巨樹たち 山形県最上郡「万年杉(不変の杉)」 / 2 コメント 巨樹にならない不思議な杉 おーい、巨樹はどこなんだ……? ということで今回、山形県で訪ねたのは、写真に写らない透明な巨樹です。 ……ウソです(当然)。 しかし、トップ写真のこの風景のいったいどこに巨樹があるというのでしょうか。 と、どうしてもヒネた導入を書いてしまいますが、これは実際とても変わった樹です。 まず、事の発端は、書籍「山形県 最上の巨樹・巨木(東北出版企画)」の記載。 全国ランキングを次々塗り替えた超巨大カツラの発見とその探検の記録に目を奪われる中(「高坂の大カツラ」もそのひとつ)、なぜか記憶に焼き付いてしまったのがこの奇妙な「万年杉」だったのです。 所在は舟形町の長者原というところ。 小国川の近くで県道36号と31号が交差する「長者原交差点」があり、この31号を西へ。 100メートルほど進み、地図でいう「叶内山ぶどう酒店(※目立つ看板があるわけではない)」まで来たらストップ、右を向くと、数件の小さな鶏舎が見えるはずです。 この鶏舎に、後記する解説板も設置されています。 ここだ! と喜び勇んで下車。 はい、ちょっとお邪魔しますよ……と進んでいくと、コッココッコと興味津々のトリたちが出てくるではありませんか。 小屋は出入り自由なの? まあいいや、私はね、君たちと遊んでる暇はないんですよ。 で、トップのような、ポカーンと見晴らしのいい田園風景を前にしたわけですが……本当に、アレ、だよな? あの杉です。 一見どこにでもあるような……いや訂正、たいていの神社や植林地には、あれ以上の大きさの杉がどっさりありますよね。 あのスギのどこが特別なのか? 「万年杉」というその名ですが、もうひとつの「不変(かわらず)の杉」という名の方が特徴をよく表しています。 上述の書籍によれば、このスギ、これでなんと推定樹齢500年を超えているのだそうです。 土地の古老からも、「このスギァちっとも見た目が変わらねえズ」とか言われているそうで……。 信じられますか? 図体の大きさにかこつけて「樹齢1000年!」とどんぶり勘定するのとは真逆のアプローチです。 最上、新庄あたりを走っていると、田んぼの真ん中にぽつぽつとスギが孤立している風景に出会いますが、にしても、その凡スギのどれもがこの「万年杉」よりも大きい。 もし事実だとすれば、何か特殊なDNA変異でも起きているのか……? あるいは単に、古老代々の法螺話にすぎないのか……? 信じるか信じないかはあなた次第です。 ええ、まあ。今のところ。 根本から湾曲して立ち上がっていて、ちょっとおもしろい躍動感がありますね。 主幹といえど巨杉の大枝ほどしかないのですが、樹勢は良さそう。 かつては根本から清水が湧いていて、旅人が喉を潤したといい(今は細い水路があり、確かにスギの下を通っているように見える)、また、鋸を当てると血を流し、切れなかったという言い伝えもあるらしい。 そう思って見ているからなのか、巨樹としてのオーラは無いながらも、特有の雰囲気があるようにも感じます。 ……が、いつ背後から、 「おーい、いったい何見てるんだ? 有名なスギなら反対側だぞ!」 とか、指摘の声が飛んできても全く不思議じゃないなと。苦笑 「都市伝説の実在」とまでは言いませんが、田舎風景の中にある不思議をひとつ、自分の足で確かめることができた。 そんな達成感に満たされました。 「万年杉(不変の杉)」 山形県最上郡舟形町長者原 推定樹齢:500年以上 樹種:スギ 樹高:8メートル程度 幹周:2メートル程度 訪問:2023.9 探訪メモ: 2023.9現在、Googlemapにはポイントされていません。 駐車場もありません。 路肩に停める、もしくは、数十メートル行くとチェーン脱着場のような広い個所があります。 鶏舎のこともあるので、土地の方がいらしたらご挨拶を。 関連
to-fu 2023年9月30日 at 1:04 AM 返信 うーん、500年。500年… ああ、これはきっと理屈じゃないんだろうな。しかしそんなことが事実としてあり得るのだろうか。 邪魔だろうにハッタリだけでこの農耕地ど真ん中にいつまでも仁王立ちしていられるとも思えませんし、謎です。 実際見てやろうと思った狛さんの気持ちがよく分かりますよ。 私もやっぱり自分の目で見定めてやる!って気持ちになりましたもの。 あちらの記事のイタヤカエデも(も、なのか?)実に立派ですね。 私が毎年京北の山奥で眺めているのが恐らくイタヤカエデで、控えめなイロハモミジと違って もうペンキをぶちまけたくらい派手に色付いてくれる様が「わざわざ紅葉見に来たぜ!」という気分に させてくれるのが気に入っています。志津のイタヤカエデはぜひとも眺めてみたい。 又兵衛桜ではありませんが、これさえ見ておけばもう今年の紅葉は満足だ!という気分にさせてくれそうです。
狛 2023年9月30日 at 11:21 AM 返信 to-fuさん> 「万年杉」に巨樹の圧倒感を得られないのは明らかでしたけども、それでも現地に行かずにはいられませんでした。 ドカーンと存在している巨樹の場合、伝説の偉人の手植えとか樹齢2000年とかでもなんとなく鵜呑みにされてますが、それとはまた違った手触りの不可思議さがありますね。 神話と民話の違い、もっと俗的な謎。 探偵活動して証拠を集めていったら、いったいどうなるのか……この「含み」を味わえる受け手でいたいなと思わせてくれる存在です。 「志津のイタヤカエデ」、これも幹周囲だけ頼りにすると埋もれる存在ですが、このレベルのカエデはほんと貴重なはずです。 えっ、幹だって傷んでないじゃん! と、実物を前にして、良い樹だなあと感心しました。 秋が深まれば、おそらく多少距離を置いた位置からでも目立つと思いますね。 いかにも北国の秋という絵で……その光景も見たくなってきましたね。 すべてのカエデ属巨樹やサクラ巨樹のピークを押さえるのはムリ、それだけが意味じゃないよね、とはいえど。
2件のコメント
to-fu
うーん、500年。500年…
ああ、これはきっと理屈じゃないんだろうな。しかしそんなことが事実としてあり得るのだろうか。
邪魔だろうにハッタリだけでこの農耕地ど真ん中にいつまでも仁王立ちしていられるとも思えませんし、謎です。
実際見てやろうと思った狛さんの気持ちがよく分かりますよ。
私もやっぱり自分の目で見定めてやる!って気持ちになりましたもの。
あちらの記事のイタヤカエデも(も、なのか?)実に立派ですね。
私が毎年京北の山奥で眺めているのが恐らくイタヤカエデで、控えめなイロハモミジと違って
もうペンキをぶちまけたくらい派手に色付いてくれる様が「わざわざ紅葉見に来たぜ!」という気分に
させてくれるのが気に入っています。志津のイタヤカエデはぜひとも眺めてみたい。
又兵衛桜ではありませんが、これさえ見ておけばもう今年の紅葉は満足だ!という気分にさせてくれそうです。
狛
to-fuさん>
「万年杉」に巨樹の圧倒感を得られないのは明らかでしたけども、それでも現地に行かずにはいられませんでした。
ドカーンと存在している巨樹の場合、伝説の偉人の手植えとか樹齢2000年とかでもなんとなく鵜呑みにされてますが、それとはまた違った手触りの不可思議さがありますね。
神話と民話の違い、もっと俗的な謎。
探偵活動して証拠を集めていったら、いったいどうなるのか……この「含み」を味わえる受け手でいたいなと思わせてくれる存在です。
「志津のイタヤカエデ」、これも幹周囲だけ頼りにすると埋もれる存在ですが、このレベルのカエデはほんと貴重なはずです。
えっ、幹だって傷んでないじゃん! と、実物を前にして、良い樹だなあと感心しました。
秋が深まれば、おそらく多少距離を置いた位置からでも目立つと思いますね。
いかにも北国の秋という絵で……その光景も見たくなってきましたね。
すべてのカエデ属巨樹やサクラ巨樹のピークを押さえるのはムリ、それだけが意味じゃないよね、とはいえど。