巨樹たち

新潟県長岡市「栖吉の大欅」

ケヤキは歴史を形で遺す

 新潟県長岡市に一泊し、早朝一番出かけてみました。
 終日雨の予報で、もし山歩きの計画を立てていたなら断念せざるを得ないところでしたが、好都合にも、さほど遠くない市街地に立ち寄りたくなる大ケヤキが見つかりました。

 長岡市の中心から少し東へ走る。
 国道352号に街はずれ感が出てくる辺りで脇道に入りますが、難しさはない。
 遠目にも樹冠がはっきりわかる、オーソドックスなケヤキ巨樹の登場パターン(写真は、裏手からの遠景)。

 とりあえず路肩に寄せて車を停めましたが、目の前に集積場があり、住民の方が次々ごみ出しにやってきます。
 「おはようございます」と声を掛けて下さるので、大ケヤキを見にくることは好意的に受け止めて頂けていると感じます。
 が、どうにもお邪魔になってるっぽいな……。
 少しだけ車を移動し、それでも結局は路肩しかないので、ハザードを点けたままケヤキを撮りに戻りました。

 で、これがその「栖吉(すよし)の大欅」。
 おお、このパターンか。
 前日に十日町市で再訪した「赤谷十二社の大ケヤキ」とは全く印象が異なりますが、このトックリ型に異様に肥大した根本フォルムもケヤキ巨樹にはよくある例ですね。
 「一里塚型」とでも呼べばよいか……おそらくは成長とともに呑み込んだ盛り土そのままの形を残しています。

 なので、このぶっとい部分が「根」なのか「幹」なのか判定が難しい。
 一応、周知されている幹周は10メートルですが、どこにスケールを当てるかで数値は激動する。
 この場合、石垣(盛り土)の上に登ってその上から1.3メートル部分を測る必要があるでしょうね。
 となると、くびれた部分を測ることになるので……10メートルはないかな? と。

 それでも一見に値するケヤキには違いない。
 主幹は地上10メートル以下の高さでY字に分岐し、細めの枝を無数に派生させている。
 古くに折れたか切られたかで一旦全ての大枝を失ったような姿をしていますが、ほぼ球形の樹冠は勢い旺盛。
 他に高い建物や樹木がないのも良いのでしょう。

 解説板がなく、自治体のサイトを検索しても目録しか見当たらないので、正式な情報が入手できません。
 99年発行「にいがた巨樹・名木100選」という書籍のテキスト(を引用した巨樹サイト諸氏のテキスト)を引用する他なさそうです。
 樹高、幹周、樹齢などはその数値となってしまいますが、環境省DBでも結局はこのパターンに終始している模様。

 標柱に「栖吉神社御神木」とある通り、元はここまでが栖吉神社の境内だったようです。
 撮影後に車を回しがてら先へ進んでみると、300メートルほど先でその栖吉神社に行き当たりました。
 すごく広い境内だったんだな……とかつてを想像しつつ、現在もなかなか立派な神社であるように見受けられました。

 付属する物語がいまいち乏しかったのでしょうか、他県ならばもっと露出があっても良さそうな巨樹です。
 とはいえ、たまたま挨拶を交わせたご近所の方々の雰囲気から、今も親しみと尊敬を得られているのだなと感じ取ることはできました。

「栖吉の大欅」
 新潟県長岡市栖吉町
 推定樹齢:700年
 樹種:ケヤキ
 樹高:20メートル
 幹周:10メートル

 市指定天然記念物
 訪問:2023.5

探訪メモ:
 下車0分の目前に「原町」バス停あり。
 自家用車の場合には目の前の少し広い路肩に1台停められる感じです。
 ケヤキの根の上には乗り入れたくないものですね……。 

2件のコメント

  • to-fu

    ああ、いつの間にか更新されているッ!!
    もしかして体調を崩されたのでは?と思っていたので安心しました。

    こちらに生えていたら遠目にはクスノキかと勘違いしてしまいそうな、樹形の美しいケヤキですね。
    これは仰るようにどこから幹として見るかによって幹周が随分大きく変動しそうです。
    根元に石碑も立ってることだし地面起点で計測してしまっていいんじゃないかなと(あまりに雑)

    なんだろう…決してザ・新潟という樹種でもないし特別新潟らしい風景が広がっているわけでもない。
    なのに何故だか「このケヤキは関西や四国のケヤキとは違うのだ」という空気をムンムン感じます。
    長野でも嫌になるくらいたくさんのケヤキを見ましたが、やっぱり長野のケヤキとも違う。
    その違和感が一体何なのか体感するためにも実際この場に立って眺めてみたくなりました。

    • to-fuさん>
      恐縮です。短期間のうちに再度関東出張になってしまいまして、その他、色々……
      ようやくというか、辛うじてというか、新潟篇の続きを綴る7月です。

      確かに、剛健な幹で主張するというより、滑らかなフォルムで記憶されるケヤキでした。
      こういう根幹状況で、プロならどう計測するのか? 一度お手本を拝見して学びたいもんだなあと。
      巨樹のスペックを左右する作業なわけだし、数字が全てではないとはいえ、見に来るきっかけであることは間違いないわけですしね。
      (それを言うと、何をもって公式の数値になるのかも不明なんですけどね……。)

      これまで見た経験を振り返って考えると、このタコっぽい質感のケヤキ巨樹を育むには、やはり相当な水量が必要なんだろうなと。
      勝山、会津、秋田県南部……などのケヤキに近い印象でした。
      豪雪地帯でもありつつ、古くは川が近かった土地らしく、この大欅に舟を繋いでいた(ホントか?)という話も見かけました。

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