくもありませんが…)
地図で見たかぎりでは「大井沢の大クリ」とも近そうですね。
大クリ、大カヤ、そしてシメに巨大スギというルートで。ああ、妄想が膨らみます。
それだけ回れたらあとはもう温泉に浸かってうまいもの食って寝るだけだな…
狛
to-fuさん>
そういや載せてなかったじゃないか、という巨樹の記事でした。コメントありがとうございます。
何百年もこういう斜面に育ってきた巨樹ですから、測定基準に当てはめるには難しさがありますよね。
どうしても背面から見た分散した印象(というか、正面で見ていた「幹」がほぼ見えなくなる……)と、直前の「松保の大スギ」ショックがデカすぎて、損な立場になってしまった大カヤでした。
それでも、東北に身を置いてカヤ巨樹を見る機会が増えるにつれ、再評価したくなる巨樹だったとも言えます。
これほど存在感のあるカヤは、やはりそうそう見られないです。
高速を上手く使えば案外近くに着地できるんですが、同時に、山深い土地ゆえスムーズにいかない面もありますね。
コース化となると、やっぱりというか当然というか「松保の大スギ」が最難関、ここで時間も体力もメンタルも使い果たすことが目に見えている……。苦笑
一方で、月山湖~大井沢辺りは景色がすごく良いので、写真撮りのクルマは速度を大幅に損なう懸念があります(そば、きのこの誘惑も)。
他に、山菜、牛肉、ラーメン、果物、お酒……と、トラップの山なので、ぜひいらしてください。笑