巨樹たち

山口県防府市「老松神社の楠」

たすき掛け状の大藤も必見

 山口県第一の巨樹である「川棚のクスの森」を訪ねた後、秋吉台、秋芳洞……としばし放浪して防府市に入りました。
 この旅初めての普通のホテルでの宿泊(その前二日間はフェリー、一日は車中)を経て、明くる早朝。
 日本で最初に創建された天神様という防府天満宮を参拝し、その足で友人と合流しました。
 ご当地の巨樹を案内してもらえるというのは、心躍りますね。

 古くからある町特有の入り組んだ道を抜け、辿り着いたのはその名も「老松神社」。 
 とは言え、ここにあるのはマツではありません。
 予想にたがわず、ここでもまたクスを見ます。

 言うまでもなく巨樹、あえて言うならば「老樹」です。
 例の「森」とまでは呼ばないながらも境内を鬱蒼とした濃い緑で覆い尽くしています。
 ところが……近づけばすぐわかりますが、この緑の大半がクスのものではない。
 すごい太さの大フジが搦みつき、クスの枝張りを利用して神社境内の頭上を葉で埋め尽くしているのです。

 クスの幹周は9メートル。  
 開設にもあるように、これは先の「川棚のクスの森」に次ぐ、山口県ナンバー2の大クスであることを示しています。

 でも、どうしても驚異の目をもって見てしまうのは、大フジの方かも……。
 九州上陸からこの方、巨大クスばかりを見続けていたからかもしれません。

 クスもフォルムが流動的な樹ですが、フジとワンセットでそれがさらに強調される。
 この、まるで身をよじっているかのような、動かないはずの植物の躍動感。

 大クスと大フジ。
 この二者の関係はどんなものなのか……自ずとそのことを考え始めました。
 フジの勢いを見ていると、「侵略」とか「寄生」とか、クスを苦しめているかのような想像がすぐに浮かびます。
 確かにそう見える箇所もありますが、それでクスが枯れてしまうかというと、そうでもなさそう。
 養分と日照の取り分はしっかり確保できているようで、根元を見ると、逆にフジの方が朽ちていたりもします。
 むろんエイリアンじみた強力な生命力を持つフジ、心配には及ばないと思いますが……。

 何よりこの樹……二者ひっくるめたこの巨樹は、6月頃、薄紫色の花を満開にした姿を披露することができるでしょう。
 それこそ、他のクスの巨樹には絶対真似できないような個性です。

 解説文。
 神社創建時、すでに巨樹だったということで樹齢2000年とされているようです。
 実際はもう少し若いのではないでしょうか。

 着生植物が多く、老樹の風格を増してはいますが、クス、フジともに分解を加速させているのではないか……と、少し心配になりました。

「老松神社の楠」
 山口県防府市お茶屋町318
 老松神社

 推定樹齢:2000年
 樹種:クスノキ
 樹高:20メートル
 幹周:9メートル

 県指定天然記念物
 樹種(クス)幹周県第2位

 訪問:2017.9

探訪メモ:
 周囲は古くからある、込み入った町並みです。
 車同士がすれ違うのも難しい小路に入ってしまった記憶も。
 地元の人はさすがに勝手を知っていましたが、専用の駐車場はありませんでした。
 あらかじめご注意を。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA