神社の前の道路沿いにも、背の高いスギがぽつんと一本。
並みの植林スギよりも大きく、百年以上はここに立っていそう。
「稲荷前」という地名が指すように、かつては懐に稲荷神社をいだく集落であり、時代をさかのぼれば、ここも神社の参道だったのかも……と思い浮かんできました。
今や、取り壊しを待つ廃屋がぽつぽつ並ぶ荒涼とした風景。
この土地にかける言葉が見つからない……それが正直な感想です。
禁断の扉を開けてしまったということなのか。
完全に使いこなせる日まで、このような風景を見て見ぬふりし続ける定めなのか……。
一方で、更地にすることすら、ここでは前進と言えるとも思う。
そして、最後の最後まで残る物体化した記憶がこの大杉かもしれない。そう感じました。
4件のコメント
to-fu
ああ…これは。
東日本大震災に関しては遠い関西の地に住んでいることもあって、どうも非現実的と言いますか、心のどこかで
インドネシアのボルネオ島の山火事のような遠い地での出来事のように感じる部分があるのですが、
こうして生の写真を見るとこれは間違いなく自分が暮らす日本で起きたことであり、いつ自分の身に
降りかかってもおかしくない現実なのだと痛感させられます。
毎年3月11日の報道が流れるタイミングで防災用品のチェック(というか、主に消費期限が迫る非常食を入れ替える作業)を
しています。狛さんの写真を見ていると、この一年間また防災用品のお世話にならずに済んだのは幸運なのだと気持ちが
引き締まりましたよ。どうしても気が緩んで「めんどくせえなあ」が来てしまうのですが、めんどくせえと思える
平穏な一年を過ごせてよかった。
それにしてもこの立派な大杉。
人の社会がどうなろうが巨樹はただ巨樹の生命を全うする。ある種これは日本中に点在する限界集落の巨樹の近い将来の
姿なのかもしれない、と自分が訪れたたくさんの山奥の集落の巨樹を連想してしまいました。
集落へと続くきれいな道路だっていずれ維持が難しくなるだろうし、車で気軽に日本中の巨樹を巡れること自体、
人間の長い歴史の中でも非常にレアな体験をさせてもらっているのかもしれませんね…
長々とすみません。巨樹そのものへの感想というよりは背景の考察みたいになってしまいました。
狛
to-fuさん>
毎年、この日が来るたび、自分の人生を思い返します。
大きな何かを直接失わなかったのは幸運でしたが、あの時東京にいなかったら全然違った今があるんだろうな……と今年も思う。
違う地方で別の災害に見舞われた方も多くおられ、南海トラフ大震災も30年以内8割の確率の「現実」。
3.11の記憶と知見はこれからますます伝えられ、活かされないといけないですね。
その通り。めんどくさいなあ、は平穏の証拠ですよね。
我が家も非常食の点検と入れ替え品の注文をしましたが、すごくめんどくさい。笑
車中泊とかひとり旅のグッズや経験がまあまあ活きるところもあるし、「めんどくさい」を呟きながら何かしらやる習慣を守っていきたいものですね。
「前田の大杉」が想像以上に「大杉」だったことが、このタイミングで双葉町を訪れるきっかけとなってくれました。
そう……ある意味でこの周囲は現在が底で、これから急ピッチでリセットと復興を目指すのでしょう。
自治体や国としても、是が非でも復興させねばならないはず。
その背後で、まったく静かに消え行っていく限界集落もある……ここもまた日本の険しさ、広さ深さを感じます。
どのレベルまでの険しさまで踏み入れるのかはわかりませんが、巨樹を手がかりに、何らか見えにくいものを明らかにできそうなところに意義を感じます。
重い話題になってしまいましたが、「前田の大杉」、どうしても載せておくべき巨樹だと感じました。
いつもながら、見て頂いてありがとうございます!
RYO-JI
to-fuさんと同じく遠く離れた地に住む者としては、年月の経過とともに3.11は非現実的な出来事に感じられてなりません。
しかしこの日をむかえるたびに、災害の凄惨な様子を伝える報道の映像が甦ってきます。
まるでド派手でリアルなハリウッド映画のような災害が本当に起こった事実に恐怖を感じました。
当時はいくばくかの寄付以外は何もできなかった自分、その後も被災地を見て回ることすらできずに12年も経ってしまいましたが、
狛さんは復興途中にある町や、依然として爪痕が残る場所、荒涼とした土地を見て回られたんですね。
それはとても意義があることだと思いますし、勇気ある行動だと思います。
この大杉は被災地にあるということを差し引いても立派な存在ですね!
周囲が開けていそうなので落雷や強風で被害を受けることも心配されますけど、あの震災を生き抜いたくらいですから
今後もこの土地の象徴として長く生き続けて欲しいですね。
狛
RYO-JIさん>
世の中には数多くの大災害が存在するもんで、例えばミサイル攻撃や、レバノンでは硝酸アンモニウムの大爆発なんてものもありましたね。
それらを並べて考えてみたとしても、およそ最悪なのが津波だと思います。
あの威力、流体という予想不能さ。日本の場合、原子力災害も高確率でプラスされる。
たまたま旅行か出張でいる外地で津波に遭った人もいるし、できるだけ多くの方が東日本大震災の知見を記憶してほしいと願っています。
「前田の大杉」、巨樹として十分見応えのある大杉でした。
ここまで大きいとは思ってなかったので、素直に嬉しかったです。
多くの人に注目され、再びこの地域・集落の中心となっていってくれればいいな……と思いました。