巨樹たち

青森県三戸郡「栁沢家のアサダ、カツラ」

君はアサダを知っているか?

 青森県階上町の巨樹ツアー。
 「平のサイカチ、オオバボダイジュ」と個人宅が守っている巨樹を見せて頂きましたが、またもやです。
 そしてこれもまたもや、樹種が異なるという。
 マツ、モミ、サワラ、イチョウ、トチノキ、サイカチ、オオバボダイジュ……これだけ盛ってもまだ別種の巨樹が出てくる。

 ポストアポカリプスの箱舟とすべく世界の何万種という植物の種子を保存している「シードバンク」みたいな施設は有名ですが、この階上町はさしずめ日本の「巨樹バンク」と言っていいのではないか? 
 などと考えていたら、到着です。

 開けた耕作地帯の真ん中といった風景、やはり古くからの農家らしき栁沢家の広い敷地の入り口に、一本、こんもりとした樹冠の樹があります。
 誰ともなく、「へえ……」と感心した声が洩れる。
 これがカツラの巨樹だと知っての感想です。

 「栁沢家のカツラ」。
 そう、ここは沢でも傾斜地でもなく、また巨樹自体も、ひこばえの林立が全くない単幹……カツラの巨樹としてはあまりないタイプですね。
 人の手によってここに植えられ、ある程度の管理を受けてきた姿でしょう。
 材を目的としてお寺に植えるケースはあるようですが(新潟県薬照寺のカツラ」など)、個人宅でもかつて同様に考えたものか?
 もちろん目印としては、現在はっきりと目立って役立っています。

 実は道中でも、これに似た形の準巨樹を見つけました。やはり一目にはカツラだとわからなかったのですが、寒冷な気候が合っているのかも。
 主幹上部は失われて大枝の分岐で樹形を形成していますが、幹周囲6.7メートルともなれば、単幹形状のカツラとしては立派な方ではないでしょうか。

 大きめのウロもありますが、これもカツラのことなので、見ていてあまり心配にはなりません。
 事実、丸い樹冠の物量はとても濃く、黄葉の色づきと、あの甘い香りを想像して嬉しくなってしまうほどでした。
 まあ、10月現在はコヤシ臭が主流でしたけれども。笑

「栁沢家のカツラ」
 青森県三戸郡階上町角柄折柳平
 推定樹齢:不明
 樹種:カツラ
 樹高:23メートル
 幹周:6.72メートル
 
 訪問:2023.10

この旅の様子は「2023年・青森県東部巨樹探訪3」でどうぞ。

 さて、カツラには去り際にもう一度面会するとして、母屋の方へ進みます。
 文字通りお宅の敷地内、玄関前を通過しますので、まさにガイドとアポが必要な探訪。
 ご主人が出てきて下さり、にこやかにご挨拶を頂きました。犬もいました(かわいい)。

 カツラにもましてユニークなその巨樹は、母屋の裏手の木立の中にある。
 樹種:アサダ。 ……知ってますか?
 筆者としては縁がないあまり、「ああ、アサダさんちに巨樹を見してもらいに行くんだなあ、きっと」と、パンフで確認するまで非常にばつの悪い勘違いをしていたくらいです。
 繰り返しになりますが、ここは栁沢様のご自宅。

 立派な解説板があり、その奥に幹周4.3メートル、樹高22メートルという規模でそびえているのが「栁沢家のアサダ」。
 見るからに健康そうな樹勢の広葉樹。樹種の特性は……ガイド先生の話を聞くしかない。

 カバノキ科アサダ属。九州から北海道に生育している。
 樹皮が反り返って剥がれてくることと、細かい毛に覆われてビロードのような手触りの葉が特徴。
 材は硬くて質が良いのに、成長が早い。 その他、北海道森林管理局の樹種解説ページ)

 ほほう、良い樹じゃないですか。

 しかし、アサダアサダと呼びはしたものの、なんでアサダというのか、Google神に問いかけてもわかりませんでした。
 前職の親会社にアサダさんって人がいましたが……人名? をつけるわけないよなあ。
 というか、「樹種としてのアサダ」をソートするのだけでもひと手間で、「アサダ」「樹木」と指定すると「浅田美代子と樹木希林」の記事がヒットしてしまうという。笑
 この難儀から記憶に刷り込まれたことは確かなので、今後生きていくうえで手がかりがつかめるといいなと。

 幹は(おそらく計測個所より)少し上あたりでさらに膨れているので、数値よりも太く感じます。
 いかにも水分があり、身が詰まって重そうな質感。

 樹皮が反って剥がれることから別名「みのかぶり」とか「ハネカワ」とも呼ぶらしいですが、この樹は高齢だからか、盛んには脱皮しなくなっているような印象。クスノキに似た樹皮にも見えました。 

 巨樹としてのアサダを環境省データベースで引いてみると、全国でも15件しか登録されていませんでした。
 解説にある通り、幹周大きさでこの「栁沢家のアサダ」は全国第2位で、トップは幹周4.5メートルの奥多摩の個体のようです。
 もっとも、幹周囲400cmとは、かなりアバウト、目測かもしれません。実際にはより僅差。
 アサダ自体これ以上は大きくならない樹種とも言えそうです。
 まあまた、北海道の森林などには発見されていない個体があるような気もしますが。

 元気そうなのは疑わないながら、枝の一部がこぶ状に黒く腫れたようになっている。細菌性の病気なのかもしれません。
 庭木の本を見ると、こぶは樹が病気を治そうと戦っている姿とも言えそうで、しばらくこのまま見守るのが良いようです。
 いや、素人目にはわからないですし、希少な巨樹なので、何とか健やかに長生きしてほしいものです。

 巨樹は樹種の代表者でもある。
 まさにそう体現している一樹でした。

「栁沢家のアサダ」
 青森県三戸郡階上町角柄折柳平
 推定樹齢:不明
 樹種:アサダ
 樹高:22メートル
 幹周:4.3メートル

 町指定天然記念物
 樹種(アサダ)全国幹周第2位
 訪問:2023.10
 ※ガイドが必要

探訪メモ:
 mapのポイントはカツラのもの。
 目の前にバス停があるようで、自家用車がなくても可能かも。

 一方で、上記のようにアサダはお宅の敷地の奥にあり、ご挨拶なしの進入はできません。
 階上町では「巨木ガイドが必要」としています。
 カツラは道からも眺めることができます。

この旅の様子は「2023年・青森県東部巨樹探訪3」でどうぞ。

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