巨樹たち 山口県下関市「川棚のクスの森」 / 0件のコメント 再生に賭ける一樹の森 ※探訪記は2017年9月時点のものです。 この時期すでに衰えが目立ち、いったんはほぼ枯死状態ともされました。 樹木医をはじめとして懸命な処置が施され(NHKのドキュメンタリーでも取り上げられた)、現在養生中ながら、樹勢を取り戻しつつあります。 もしゃもしゃした緑を直接茂らせている近況を、Googlemapの訪問者さんたちの写真から伺うことができます。 がんばれ、クスの森! 九州の巨大クスを巡りつつ北上し、関門海峡を渡って本州に上陸しました。 下関町の北部で、山口県の巨樹の代表とも言えるクスを訪ねます。 その名も「川棚のクスの森」、国指定天然記念物です。 現地に着き、そのスケールの大きさに驚きました。 巨樹の名を冠したかなり立派な公園がしつらえられていることもそうですが、遠目にもそれとわかる、そのあまりにも長大・広範囲な枝張り。 その規模の大きさは空撮の方がより実感できます。 繁茂面積は東西南北60メートル近い。という。 全樹種中でも、これほどの面積を覆う樹冠を持つものが他にあるか? という広大さです。 クリックで拡大 強引な連結写真をどうぞ。 え? どこまで行くんだこの枝? という、現地での動揺が伝わるといいのですが。 主幹周囲は10メートルほど。 九州で巨大クスばかり見たせいで感覚がおかしくなっていますが、けっこうな太さには違いない。 ですが、この長大な枝を支えるにしてはスリムにすら感じてしまう。 大枝には途中途中で支えが入っていますが、おそらくは古くから大切に枝を折らずに成長してここまで広がったのでしょう。 人とともにあり続けている巨樹なのです。 驚くべきは樹本体だけではない。 巨樹本体の少し離れたところから、異様な角度の別の幹が突き出し、のたうつように成長しています。 これはなんだろう、別の樹? と思いきや、長く垂れた枝の一部が地に到達し、そこから発根、別の樹のようになってしまったもの。「伏状更新」の一種ということでしょう。 一度地中に突っ込んだ腕が、少し先でまた跳び出て天を目指す。 この樹は、自ら森であろうとするかのようにますます繁茂面積を広げようとしている。 不動の樹木でありながら、さながら大蛸か大蛇、圧倒的な躍動感を感じます。 到底フレームに収まりきらないこの姿、朝っぱらから1時間以上も夢中で撮り続けていました。 樹齢については、別に「1000年」説もあるらしい。 九州の巨大クスと比べると、いくらか若いような気もしました。 巨樹としてのスケール感には十分打たれたものの、常緑のはずのクスノキの葉がこれほど薄いというのは、やはり良い感じではない……。 この衰弱の原因は、公園整備の盛り土によるものだと考えられ、100箇所あまり竹筒を貫入するなどして、地中通気確保の処置がなされたそうです。 人に育まれた巨樹のための公園整備が、かえってその命を危機にさらしてしまった。 しかし、我々人間はさらに相手をよく知ろうとし、手を差し伸べ、命を助けようとしている。 巨樹と人との関係の複雑さを実感させられました。 この探訪の後も衰弱は進み、一時期は枯死寸前とまで聞こえ、愕然としたのですが…… 2019年秋頃になって、突然、幹や大枝から直に芽が吹き出した。 巨樹が隠し持つ「潜伏芽」というものだそうで、光合成を行い、体力を回復するための言わば「奥の手」なのだそうです。 昔のような雄大さは見られず、なりふり構わず生きようとしているかのようにも見えますが、 だからこそこの樹の「これから」を見られることに喜びも感じます。 再度、がんばれ、「川棚のクスの森」! 「川棚のクスの森」 山口県下関市豊浦町川棚 推定樹齢:300年以上 樹種:クスノキ 樹高:21メートル 幹周:10メートル 国指定天然記念物 樹種(クス)幹周県第1位 訪問:2017.9 探訪メモ: 広い駐車場、快適に過ごせる公園設備があります。 戦国武将、大内義隆公の名馬・雲雀毛にまつわるお祭りもこの立派な公園で開催されるそうです。 巨樹探訪旅「2017年・九州~関東 巨樹旅2」もどうぞ。 関連