巨樹たち

神奈川県海老名市「大谷観音堂のカヤ」

根を張った 相生の榧に 観音堂

 「有馬のはるにれ」を見て勢いづいたか、日没も近いというのに欲を出しました。
 バスに乗って最寄の鉄道駅に向かうはずが、途中のバス停で例のボタンをつい押してしまう。
 ……まあ、また目算がはずれの下車だったんですが、チャレンジするのはいいことだ。
 だんだん暗くなってくる夕景に速足になりつつ、辿り着いた寺院がこちら、「摩尼山大谷観音堂」です。

 いかにも市井のお寺という趣で、ごちゃごちゃっと色んなものが集合している。
 目当ての「大谷観音堂の大カヤ」もその一要素という感じで、イチョウの奥、本堂の右となりにそびえています。
 「立木観音」とありますが、どこを探しても観音像が見当たらない。
 予備知識を入れないで行ったので、ははあ、大カヤのことを観音に見立ててるんだな? と推測しましたが、違うようです。
 検索してみたところ、住職手彫りの観音像がある……時もあるし、ない時もある? うーむ。
 ともあれ、日が暮れ切る前に大カヤを拝まねば。

 こちらがその大カヤ、二又の幹から「相生のカヤ」とも呼ばれている巨樹です。
 胸高の幹周囲は7メートル。
 カヤの巨樹によくある折れ、裂け、ウロなどはなく、がっしりと詰まった綺麗な幹姿をしています。
 盛り土を手指で掴むように根が発達しているのも面白い。

 天然記念物指定はなく、あっさりした顔で立っている樹ではありますが、巨樹と呼ぶのに充分な大きさ。
 これを見て育ったら、カヤという樹はデカいものなんだなと信じそう。
 いや、この樹が特に大きいんですよ。

 観音堂に加え、焔魔堂(笑う閻魔様)、謎めいたアート、まったりお茶できそうなテーブルとイスもあり、ここで寄りあいを催す地域の方々の姿が浮かびました。
 この大カヤは常にその傍らにあって、いろんな話を聞いてきたことでしょう。
 Googlemapのレビューに「精神的にすごい疲れた時にここに来ます」と書いている方もおられましたが、わかる気がしました。

「大谷観音堂のカヤ」
 神奈川県海老名市大谷南2丁目14−30
 摩尼山大谷観音堂
 推定樹齢:400年
 樹種:カヤ
 樹高:20メートル
 幹周:7.0メートル

 かながわの名木100選
 訪問:2023.2

探訪メモ:
 海老名駅東口より相鉄バス「大谷宿」下車1分。
 駐車場も5台ほどあるそうです。
 勢い厚木駅まで歩いて帰りましたが、一日、つかれた。

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