巨樹たち

宮城県伊具郡「丸森のイチョウ」

宮城県最大のイチョウ

 2018年12月の宮城県巨樹行。
 宮城県の中央を占める仙台市から「苦竹のイチョウ」「称名寺のシイノキ」を巡りつつ南下してきました。

 

 丸森町は福島県相馬市と境を共にする宮城県最南端の町です(※追記)
 森と耕作地が延々と続くような景色の中を走り、古びた小さな丸森町内を抜け、県下最大のイチョウとも言われる「丸森のイチョウ」にたどり着きました。

 地図によれば、この周囲の地名はずばり「丸森町銀杏」。
 まさに古来からこのイチョウを目印にしてきた土地なのでしょう。

 ずば抜けた巨大さの大イチョウはすぐに目に止まりました。
 周囲が開けた田園風景なので、パッと見圧迫感はないのですが、足元の建物との比較が飲み込めてくると、やはり巨樹と形容するしかない。
 お宅のすぐ前(私道?)を通るような形で歩いていき、イチョウへの接近を試みました。

 でかい……明確な単幹形状なのにもかかわらず、地上1.3メートルでの幹周囲は11メートルを超える。
 この数値は、柴田町「雨乞のイチョウ」と肩を並べ、宮城県の全樹種巨樹中トップクラス。

 この時、12月頭の訪問。
 一斉に散ったばかりらしく、まぶしい黄色の葉が敷き詰められた上を歩きました。
 信じ難いほど広範囲が黄色で染められていて、この地を「銀杏」と名付けたくなるのも頷けます。

 裏手へ回ってみました。
 イチョウはイチョウでも、先の仙台市の「苦竹のイチョウ」とは違うタイプ。
 乳柱(気根)はほとんど見られず、その分のエネルギーを萌芽枝(わしゃわしゃした小枝が幹や太枝から直接生える)の発生に注いでいる感じ。

 

 もう、放射状全方向に針金ブラシみたいに。
 空間周波数がものすごいレベルで、撮っていて目眩がしますね。
 葉がある時期に来ると、全体がこんもりした巨大な塊になってしまうでしょう。

 雄株なのでギンナンはつきません。
 このスケールで銀杏爆弾をフル装備されたら、周囲数十メートルには接近できない。 

 全体像が掴みづらいですが、地上5、6メートルあたりで二股に分かれ、「Y」の字をしているようです。
 主幹を失って分岐成長したものでしょうか。それでも衰えを見せず、高く育っています。

 河北新報社「宮城の巨樹・古木」によれば、45メートルという樹高でも宮城県1位の巨樹とのこと。
 つまり、総合的に言って宮城県最大の巨樹と言える存在でしょう。
 実際眺めていると疑いようもない巨体です。

 目印に乏しいこの周辺の標識木であったらしく、霊場巡りの札所でもあった。

 「大空を 覆えるほどの 銀杏の木 / これや大悲の みかげなるらん」

 だいひ【大悲】 ① 衆生の苦しみを救おうとする仏・菩薩の広大な慈悲の心。
 福島に「大悲山の大杉」がありますが、あの「大悲」で、このイチョウの大きさを仏の力の顕れだと讃えているわけです。
 (同名「大悲山の大杉」は京都にもあり、これも府を代表する巨杉。)

 黄葉の最盛期はまさに圧巻でしょう。風が吹けば黄金色の吹雪に包まれるはず。

 去り際に振り返ると、お宅のご主人が屋根に登り、樋などに落ちた落ち葉を掃除しておられました。
 ものすごい量でしょうし、毎日大変さぞ大変だと察します。
 それでもこの巨樹の下で守り続けてくださっている……感謝の意を込めて会釈すると、遠く、返してくれたように見えました。

「丸森のイチョウ」
 宮城県伊具郡丸森町銀杏
 推定樹齢:680年
 樹種:イチョウ
 樹高:45メートル
 幹周:11.6メートル

 県指定天然記念物
 県内樹種(イチョウ)幹周第1位
 (樹高も宮城県1位)

 訪問:2018.12.2

 探訪メモ:
 駐車場なし。
 幸い道幅が広いので、気しつつ路肩に停めさせてもらいました。黄葉シーズンは混みあうかも。

 一般のお宅の敷地を通ることになるので、先に挨拶するべきと思います。
 獣害よけの電気柵もあるので注意。

 丸森町は2019年10月の台風19号における大規模な洪水被害に見舞われ、現在でも復興中の箇所があります。
 被害に遭われた方にはお悔やみと、1日でも早い復興、防災対策の完成をお祈りします。

 この記事の掲載にあたって、丸森町のサイトでハザードマップ(PDF)を確認しました。
 丸森町の洪水被害の範囲を知るとともに、「丸森のイチョウ」がどうやら(ぎりぎり)被災区域から外れているらしいと読めました。
 もっとも、GoogleMapには災害後の新しいレビューもついています。

 例年11月20日頃〜が見頃と思われる黄葉を眺めつつ、秋の物産を買いに丸森を訪ねるのも良いと思っています。

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