巨樹たち

岩手県一関市「堤下のサイカチ」

最高の木陰と新緑をあなたに

  一関市サイカチ巡り、「赤荻のサイカチ」に続くのは、立地も謂れも良く似ている「堤下のサイカチ」
 「堤下」は屋号だそうで、やはり旧家の所有だったことが伺えます。
 と同時に、当時の人のサイカチに対する信頼の篤さを感じました。
 とりあえずサイカチがなくては始まらない、なくっちゃ困る! みたいな。

 そのサイカチ、豆がとても硬く、サイカチマメゾウムシに穴をあけてもらわない限り、土に埋めても絶対に発芽しない。
 ……という、文字通りの豆知識も書いておきましょう。

 ええ、さて、こちら「堤下のサイカチ」にも、やはり道端、下車徒歩0分で出会うことができます。
 路肩が落ち込んだ先が田んぼになっていて、日当たりの良いそちら側に枝を茂らせている。
 もっとも、道側は人為的に剪定されるのかもしれませんね。

 「赤荻のサイカチ」でもまず感じたことですが、やはりこの時期のサイカチ、明るい緑色の樹冠が大変美しい。
 他の落葉高木と比べたとしても、特筆すべきみずみずしさと爽やかさ。
 春にサクラを見に行くように、夏にはサイカチを見に行きたくなりそうです。

 それなのに、主幹は派手に朽ち、洞穴のようなウロが口を開けて向こう側が覗ける有様。
 幹周5メートル近くあるので、この大ウロも小学生が入れそうな大きさです。
 事実、「遊んではいけません」みたいな立札(撮るのを失念)があるも、もはやそれ自体ウロの中に倒れている……。

 しかし、ほんの少し視線を上げるだけで、やっぱり樹冠の勢いの良さに不安が吹き飛ばされてしまう。
 このギャップ。つくづく面白い樹種です。

 前述「赤萩」と比べると、このサイカチの方が幹も樹冠も一回り以上大きい。
 斜面方向へと引っ張られつつ太さを増したことが読み取れます。
 ひび割れた樹皮から質感の異なる新たな枝を伸ばしていたり、どこを見ても「樹勢は良好、むしろ旺盛」と書きたくなる。
 もちろんこれは、巨樹を見る上でとても嬉しいことですね。

 直射日光、青空、田園風景。
 この季節のすべてに素晴らしくマッチしている、とても感じの良い大樹です。
 清々しいこの木陰は、歩きの旅人にとって、これ以上ない休憩場所となってくれるでしょう。

「堤下のサイカチ」
 岩手県一関市花泉町金沢孫六
 推定樹齢:不明
 樹種:サイカチ
 樹高:18メートル
 幹周:4.8メートル

 市指定天然記念物
 訪問:2023.6

探訪メモ:
 やはり路肩駐車。
 邪魔にならない位置に停めるのはもちろん、カーブが近いので、観察中の事故にも十分お気をつけください。

 ダメ押しで豆知識を重ねると、サイカチマメゾウムシはゾウムシではなく、ハムシの仲間だそう。
 この幼虫がむちゃくちゃ硬いサイカチの種に穴をあけた段階で浸水すると、虫は溺死し、サイカチは発芽する。
 自然って複雑にできてるんですね……と、ここで感心するのはまだ早い。
 近年、サイカチマメゾウムシが新種のアンチエイジング物質を作り出すことが明らかになったそうですよ。

「一関市サイカチ巡り」

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