
徳島・高知 四国巨樹探訪旅1
東京港〜四国上陸(徳島)


昨年5月に福井県、兵庫県方面の巨樹探訪旅を成功させたことに味を占め、同志のto-fuさん、RYO-JIさんと再びの集結を約束しました。
今度の探訪先は……と考えに考えたすえ(というのは嘘で、一発で決まったんですが)、これはもう四国しかない! 行けるうち行っとけ、そういうことに決まりました。
日程は、1年前とほぼ同じ、長大なる黄金週間のほとぼりが冷めた5月21日から。
自分のクルマで巡るラクさと楽しさのため、19日東京港出港のフェリーで徳島を目指すことに。少し退屈な18時間の船旅が始まります。
今回乗るフェリー「りつりん」に食堂はなく、自分で食料を持ち込むか、レトルトを自販機で買ってしのぐタイプ。
北海道方面行きの「さんふらわあ」はもっとラグジュアリーで食堂(高級)メインなしつらえですが、個人的にはこっちの気兼ねないスタイルの方が好きです。日清さえあればなんとかなる。
18時間で徳島、さらに1日乗っていると九州の門司。
そのルートも経験済みですが、船内での2日間は結構しんどいものがあります。
結局のところ、フェリー旅が楽しいのも最初の1回だけかも……。


どちらかというと車がメインの乗客様。我が城はこの二等。ここも結局「さんふらわあ」よりも好きな点です。
「さんふらわあ」は新しくて立派だけど、船内格差社会がすごいんですよね……二等船室は大部屋で雑魚寝なんですもん。
お部屋を取らない民はもはや貨物と認識されてる(それは言い過ぎ、カーテンはあります)。
18時に出航。すぐに暗い海と白い波しか見えなくなるので、我が城ボックスにシーツなどを整えます。
読書灯とコンセント以外はこれと言って何もないですが、盗難の不安のない荷物を散らかしておけるのはやっぱり楽です。
ネットも携帯も圏外になるので、ラウンジでノートPCで非接続の作業をするか、地図や文庫を読むのがもっぱら。
毎回思いますが、出航して30分でラウドないびきをかいて爆睡してるおっさん、いったい何者なのでしょう。
連休後で乗船人数は多くなく、焦る必要もない。
楽しみのひとつであるおふろに行きました。フェリーのお風呂、なかなかいいんですよ。
なんてったってフェリーは海に浮かぶ巨大なボイラー。
海が荒いと、だっぱんだっぱん、同じようにお風呂も波立つ、溺れそうになるのもまた風情(この時は誰もいませんでした)。
その後、またラウンジでしばらく作業し、飽きてカプセル部屋で本を読み……すると、アナウンス。
どうやら本船は九州・四国地方を直撃している強烈低気圧に突っ込むらしく、強い揺れが予想されるとのこと。
大丈夫か? 寝られるか? 船酔いが残って冒険できなくなるのは避けたい……
なんて思ってるうち、いつの間にか寝入っていました。
アイマスクと耳栓があれば、どうにかなるもんです。


翌朝。朝5時に起床。
昨晩はチンするごはんと鯖缶を持ち込んだんですが、原産国:タイめ、味噌煮の意味を理解してないな……。
2個買ってしまったので、持て余す……と、旅中、ずっとそのことで頭がいっぱいだったんですが、復路、ラウンジで無料でもらえるマヨネーズと七味をぶっかけたら、なかなかいける味に! こうすると、ごはんにあいますよ!(いらない知識)
コーヒーと、うれしい時に食べるアイス・チョコモナカジャンボを食べつつ、四国に思いを馳せる。
フェリーが徳島港に着岸するともう13時。
すでに大冒険はできない時刻なので徳島市をスナップして歩いてみようか、などとぼんやり考えるも、天候は荒れ模様。
四国=巨樹巡り=お遍路=弘法大師様というごく自然な思考に至り、ならばこの際、ゆかりのお寺をひとつくらい訪れるも良い記念になる、と発心しました。
陸地が近づいてきて、にわかにつながる4G。検索してみると徳島港から30分程度のところに四国八十八か所の霊場第一番目というお寺「霊山寺(りょうぜんじ)」があると知りました。
これはナイス! これから四国を巡る身としては幸先良い。
というか、なぜ最初からそれを思い立たなかった?
向かう先が決まるとほっとします。きっとお大師様もかつてそうだったに違いない。
霊山寺で壮大なる88の着想を得て、ほっとしながらちょこもなか(当時はまだジャンボじゃない)を食べたに違いない。
ちょこもなかを食べる時に杖をぶっ刺したら、それがみるみる巨樹になって。
「ああ、これ? なんでか、すぐでっかくなっちゃうんじゃよね 笑」
……妄想している間に着岸。こんにちは、四国。
ほんのちょっと、2/88お遍路をする

徳島港からしばし走り、四国八十八箇所の第一番、「霊山寺(りょうぜんじ)」に到着。
四国八十八ヶ所霊場の全行程はおよそ1460キロ、365里におよぶといい、その第一番目がここです。
お遍路さんは全員、ここからスタートを切るのです。
発心の地、第一番であるので、いわばお遍路スターター・グッズがなんでも揃っている。
訪れた霊場で収めるための札や、お大師様の分身であるといわれる杖など……ここからあの「同行二人」の旅が始まるのです。
お寺の数カ所に写真のようなお遍路マネキン氏が立っていてびっくりしますが、そう考えてみると、別にふざけて置いてあるわけではなく、お遍路さんのオーソドックスなコーディネートを示したもの。
ここでグッズが揃うよ! という文字通りのマネキンです。
本堂に手を合わせ、お守りのひとつも入手したい。そう思ってここへ来ました。
お遍路さんにはとても及ばないが、険しい道を進むであろう我々の四国巨樹探訪の無事を願うばかりです。


寺内には複数のお堂があり、宝塔は高野山で見たものと形がよく似ていました。
戦乱や火災で再建されつつ、歴史を引き継いで存在している「別格本山」とのことです。
「……仏法を説く一老師をたくさんの僧侶が取り囲み、熱心に耳を傾けている霊感を得た。
大師は、その光景が天竺(インド)の霊鷲山で釈迦が説法をしていた情景と似ていると感じとり、インドの霊山を和国(日本)に移す意味で「竺和山・霊山寺」と名づけられた。
このときの念持仏が釈迦誕生仏像であり、本尊の前に納められたことから四国八十八ヶ所の第一番札所とさだめ、霊場の開設・成就を祈願されたと伝えられる。(HPより)」
しみじみと信仰の風景と空気を味わっていると、お寺の方に声をかけて頂きました。
上下のカッパを着込んで荷物を背負って……という格好だったので、お遍路さんだと勘違いされたようです。
心を込めてお参りでき、明日からの旅本番を控えて、とてもスッキリしたいい気分になれました。

少し離れたところに2番目「極楽寺」があります。本尊は弥勒菩薩。
お大師様お手植えだという「長命杉」を見ることができます。
幹周囲目通り5メートルくらいあるなかなかの杉ですが、さすがに弘法大師お手植えというのはオーバーです。
それでも、この杉があることで場内の空気が一段、霊威を増しているように感じる。
信仰心との共鳴現象のようなものなのかなと感じるところがありました。
幹を巻く紅白の紐が長く伸びており、その端を触ることでご利益霊験を得ることができるということのようです。
雨の中でも何組もの方々が訪ねてこられて、この紐を握っていきます。
長命杉を見たことで巨樹への探究心が刺激されました。
もう一箇所くらい今日中に行ける巨樹はないかと手っ取り早くリサーチすると、ありました。
関東ではあまりお目にかかれないセンダンの巨樹、「野神の大センダン」。さっそく行ってみました。
すでに勢い旺盛とは言えない老樹ではありますが、思いがけず花が満開の季節。とても綺麗で良い匂いを漂わせ、印象に残りました。
道すがら眺める山の風景にも、センダンの花があちこちで主張していました。
徳島県美馬市でさまよってビバーク

しばらく西に走り、徳島県美馬市にやってきました。
15時になろうとしていましたが、実はお昼ご飯にありつけていません。
フェリー旅の貧弱な食事事情も影響しており、しっかり食べておきたいんですが、いかんせんお店がない。14時すぎて休憩に入っていたり……。
探しつつ走って来てしまったら、もうすっかり山深くなってしまい、ますます飢えます。
道の駅・貞光ゆうゆう館というところに停車。
晩御飯も食べられるレストランが併設されてるということで期待したんですが、行った瞬間(それは言い過ぎ)クローズになっちゃって、とほほでした。かなしくなって、川沿いをとぼとぼ歩きました。

でっかく「巨 樹 の 里」と掲げている通り、ここから南下すると、秘境・つるぎ町。要するに明日の巨樹探訪のメインです。
これだけ大々的に巨樹そのものを観光資源として打ち出している自治体も珍しいと思います。
さて、どんなものか……楽しみだけど、はらがへった。
結局どうにもならず、コンビニでお弁当を食べました。
少し行ったらスーパーがあって、ああちくしょう、と割引シールを睨んで思うわけですが。
とりあえず明日の朝ごはんも仕入れることができました。牛乳、チーズ、オレンジジュース、おにぎりとか。
さて、日が落ちて来たことですし、お風呂に行きます。
今日はもう少し進んだところにある温泉で……と、そこまで行ってみると山中のキャンプ場併設みたいな雰囲気。
いや、それよりも、あのでっかい、おそろしい看板……「月曜定休日」?
何という凡ミス! フェリー生活の単調さゆえか、今日が月曜であることを完全失念!
頭をかかえ、無意味に駐車場で車を旋回させて輪を描きました。
すでに19時……入れる風呂があるのか? 入り、入る、入れないと車中泊でどれだけ困るか……ごはんも食べられない、お風呂も入れない……そんなのって、

フウーイ。
真っ暗闇の中、香川県に向けて30分ほど山登りしたところ、ギリギリ営業時間内の温泉施設を見つけました(エピアみかど)。
出て来た時には、すでに看板が営業終了になっていました。危なかった。ゆったり入れて、とてもいいお風呂でした。
大粒の雨が降る中、くねくね山を巻く438号を再び美馬市内まで下って行きます。
もはやフォグランプもつけないと暗くておっかない。
途中で見下ろした、冷たいような暖かいような街の明かり。
ほーほー、ぎゃーぎゃー、みたいな変な鳥の声、雨音、湯上りの暑さなど、色々な要素が合わさって印象的に残りました。

その後、道の駅・みまの里にて車中泊。
意外と市街地にある道の駅で、目の前がでっかいパチンコ屋(うるさくないけど)。淡々と寝床を作ります。
新しく買った小さいランタンが想像以上に明るく、読書しても疲れない。USB扇風機も一緒に動かせる。
……なんて、小さなことで喜びながら静かな夜を過ごしました。
例の強烈低気圧のため、遅くなるにかけて結構な土砂降りに。
念の為、自分が浸水しやすい地形にいないかをチェックしたり、運転席には物を置かないようにしました。
それより明日、険しいとウワサのつるぎ町の道が、土砂崩れしてないといいなと……。
(つづきます)

