巨樹たち 兵庫県丹波篠山市「辻の四本杉」 / 0件のコメント 四本首のキリン 丹波篠山市街に向かって国道372号に乗りました。 なんでも、この道は「デカンショ街道」とかいうらしく、みなさんが丹波篠山に有名な黒豆を買いに行く時によく通る道のようです。 「デカンショ節」というのもあって、 〽デカンショデカンショで半年暮らす アヨイヨイ あとの半年ねて暮らす ヨーオイ ヨーオイ デッカンショ ……とかいうらしいですが、じゃあ「デカンショ」が何なのかというと、諸説あって真相よくわからず。 デカルト、カント、ショーペンハウエルをかけて学生が作ったとか? ええー? そうなの~? (関西風に言えば「うせやん……」ってヤツ) と、よくわからない街道をよくわからないまま走っていく。辻集落に入り、細道へと折れました。 未舗装のガタガタ道を数百メートル走ったところに、稲荷神社への入り口があります。 「入り口を見失わないように」とでも言いたげに、先に案内板があります。 「辻の四本杉」、「よんほんすぎ」「しほんすぎ」読み方には諸説あるようです。 辻というからには、ひとつ前に見た「安田の大杉」のように交差点にでも生えているのかと思いましたが、そうではなかった。 案内板の近くの隙間に辛うじて車を停め徒歩に。畑や竹林があり、杉林に入ったところで……ここにもケダモノ阻止のための鉄扉が。 確かに、その向こうに鳥居の赤と、何か巨大な気配も感じる。 「藤坂のカツラ」でもアンチ獣フェンス経験済みの我々は、開けて通ろうとしますが…… ちょっと待ってくれ!!! いや確かに扉に「高電圧注意」って書いてはありますが、扉の先に電気ビリビリワイヤーが張ってあるなんて聞いてないぞ! 写真に写りにくいんですが、この3段の黄色いワイヤー、実際にも見辛い。危うく突入するところでした。 しばしストップ。 いやまあ…… これは夜行性の連中を阻止するためであるからして、昼にONしてたら電気代の無駄っちゅうかなあ…… だったら触ってみればいいじゃん、とおっしゃる? 嫌だ!!!(全力) しばしストップ。 そして中略。 頑張って何とかしましたが、いい加減いいお年の大人ですので、その方法についてはあまり言いたくない。 素晴らしい出会いには難関がつきもの(毎回?)。 晴れて「辻の四本杉」との対面です。 若干遠目に望んだこの樹の姿は、どこかおどろおどろしく……薄暗い中に気味の悪いほど高い樹が、しかも奇抜な格好で立っているという……近寄り難いような感じがありましたが、勇気を出して近づくにつれ、思い過ごしだったとわかりました。 とても伸び伸びと幹を伸ばした、元気の良い巨樹です。 ほとんど同じ太さ、高さの大杉が四本も、一斉に天を目指している。 それぞれが樹高30メートル以上あるので、のしかかるような迫力があります。 日照を求め、それぞれの枝が重ならないように上部へいくほど角度が開く。 一番傾斜している幹は結構無茶をしているようにも見える。 個性的な合体樹……「個」であるのか? 「群」なのか? この巨樹の場合、「寄ってくるなっての! あーもう、俺はお前らとは別々になりたいってのに!」 ……なんて声を想像してしまいます。 全く逆に、共存共栄していたりして。これで四倍効率がいいのかもしれませんね。 さらに角度を変えれば、お化け煙突エフェクトが発生し、なかなかどうして、四本全てが撮れる位置取りには苦労します。 本当に背が高い……。 上空にレンズを向けながら樹の周りをぐるぐる回り、ふらふらになります。 根幹はひとつ、幹周囲は目通り9メートル。 単純に、単幹の四倍逞しい根元が必要になってくる……過剰なそれらを支えるために変形し、メキメキと盛り上がった感じが素晴らしい。 成長過程でしわ寄せになった樹皮のパターンがまるで毛皮のような質感で、さながら四本首を構えた巨大なキリンのよう。 傷なのか、成長過程でできたものなのか、細長いうろがある。 不朽しているような感じではなく、向こうにも幹の樹皮みたいなものができている。 やはり四本の別々のスギが成長に従って癒着したのだと見て取れます。 でっかい蜂が……ここが巣なのか? いくつか小さなお社が並び、大杉の周辺含めてきれいに掃除されていました。 こぢんまりとお祭りもするんでしょうか……幻想的な雰囲気が思い浮かぶ場所です。 大杉の推定樹齢は700年ですが、実際見た印象としてはもっと若いと感じました。 江戸時代の神社建立前後の植樹なのではないか……とも考えましたが、どうでしょうか。 解説板で異なっていますが、おそらく市指定から県指定天然記念物に繰り上がった模様。文中、幹ではなく「枝」と表記しているのも面白いですね。 代表的な書籍で取り上げられていませんが、「こんなところにこんな樹が!」と驚くこと請け合い。 巨樹が好きなら訪ねて損はない樹です。 蜂が……うん、明らかにパトロールしている。この辺にしておきましょう。 気合で乗り越えて来ましたが、戻るときは? ど、どうしよう、あのビリビリ電撃ワイヤー……。 「辻の四本杉」 兵庫県丹波篠山市辻 推定樹齢:700年 樹種:スギ 樹高:30メートル 幹周:9メートル 県指定天然記念物 訪問:2018.5 探訪メモ: 現在どうなっているのかわかりませんが、探訪時には折りたたみの台があったら良かった? 別の方の探訪記で、ハイハイで潜ったツワモノがいたとか。トム・クルーズか!?(※当然ながら、探訪は自己責任でお願いします!) 「2018年・福井~兵庫巨樹探訪旅3」もどうぞ 「春日江のカヤ」 老木ののどかな余生 「辻の四本杉」から国道372号を西へ進み、県道304号→305号へと北上した時、ふいに道路上に見つけたカヤです。 ご覧のとおり路肩、交差点の上に枝を伸ばすような至近距離にあり、我々も思わず足を止めました。 道路の敷設にあたって切られず、交差点もこのカヤを避けたように湾曲している。 地域のこの「春日江のカヤ」への尊敬が一目でわかりました。 幹が大きく朽ちており、損壊した部分がワイヤーか何かで縛り付けてある。痛々しくも、決して不幸な樹だとは感じない。 周囲はきれいに清掃されていて、傍らにある春日江公民館と巨樹が実にのどかで落ち着く環境を作り出していました。 丹波篠山市のサイトによれば、「通る車を邪魔するかのように道の中に鎮座する。痛みが激しいのは道路のアスファルトのためかも知れない。村の中心にあって地区のシンボルでもある。」 とのこと。ちょっと、その書き方。苦笑 幹についている解説には幹周5メートルとありますが、サイトには4.3メートルとありました。 丹波篠山市の巨樹探訪のおりには、小休憩がてら寄ってみてください。 「春日江のカヤ」 兵庫県丹波篠山市春日江 推定樹齢:不明 樹種:カヤ 樹高:20メートル 幹周:5メートル 丹波森協会選定樹木 訪問:2018.5 探訪メモ: 近所の「熊按神社」にも巨樹があるのでは!? と取材敢行するも、収穫は無し。 しかし、解説板により、「熊野神社の書き間違いのまま伝承してしまった?」疑惑があるという、実に面白いエピソードを知ることができました。 関連