巨樹たち 徳島県阿波市「野神の大センダン」 / 0件のコメント 日本第1位の大センダン 2019年5月、四国での巨樹探訪旅。 巨樹と写真の同志であるto-fuさん、RYO-JIさんと合流する前半日、徳島で単独行動した際、訪ねた巨樹です。 街中にあり、しかも国指定天然記念物。 それ以上にセンダン(栴檀)という未見の樹種に興味を惹かれました。「野神(のがみ)の大センダン」です。 国指定天然記念物のセンダンは、この樹と香川県「琴平町の大センダン」のみ。 リサーチはそこまでで、あとは行ってみるのみ。まあ、いつものことです。笑 所在地近くの公民館に束の間車を置かせて頂きました。 一応探しましたが、どなたもいらっしゃいませんで……しかし、天然記念物見学に協力してくれない公民館なんてないし(断言)、これまでも公民館の人たちは良い人ばかりだったのです!(断言) 阿波市立久勝小学校の裏手、幼稚園との間の道を進んでいくと、その奥、大きな樹影に気付きます。 背はそれほど高くはないものの、存在感の大きさに振り向く。そんな感じ。 ちょっと意外なことに白いモコモコがついています。 花? センダンって、あんな花が咲くんだ! 時期の幸運に、思わず駆け寄ってしまいました。 品のある、ほのかに甘い香りが風に乗って漂ってきます。これがセンダンの花か! 葉ですらじっくり見るのは初めてですが、緑がフレッシュで好印象。 実もなるそうですが、サポニンが多いため食べると中毒を起こす。サポニンといえばサイカチの豆の鞘に多く、天然の石鹸になる成分ですね。 センダンの実や葉は薬効でも知られており、最近、インフルエンザに有効な成分も見つかったそうですよ。 花や葉から入るという、珍しいパターンでしたが、「野神の大センダン」の幹周は8メートル弱もあり、なるほど日本最大だと唸らせます。 しかし、大枝はもはや左右に2本しか残されていない。 「樹冠」とは呼べなくなりつつあり、もう後が無いという感じ……。 長く生きるうちに様々な苦難がふりかかったのでしょう。 幹が損傷し、根元の土が流れ、今や根幹部はほとんど中空状態。 残された大枝の太さはかなりのものですが、樹皮が剥がれ落ちはじめており、補強やウレタン系の充填なしでは、たちまち失われてしまいそうです。 反対側にも大きな枝が付いていた痕があるので、かつては広い面積を覆う、傘のような樹形だったのではないでしょうか。 背が低いのも、早い段階で落雷か強風で幹折れを経験してしまったのかも。 失われた部分が多すぎ、想像で補うのも難しい感じを受けました。 とは言え、人間の施す「医術」にも相当な効き目があると見え、新しい枝を育もうとしているのがわかります。 このタイミングで来ることができてよかった。この巨樹の生命力が最大限に発露された姿を見られたわけですから。 現在進行形で整備が進んでおり、裏手には公園のようなスペースが作られています。 この樹を中心とした憩いのスペースのような構想でしょうか。 すぐ横の車道は仕方ないでしょうが、それでも自治体はこの樹のことを考えているんだなと感じました。 (「駐車場がない」とかでグーグルのレビューで⭐︎1ついてますが……汗 いや、この際レビューが低い方がそっとしておいてもらえていいかも) 石碑には昭和38年の日付。この頃から根元は空洞だったと書かれていますが、「一見名盆栽の観を呈する」などともあります。 剣(つるぎ)山に登る修験者の目印だったとも書かれていますね。 樹勢の衰えがあるのも確かですが、ここもサイカチ巨樹に似て、ボロボロになりながらも長生きする樹種かもしれない。そう後から回想しました。 「栴檀は双葉より芳し」ということわざから、「優れたものは幼少時から優れている」とし、小学校などに好んで植えられるそうです。 ……が、しかし、この場合の「栴檀」は中国でいう香木「白檀」のことで、この巨樹の樹種・センダンとは別種なので、ご注意。(このセンダンの双葉を嗅いでも、良い匂いはしない。多分) センダンをビャクダンと混同する。また、ビャクダンとビャクシンを混同し、センダンとビャクシンが間違われる……なんてことも実際ある事例で、とてもややこしい。 こうして実際に花まで見ることができたのは、良い経験でした。 この後、徳島・高知の行く先々でセンダンの花を見かけ、その度に「野神の大センダン」を思い返しました。 劇的な回復は見込めないかもしれませんが、まだ何度でも、いい匂いの花を咲かせてほしいものです。 「野神の大センダン」 徳島県阿波市阿波町野神 推定樹齢:300年 樹種:センダン 樹高:11メートル 幹周:7.85メートル 国指定天然記念物 訪問:2019.5 探訪メモ: 街中であり、特定の駐車場はありません。 小学校、幼稚園があるので、車で近寄るのは危険かも。 上記のように公民館に停めさせてもらいましたが、できれば一言ご挨拶のほどを。 環境省巨樹データベースで樹種「センダン」、「幹周大順」を検索すると、この樹がトップにきます。 そこでの幹周囲寸法は810センチ。他が600センチ台なこともあり、現状で「日本最大のセンダン」ということになるのでしょう。 関連