巨樹たち 徳島県阿波市「野神の大センダン」 / 0件のコメント 日本第1位の大センダン 2019年5月、四国での巨樹探訪旅。 2020年は最も良い季節をコロナに取られましたが、自粛の最中、何度も去年の遠征のことを思い出していました。 巨樹と写真の同志であるto-fuさん、RYO-JIさんと合流し、徳島〜高知を訪ね歩いた旅ですが、合流する前半日は単独行動しました。 街中から近く、上陸後の残り時間でも訪問が容易い。 しかも国指定天然記念物の巨樹で、それ以上にセンダン(栴檀)という未見の樹種に興味を惹かれました。 それが「野神の大センダン」です。 国指定天然記念物のセンダンは、この樹と香川県「琴平町の大センダン」だけということもあり、GoogleMapにもしっかり載っています。 行ってみるしか! とだけ決め、どんな巨樹なのか、ほとんど調べませんでしたが。まあ、いつものことです。笑 所在地近くの公民館に束の間車を置かせて頂きました。 一応探しましたが、どなたもいらっしゃいませんで……しかし、天然記念物見学に協力してくれない公民館なんてないし(断言)、これまでも公民館の人たちは良い人ばかりだったのです!(断言) 阿波市立久勝小学校の裏手、幼稚園との間の道を進んでいくと、その奥、大きな樹影に気付きます。 あれだ……とさらに進むわけですが、ちょっと意外なことに白いモコモコがついています。 ……花? センダンって、あんな花が咲くんだ! 時期の幸運に、思わず駆け寄ってしまいました。 品のある、ほのかに甘い香りが風に乗って漂ってきます。 これがセンダンの花、そして葉も。じっくり見るのは初めてですが、緑がフレッシュで好印象です。 実もなるそうですが、サポニンが多いため食べると中毒を起こす。 サポニンといえばサイカチの豆の鞘に多く、天然の石鹸になる成分ですね。 センダンの実や葉は薬効でも知られており、最近、インフルエンザに有効な成分も見つかったそうですよ。 花や葉から入るという、珍しいパターンでしたが、「野神の大センダン」の幹周は8メートル弱もあり、なるほど日本最大だと唸らせます。 しかし、もはや大枝は左右に2本しか残されていない。 枝や葉は樹冠と呼べなくなりつつあり、もう後が無いという感じ……。 長く生きるうちに様々な苦難がふりかかったのでしょう、幹が損傷し、根元の土が流れ……今や根幹部はほとんど中空状態。 残された大枝の太さもかなりのものですが、樹皮が剥がれ落ちはじめており、補強やウレタン系の充填なしでは、たちまち失われてしまいそうです……。 反対側にも大きな枝が付いていた痕があるので、元は広い面積を覆う、傘のような樹形だったのではないでしょうか。 上背が高かったように思えないところ、早い段階で落雷か強風で幹折れを経験してしまったのかも。 とにかく失われたものが多すぎる樹で、想像で補うのも難しい感じを受けました。 反対側から。 とは言え、人間の施す「医術」にも相当な効き目があると見え、新しい枝を育んでいるのがわかります。 このタイミングで来ることができてよかった。 この巨樹が握る生命力が最大限に発露された姿を見られたわけですから。 現在進行形で整備が進んでおり、裏手には公園のようなスペースが作られています。 この樹を中心とした憩いのスペースのような構想でしょうか。 道路側はどうにもならないでしょうが、自治体はこの樹のことを考えているんだなと感じました。 (「駐車場がない」とかでグーグルのレビューで⭐︎1ついてますが……汗 ……いや、この際レビューが低い方がそっとしておいてもらえていいかも) 新旧解説。石碑には昭和38年の日付。 この頃から根元は空洞だったと書かれていますが、「一見名盆栽の観を呈する」などともあります。 その後、樹勢が失われていったのでしょう。 剣(つるぎ)山に登る修験者の目印だったとも書かれていますね。 「栴檀は双葉より芳し」ということわざから、「優れたものは幼少時から優れている」とし、小学校などに好んで植えられるそうです。 ……が、しかし。 この場合の「栴檀」は中国でいう香木「白檀」のことで、この巨樹の樹種・センダンとは別種のものなので、ご注意。(このセンダンの双葉を嗅いでも、良い匂いはしない。多分) センダンをビャクダンと混同する。また、ビャクダンとビャクシンを混同し、センダンとビャクシンが間違われる……なんてことも実際ある事例で、とてもややこしい。 こうして実際に花まで見ることができたのは、すごくいい経験でした。 この後、徳島を走り回りましたが、行く先々でセンダンの花を見かけ、わりと多く自生しているんだな……と、その度にこの巨樹を思い返しました。 劇的な回復は見込めないかもしれませんが、また何度も、いい匂いの花を咲かせてほしいものです。 「野神の大センダン」 徳島県阿波市阿波町野神 推定樹齢:300年 樹種:センダン 樹高:11メートル 幹周:7.85メートル 国指定天然記念物 訪問:2019.5 探訪メモ: 街中であり、特定の駐車場はありません。 小学校、幼稚園があるので、車で近寄るのは危険かも。 上記のように公民館に停めさせてもらいましたが、できれば一言ご挨拶のほどを。 環境省巨樹データベースで樹種「センダン」、「幹周大順」を検索すると、この樹がトップにきます。 そこでの幹周囲寸法は810センチ。 他が600センチ台なこともあり、現状で「日本最大のセンダン」ということになるのでしょう。