巨樹たち

青森県三戸郡「館神社のモミ」

山城の主はモミを好んだ

 青森県、階上町の巨樹見学ツアーに参加。
 「道仏(どうぶつ)」とは、ちょっと変わった語感の地域名ですが、「天当平のアカマツ」を見た町中心地も含んでいます。
 市街地から西に向かうに従って小高くなっており、16世紀までは地形を利用した城塞「道仏館(どうぶつだて)」だったようです。
 その名残、「館神社」目指して登っていきます。 

 いわゆる一の鳥居から舗装が切れ、ハイキングコースのような道に。
 そこまでキツくはないですが、歩ける靴があった方が良いですね。

 頂上に至ると、拝殿と同時に「館神社のモミ」が視界に飛び込んできます。
 いかにもモミ巨樹らしい剛直な姿。
 幹周は6.1メートルとされ、モミ巨樹としてはかなり大きな部類と言えると思います。
 兵庫県「追手神社のモミ」等7メートルを超えるものはわずかで、6メートルを超えればベスト20にはランクインできる世界観(?)です。

 論より証拠、幹周6メートル超級のモミの迫力はすごい。
 樹高30メートル以上にまで育っている上、はるか上部まで幹の太さがあまり変わらない。
 スタイルとしては見事ですが、重量バランスとしてはアンバランスなほどの大きな「一本立ち木」。

 拝殿の裏手にもおそらく幹周4メートル強のモミがもう一本あり、こちらも樹高が高い。
 土塁の跡や、地形をいかに活用して敵を防いでいたかを見ることもでき、城址マニアの方にも面白い場所のはずです。

 ガイド先生によれば、この地にはモミは自生しないそうです。おそらく北限域なのでしょう。
 このモミは道仏館のかつての城主が植えたものだそうで、この真っすぐで剛健なイメージが戦国武将に好まれたのだ、とも。
 そこから400年~という樹齢が推定されており、天然記念物無指定ながら青森県最大のモミと目されている。
 「青森はモミには北すぎる」と解釈すれば、この地のモミが最大というのも合点がいきます(階上町は青森東部の最南)。

 樹齢ゆえか、はるか上空の葉のつき方はやや薄いようにも見えました。
 モミはポーカーフェイスな樹種だとも感じます。じわじわ枯れていくのではなく、この巨大な柱がある日いきなり倒壊する日が来るのか……。
 モミ巨樹の下に立つたび、そんな想像をしてしまいます。

「道仏館跡(館神社)のモミ」
 青森県三戸郡階上町道仏
 推定樹齢:400年
 樹種:モミ
 樹高:28メートル
 幹周:6.1メートル

 訪問:2023.10

探訪メモ:
 館跡への登り口はmapで見て東側にあります。
 駐車場はないので、広めの路肩を探して束の間停める感じでしょうか。
 幸い、通行量は多くないようです。

この旅の様子は「2023年・青森県東部巨樹探訪3」でどうぞ。

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