旅 2017年・九州~関東 巨樹旅5 / 0件のコメント 〇11日目 宿最高! まさに寝るために存在している、このベッド……(読者のみなさまが時間の無駄だと感じる文章を書いてはいけない)。 にこにこしながらチェックアウトし、朝から再び高山市を流してお土産を買ったりしました。良い天気で気分もすこぶるいい。 すっかり汚れてしまった、けれど頼もしい旅の脚、フォレスターのエンジンをかけました。 今日の行程は、岐阜県を大胆に南下しつつ巨樹たちを拝み、長野に至ります。 この両県は大変に広大。岐阜県の面積10620平方キロメートル、長野県は13560平方キロメートル。 それに比べると茨城県は6096、京都府4613、東京都は2188平方キロメートルしかない。 それに、恐ろしいことに長野県は、岐阜、愛知、静岡、山梨、埼玉、群馬、富山、新潟と境を接しており、県別ジグソーパズルで長野県を無くしてしまうと、もう、どうにも(どうでもいい)。 いろんなものを見たい。たくさんあるに違いない。 しかし欲張るとキリがなさそうだ。相手が大きすぎる。 岐阜県をどんどん南下し、小坂町坂下というところに到達。 「さかした」と書いて「さこれ」と読む難読地名で、初見では200%読めないので、歩道橋などにはカタカナで書いてある(宮城の「愛子=あやし」レベル)。 「坂下の十二本ヒノキ」 「坂下のケヤキ」 ここではインパクト勝負な多頭樹「坂下の十二本ヒノキ」に出会いました。 巨樹とはすなわち異形である……そう体現するような存在。 ひと目見ただけで唯一無二だとわかる姿は、前に立てた幸運を実感させてくれます。 「坂下のケヤキ」もセットでお忘れなく。 さらに進み、温泉で有名な下呂市に入る。 経験上、ご飯をたっぷり食べたければ市街地にいるうちに行動せよ、です。 しかも京都にてto-fuさんより、「岐阜のけいちゃん焼き、あれは実際うまい……」とのリアリティ情報まで得ていました。 迷わずご当地名物でGO。 自分で焼いてください、紙を破らず、焦がさないために常におはしで転がしてね。 ライブ感! そして、これはうまい! しょっぱいタレがいい感じで、どんどんご飯が進みます。 店内に飢えたお客さんもどんどん増えてきましたが、こちらはダメ押しの麺投入。 大盛り!笑 たんと食べてカロリーチャージ。 「加子母の杉」 腹ごなしに街道を走行して、中津川市。 「加子母の大杉」を見に行きました。 かなり遠くからでも一目瞭然、とんでもない太さの、恐竜のような一本杉。 「巨樹」と、どでかく習字で書きたくなるような……むしろもう数百年前から書いて額に掲げてあるような存在感。 集落を抜け、距離を稼いでいく。景色はやがて山がちになり……いつしか長野県に入ったようです。 我がルートは巨樹に向いており、阿智村へと突き進む。 山が深まるにつれ、気温も明らかに下がっていきます。 「小黒川のミズナラ」は、ミズナラで唯一の国指定天然記念物だけあり、複数の案内看板が見られました。 「小黒川のミズナラ」 このミズナラへの訪問は、自分としても念願叶ったというものでしたが、正直、ここまでダメージを受けているとは知りませんでした。 しかし、葉のボリュームはあり、成長が早く切っても生えてくるとも言われるミズナラ、その生命力に期待を持ち続けたいところです。 ミズナラの姿にショックを受けたか、物思いに耽りがちな季節でもあるのか。 ……この旅の終わりが予感され始めてきたということなのか。 日暮れの群青にヘッドライトが灯る頃合い、「この旅とは、一体何だったのだろう?」とぼんやり考えました。 そもそも、「旅」と「旅行」はどう違う? そこにヒントがあるような気もする。 自分としては、何かを探し歩くのが「旅」であると思う。それならば、この旅では何を求め、何を探しただろう? とにかく毎日いっぱい走り回って、巨樹はたくさん見たけれども。 次から次へと、とにかく「進む」ということこそがテーマだったのか。 新しいものを見て、行ったことのないところへ自分の足で突き進むことこそが目的だったのかもしれません。 〇12日目(最終日) 再び終日強い雨の予報。 今日はどうするんだろう。 実は旅前から昔の仕事仲間と連絡しあっていて、訪ねつつ神奈川の巨樹を……とも考えていたのですが。 数日前、「結局都合つかず」との旨、メールが来ていました。 長野は広いが、道は限られる。進んでいけばやがて関東に至る。 何事につけても、区切りのようなものが頭をよぎるようになってきました。 「先に進む」こと自体が目的の旅だとしたら、もうそれなりに「進んだ」のだと、内なる自分が実感したのかも。 出発当時は日数すらいい加減な旅でしたが……どうやら、僕は帰るようです。 相変わらず、運転席に座ると家に戻ってきたような気分になる。 九州上陸からこの方、文字通りこの車内を部屋代わりにしていたし、お土産もデータも想い出もいっぱい積んでいるから。 そんなおかしな感覚も今日でおしまいか……。 もう少しお土産を買おうかな(すでに買いすぎという話も)と、「お菓子の里 飯田城」に寄る。 妙に熱心に開店待ちしたような状況に(偶然)なってしまい、試食どうですかのおもてなしを一身に受ける。 産地ということもあって、りんごのお菓子やジュースが多いけど、地元ならでは、面白くてうまかったのが「赤飯饅頭」です。 饅頭の中に赤飯がくるんであるなんてカーボン・マトリョーシカですが、うまい。家族にはウケてすぐ売り切れました。 雨の中山奥へ向けて走行し、根羽村というところへ。 都市部からはどこも離れており、やや自虐的にか「ネバーランド」なんて看板までありましたね。笑 しかし、山深ければ巨樹強し。どうしても見たい樹のひとつ「月瀬の大杉」はここにあります。 石徹白と同程度、海抜1000メートルを超える標高があり、道は良いものの果てしない登坂が続く。距離以上に「遠さ」を感じる土地です。 月瀬集落に到着。 迷うことはなかった……といえど、「大杉公園」がこんなに立派だとは。一瞬、大杉の身を案じましたが、結果的には善意を感じることができ、良いところでした。 いっそう雨が強くなってきたので、カッパ上下を着込みむ。 傘は無用、代わりに三脚。最終日くらい三脚重視で撮影しよう。 「月瀬の大杉」 いくつもの巨樹に出会い、それぞれの印象を受け取ったこの旅。 「月瀬の大杉」ならばこそ、見事な形でこの旅を締めくくってくれるな……と、撮りながら思いました。 すばらしい巨樹ぶりに大満足です。 タオルで水滴を拭き拭きの撮影……が、どうやら家で変な柔軟剤を使ったらしく、拭くほどフィルター面がぬるぬるに! 土砂降りでしたが、保護フィルターを取り外し、濡れきる前に撮った大杉との最後のショットが、自分としては一番満足な写真になりました。 カメラ(PENTAX K-1)も、ご苦労様だった。 ずぶ濡れになること四度、五度……ひとつもトラブル起こさず即応してくれて、かなり良いカメラだと思うよ。 この大雨にも関わらず、見物しにくる方が後を絶たない。 大概の方が短時間で帰っていくので、会釈くらいはして、お帰りになられるのを待つことにしています。 むやみに話しかけてその人の思考を邪魔してもいけないとも思う。目の前の巨樹から、それぞれ、いろんなものを感じ取ってほしいです。 自分はというと、「長旅がこれで終わる」という実感もあったのでしょうが、大杉と離れ難く、大雨の中、随分その場に長居してしまいました。 ありがとう、また来ます。 そう大杉に告げて車に戻ってくると、ふーっと、これまで体験したことのない疲労、満足感が身に満ちました。 余韻の中、無言で放心。 曇ったウィンドウの向こう、観光バスが入ってきて、ご団体が大杉を見に降りていく。良いタイミングで杉と相対することができた……と思いました。1対1だったもんね。 やはり日本は森の国、樹の国なのだと再確認します。 日本人は基本的潜在的に樹が好きで、関心がある。一応は名所として見に来る。 その意識をもっと大切に育てて、日本の未来を形作るための要素に組み込んだら、きっと面白いと思います。 ……さて、そういうわけで。 帰りますか! ナビをセットすれば、460キロメートル:6時間半くらいの帰路。 でも、帰るだけならなんてことはない。あっさり。 渋滞に巻き込まれもしましたが、夕暮れには家に無事たどり着きました。 青……フェリー航路 赤……自走 計12日間、フェリーを経て、九州から関東の端っこまで。 スバル・フォレスターのトリップメーターは、自宅ガレージでサイドを引いた時点で2523キロと表示していました。 行き先は自分の興味だけが知っている……すなわち、自分自身が一番行き先を知らないような……ボリュームだけは存分にある旅。 もう「自分さがしの旅」というほど若くはないですが、何度目かの、そういう種類の旅には違いない。 充電、再発見、再開、模索、迷走、前進。全て経験できた。 それが、旅を終えてからの感想です。 やっぱり、旅はいいもんですねえ。 おわり(長くなりました。お読みいただいたことに感謝いたします。 ) <<<「九州~関東 巨樹旅 4」へ 関連